暗号資産ウォッチャー これに注目!

第87回「ビットコイン、巨人がかき集め中 わずか2カ月で追いついたETFも」

ビットコイン、強すぎる


代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は3月13日19時過ぎ、対円で1087万円付近と前週(7日前)比で約9%高い水準で取引されています。

 

週明けから買いが強まり、荒い値動きを繰り返しながらも12日夜には1078万円台まで上げ幅を拡大しました。その3時間後には1016万円台まで急落(約5.7%の下落率)しましたが、1000万円が既に支持水準として働いています

 

13日東京午後から再び強含み始めると、一部取引所では1BTC=1089万円台まで過去最高値を更新しました。

※Trading Viewより

 

ETF、短期的には期待に沿わないことも

 

BTCドルも執筆時点では7万3600ドル台まで最高値を更新しています。

 

ただ12日ニューヨーク時間には、7万3000ドル付近から6万8600ドル台まで急ピッチで値を下げる場面がありました。これは、現物ビットコイン上場投資信託(ETF)への思惑が関係していたようです。

 

「Bitcoin price rollercoaster liquidates $360M from long and short sellers」cointelegraph

(ビットコイン価格が乱高下、3.6億ドルのポジションが清算)

 

記事では、3時間あまりの下落で先物などレバレッジを掛けられていたポジションが合計で3.6億ドル(1ドル=148円換算で533億円弱)ほど清算された、と述べています。

 

売りが強まったきっかけが、

”Traders are becoming more nervous that we could see a price correction”

トレーダーたちが、ビットコインの価格調整についかなりナーバスになっていたから、ということです。

 

「as Bitcoin has failed to rally during [United States] trading hours when the ETFs start trading.」

警戒感を高めていた理由として、ETFのトレードが始まる米国の取引時間帯にビットコインが上昇しなかったからとされています。

 

現物ビットコインETFが米国で承認されて以降、証券取引所のオープン後に価格が上がることは何度もありました。現物ETFへの資金流入が止まらないなか、今回も先走った短期トレーダーがロングで待ち構え、利食おうとしていたのでしょう。

 

しかしながら12日は、「買って売り」を繰り返すトレーダーにとってBTC価格は思ったほど上がらないと感じたようです。期待ハズレで慌てて売り戻した人たちが他のストップロスも誘発し、下げ幅を広げてしまいました。

 

もっとも、あくまで持ち高調整の域をでず、結局は上昇基調を取り戻しています。

 

※Trading Viewより

 

巨人がかき集める

 

BTC相場が水準を切り上げ続けるなか、ビットコインの大量保有で有名な米企業のマイクロストラテジーも買い増したと報じられました。

「マイクロストラテジー、ビットコインを1万2000BTC追加取得」コインテレグラフ


総額8億ドル(約1184億円)の転換社債の発行と余剰資金で1万2000BTCを追加購入したことを、同社会長のマイケル・セイラー氏が自身のXで述べています。今回の所得で、1社だけで合計20万5000BTCを保有していることになりました。

 

マイケル・セイラ―会長主導のもとマイクロストラテジー社がビットコインを購入し始めたのが2020年8月でした。2万1454BTCを合計2.5億ドル(1BTCあたり1万1652ドル)が最初の一歩でした。


約3年半が経った今、保有量は9倍超にまで拡大しています。

 ※MicroStrategy Bitcoin Holdings Chart & Purchase History より

 

2カ月で追いついた?!

 

1月に米証券取引委員会(SEC)に承認されて上場した現物ビットコインETFのなかで、最も人気があるのが資産運用大手ブラックロックの「iシェアーズ・ビットコインETF(IBIT)」です。

 

別なETFの話ですが、11日に手数料を0%にしたヴァンエックの現物ETF(HODL)への資金流入拡大が話題となりました。

「ヴァンエックのビットコインETF、過去最高1億1900万ドルの資金流入」コインデスク


しかしながら、ブラックロックのIBITは12日に8.49億ドルの資金が流入してます。円貨にして、およそ1256億円です。


※暗号資産分析サイトcoinglassより

 

さてIBITは、12日の取引が終了した時点で20万3754BTCを保有しているということです。1企業とETFの比較が正しいか分かりませんが、わずか12カ月でマイクロストラテジー社に迫る保有量となりました。

 

※coinglassより


アジアからはこれか、注意事項も


「タイSEC 米国のビットコインETFに投資する私募ファンドの設立を許可・・・」コインテレグラフ

 こういったニュースもあるように、まだまだ現物ビットコインETFに資金が向かいそうです。

 

ただ、↓のような見方もあることは頭の片隅に置いておきましょう。

「暗号資産市場、短期的に逆風に直面する可能性:コインベース」コインデスク

この連載の一覧
第93回「ビットコイン、4年に1度のイベント終了 半分になったことが・・・」
第92回「ビットコイン、下落はあの国のせい? リスク耐性はどこいった」
第91回「ビットコイン、対円では高値更新も米国では小休止 香港が追随?! そして半減期」
第90回「ビットコイン、月間の連騰記録を更新 日足チャートで気になる形も」
第89回「ビットコイン、やっぱりETF次第・・・ 手数料高いとやっぱりダメ?!」
第88回「ビットコイン、大幅下落も何のその 相変わらずのジェットコースター相場」
第87回「ビットコイン、巨人がかき集め中 わずか2カ月で追いついたETFも」
第86回「ビットコイン、ついに夢の水準へ 機関投資家はこれから?!」
第85回「強すぎるビットコイン、まだ重要イベントが控える」
第84回「ビットコイン、対円では最高値更新 お隣が前向きな感じ」
第83回「どうにも止まらない、ビットコイン ETFによる保有量はあの企業も上回る」
第82回「ビットコイン、1月は何とかプラス 都合の良い見方にはご注意」
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第80回「ビットコイン、高値から2割下落 売り手はヤツが・・そろそろ終わり?!」
第79回「ビットコイン、祝・現物ETF承認!事実で売られるも取引は活況」
第78回「ビットコイン、年初も材料変わらず フェイクニュースもなんのその」
第77回「ビットコイン、4カ月連続のプラスとなるか 辰年への期待も高いまま」
第76回「ビットコイン、飛び跳ねた年 年明けも好材料が待ち受ける?!」
第75回「ビットコイン、荒い動き ただし下落率は意外とそれほどでも?」
第74回「フィーバー中に、ビットコインがフィーバーしていた! それも仕方なし」
第73回「ビットコイン、先物市場は盛り上がり ただし現物ETFへの待ち疲れ感も?」
第72回「ビットコイン、アルゼンチンからバイナンスまで材料多し 上げて下げて結局まだ底堅い」
第71回「ビットコイン、強気に傾き・買われ過ぎ感も高まっていた 後付けではありますが」
第70回「ビットコイン、5%下落は調整の範囲内、でもポジションの急拡大には要注意?」
第69回「まだまだ強いビットコイン、クジラも活発化 ハロウィンで15周年」
第68回「ビットコイン、年初来では2倍超に!ETFに心躍らせる人たち 」
第67回「ビットコイン、誤報にもめげず底堅い あの高級車も買えるようになる?!」
第66回「地政学リスクよりもハッキングリスク、9月や第3四半期は今年最悪」
第65回「急騰の要因は色々あれど、マスク氏も関係?米議会の混乱や債務増もポジティブ材料に」
第64回「ビットコイン、米金利とドルに振り回され再び暗雲も しかし挫けない男は追加でご購入」
第63回「ビットコイン大台回復、大手参戦が追い風に たまには他のコインも要チェック」
第62回「再びFTXで大騒ぎ、ソラナが大幅安 一方ビットコインは底打ち期待も?! 」
第61回「ビットコイン、9月は本当に"fall"なの?今年もアノマリーが気になる」
第60回「ビットコイン、復活!きっかけはGBTC そしていよいよETFも・・・」
第59回「どうしたビットコイン?スペースXのせいなのか さて、どのサインを信じるか」
第58回「ビットコイン、売り買い材料が交錯 あのトランプ氏も心変わり?」
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第54回「Simple is Best、相場は単純に考える ところでBTCが上がらない理由は?」
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第49回「BTCの占有率上昇、ただし市場が盛り上がっているわけでは・・・」
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第46回「ビットコイン 動かず、過去2回はその後に大波」
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第44回「ビットコイン 4カ月連騰、手数料高騰が懸念?」
第43回「ビットコイン 冬は終了?欲張り過ぎには要注意」
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第39回「当局の圧力にも負けず、BTC買い衰えず」
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第37回「まるでジェットコースター、ビットコイン 代替資産としての位置づけも」
第36回「ビットコイン とんだ雛祭りに、懸念材料は複数残る?」
第35回「ビットコイン 売り持ちファンドに資金流入、投資家の懸念を反映」
第34回「昨年6月以来の高値更新、ビットコインの上昇要因を探る」
第33回「ビットコイン とばっちり食らう、PoWには関係なし?」
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第31回「イーサリアム、マージから4カ月半 伸び代あり?!」
第30回「悪いニュースに反応せず、アノマリーもあったとは」
第29回「クジラがショートカバーを誘発?! 最後の一押しは日銀」
第28回「ビットコイン 年始はまずまずのスタート、より身近になった?」
第27回「ボラティリティ低調、でも今年のビットコインは進展!」
第26回「期待は失望に変わり、一喜一憂すべきではないとの助言も・・・」
第25回「厳しい年、規制強化は仕方なし?・・・理想は遠い」
第24回「あれから1カ月、ようやく明るい話も」
第23回「破綻の検証始まるも・・・先はまだ長そう」
第22回「FTX破綻の衝撃拡大、ただ日本法人は年内にも?!」
第21回「FTX/アラメダ破綻、FTT暴落・・・暗号資産は今後?」
第20回「ETHがBTCをアウトパフォーム、市場全体をけん引」
第19回「BTC 今年も10月は良い月に、依然としてボラは注視」
第18回「ビットコイン やっと反発、ボラティリティの底打ち感も?」
第17回「何時でも何処にでも、ウクライナ支援も」
第16回「BTCと米株、相関関係はあるの?」
第15回「BTC、9月アノマリーはどうなった?」
第14回「ビットコイン かなり電気を使い過ぎ?世界で23番目と同等」
第13回「マージ後にETH下落、運の悪さも?完成度はまだ・・・」
第12回「イーサリアム、地球に優しくなるために」
第11回「暗号資産のビッグイベント! The Merge」
第10回「BTCにとって怖い9月、一方でETHは?」
第9回「久しぶりのフラッシュクラッシュ、今さらマウントゴックス?」
第8回「ディフェンスは重要、保管の方法は?」
第7回「時価総額9位がハッキング被害、財布のせい?」
第6回「ビットコイン、まずはエビになってみる?」
第5回「ビットコイン 金融市場の入り口に?」
第4回「ビットコインもFOMCは無視できず」
第3回「ビットコインの魅力~それは自由、黎明期を振り返る」
第2回「ビットコインって魅力的?」
第1回「ビットコイン、えらいことになってます!」

為替情報部 アナリスト

小針 卓哉

1993年に米系銀行へ入行し、外国為替部でインターバンク・スポットディーラーとなる。ドル円のみならず豪ドルやドルマルクなどの通貨も担当し、東京市場を中心に活躍。 ユーロ発足後からは、ユーロドルやユーロクロスなどを担当。その後に移った米系証券や大手邦銀のトレーディング部においても欧州通貨を中心に取引し、収益手法は主に短期的なトレーディングを得意とした。 為替相場以外では、アンガーマネジメント・ファシリテーターとしての一面もある。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチ社に入社。

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