暗号資産ウォッチャー これに注目!

第44回「ビットコイン 4カ月連騰、手数料高騰が懸念?」

ビットコイン 対ドルでは3万ドルが抵抗水準に

 

代表的な暗号資産であるビットコイン(BTC)は5月10日17時時点、対ドルでは2万7600ドル前後と前週比で約3.5%安と伸び悩んでいます。BTC円が373万円台での推移です。

 

5月第1週のBTCは3日の米連邦公開市場委員会(FOMC)結果公表を控えて弱含むも、結果(予想通り0.25%利上げ、引き締め休止の可能性示唆)発表後には反発しました。


↓この記事のように米地銀に対する経営不安が大きく高まり、再び代替資産としてBTCに資金が向かう場面もありました。 

「相次ぐ米地銀の破綻が仮想通貨の普及に拍車をかける」Forbes JAPAN

 

ただし一巡後は、BTCドルが3万ドル付近、BTC円は400万円台が抵抗水準として意識されている値動きです。

※Trading Viewより


4月、振り幅ありながらもプラスで終了

 

4月を振り返ると、昨年6月以来の高値3万1000ドルまで上昇後に2万7000ドルを割り込む場面もあるなど、相変わらずの振り幅でした。しかしながら、月引けは2万9200ドル台と月間では約2.8%高で終えています。

 

年始から堅調だったBTCドルは、4月末までの年初来騰落率も76%強としっかりプラスを維持。暗号資産分析サイトcoinglassによれば、0.03%高で終えた2月も含めると月間では4カ月連騰です。


4カ月というのは、2020年10月から翌21年3月に記録した6カ月連騰以来となります。当時は1万800ドル前後から始まり、5万8800ドル付近で終えました。

※BTCドル 月間騰落率、coinglassより


取引手数料が急騰、その原因は

 

さて先週末から、ビットコイン関連のニュースでは取引手数料に関するものが目立っています。


「ビットコイン取引手数料が2年ぶりの高水準に・・・」コインテレグラフ

 記事によれば、5月3日にビットコインのブロックチェーン上で支払われた手数料は4月下旬から4倍にもなったということです。

 

手数料とは、トランザクション(取引データ)をマイナーに承認(ブロックチェーンに記録)してもらうために支払うものです。手数料の金額によって承認の優先順位が決まります。※取引所の売買手数料とは違う。


↓のグラフはBlockchain.comが集計した過去1カ月のBTCドルの値動きと合計取引手数料推移です。黒ラインがBTCドル、青が手数料を示し、5月3日以降も手数料は急騰していることが分かります。

今回のビットコイン手数料の高騰は、そのブロックチェーン上に作られたトークン規格「BRC(Bitcoin Request for Comment)-20」に注目が集まり過ぎたことが原因と言われています。

 

「ミームコイン人気を裏支えするBRC-20トークンとは」BEINCRYPTO

 DomoというオンチェーンアナリストがBRC-20トークン規格を今年3月に作成。その目的は、NFTや代替可能なトークンをビットコインブロックチェーン上で容易に発行および転送できるようにすることでした。この機会を捉えて、一攫千金を夢見る人がかなり増えたようです。

 

以下は Ordspaceというサイトに記載されいているBRC-20トークンのランキングのトップ5です。


 

本家を上回る、しかしながら弊害も

 

「ビットコイン上のBRC-20規格トークン、2週間足らずで時価総額680%上昇」 コインデスク

BRC-20で発行されたトークンの取引が集中し、4月末から5月初めでは本家ビットコインよりも取引数が上回りました。BRC-20トークン全体の時価総額はその後も更に拡大し続けています。

 

こういったサイトも見つけました。

「How to Deploy & Mint BRC-20 Token Using UniSat Wallet?」

UniSatウォレットを使い、BRC-20トークンの作成・発行の仕方を伝えています。簡単というわけではなさそうですが、がんばれば自分でトークン発行も可能?ということでしょうか。


やはりというか、BRC-20トークンの盛り上がり過ぎによる弊害も出てきました。ネットワーク上で処理待ちの取引が大量に積み上がってしまい、その影響で世界最大の暗号資産交換所バイナンスはビットコインの引き出しを一時停止しました。

「バイナンス、ビットコイン引き出し一時停止 大量取引で手数料上昇」ロイター通信

 

そして気になるのは、@WhaleWireの5月9日のツイートです。



急騰しているビットコインの取引手数料は過去3番目の高水準であり、今回以上に高い手数料を記録した過去2回(2017年と2021年)を振り返っています。

 

2017年のBTCは堅調に推移しながらも、対ドルでは17年末の約2万ドルで頭打ちとなりました。21年のBTCも過去最高値を更新し続けましたが、年後半の6万8000ドル付近で確かにピークアウト。その後、高値から8割の価格修正があったと指摘されています。


ツイートでも「これが繰り返されるか?」と問われている、手数料高騰後のBTCの大幅な調整。一応、念頭には入れておいたほうが良いかもしれません。



この連載の一覧
第94回「ビットコイン、2割下落は買い場? 月間の連勝記録は途絶え5月は鬼門かも」
第93回「ビットコイン、4年に1度のイベント終了 半分になったことが・・・」
第92回「ビットコイン、下落はあの国のせい? リスク耐性はどこいった」
第91回「ビットコイン、対円では高値更新も米国では小休止 香港が追随?! そして半減期」
第90回「ビットコイン、月間の連騰記録を更新 日足チャートで気になる形も」
第89回「ビットコイン、やっぱりETF次第・・・ 手数料高いとやっぱりダメ?!」
第88回「ビットコイン、大幅下落も何のその 相変わらずのジェットコースター相場」
第87回「ビットコイン、巨人がかき集め中 わずか2カ月で追いついたETFも」
第86回「ビットコイン、ついに夢の水準へ 機関投資家はこれから?!」
第85回「強すぎるビットコイン、まだ重要イベントが控える」
第84回「ビットコイン、対円では最高値更新 お隣が前向きな感じ」
第83回「どうにも止まらない、ビットコイン ETFによる保有量はあの企業も上回る」
第82回「ビットコイン、1月は何とかプラス 都合の良い見方にはご注意」
第81回「ビットコイン、トータルでは流入増だった 半値戻しは・・・」
第80回「ビットコイン、高値から2割下落 売り手はヤツが・・そろそろ終わり?!」
第79回「ビットコイン、祝・現物ETF承認!事実で売られるも取引は活況」
第78回「ビットコイン、年初も材料変わらず フェイクニュースもなんのその」
第77回「ビットコイン、4カ月連続のプラスとなるか 辰年への期待も高いまま」
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第70回「ビットコイン、5%下落は調整の範囲内、でもポジションの急拡大には要注意?」
第69回「まだまだ強いビットコイン、クジラも活発化 ハロウィンで15周年」
第68回「ビットコイン、年初来では2倍超に!ETFに心躍らせる人たち 」
第67回「ビットコイン、誤報にもめげず底堅い あの高級車も買えるようになる?!」
第66回「地政学リスクよりもハッキングリスク、9月や第3四半期は今年最悪」
第65回「急騰の要因は色々あれど、マスク氏も関係?米議会の混乱や債務増もポジティブ材料に」
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第63回「ビットコイン大台回復、大手参戦が追い風に たまには他のコインも要チェック」
第62回「再びFTXで大騒ぎ、ソラナが大幅安 一方ビットコインは底打ち期待も?! 」
第61回「ビットコイン、9月は本当に"fall"なの?今年もアノマリーが気になる」
第60回「ビットコイン、復活!きっかけはGBTC そしていよいよETFも・・・」
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第58回「ビットコイン、売り買い材料が交錯 あのトランプ氏も心変わり?」
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第29回「クジラがショートカバーを誘発?! 最後の一押しは日銀」
第28回「ビットコイン 年始はまずまずのスタート、より身近になった?」
第27回「ボラティリティ低調、でも今年のビットコインは進展!」
第26回「期待は失望に変わり、一喜一憂すべきではないとの助言も・・・」
第25回「厳しい年、規制強化は仕方なし?・・・理想は遠い」
第24回「あれから1カ月、ようやく明るい話も」
第23回「破綻の検証始まるも・・・先はまだ長そう」
第22回「FTX破綻の衝撃拡大、ただ日本法人は年内にも?!」
第21回「FTX/アラメダ破綻、FTT暴落・・・暗号資産は今後?」
第20回「ETHがBTCをアウトパフォーム、市場全体をけん引」
第19回「BTC 今年も10月は良い月に、依然としてボラは注視」
第18回「ビットコイン やっと反発、ボラティリティの底打ち感も?」
第17回「何時でも何処にでも、ウクライナ支援も」
第16回「BTCと米株、相関関係はあるの?」
第15回「BTC、9月アノマリーはどうなった?」
第14回「ビットコイン かなり電気を使い過ぎ?世界で23番目と同等」
第13回「マージ後にETH下落、運の悪さも?完成度はまだ・・・」
第12回「イーサリアム、地球に優しくなるために」
第11回「暗号資産のビッグイベント! The Merge」
第10回「BTCにとって怖い9月、一方でETHは?」
第9回「久しぶりのフラッシュクラッシュ、今さらマウントゴックス?」
第8回「ディフェンスは重要、保管の方法は?」
第7回「時価総額9位がハッキング被害、財布のせい?」
第6回「ビットコイン、まずはエビになってみる?」
第5回「ビットコイン 金融市場の入り口に?」
第4回「ビットコインもFOMCは無視できず」
第3回「ビットコインの魅力~それは自由、黎明期を振り返る」
第2回「ビットコインって魅力的?」
第1回「ビットコイン、えらいことになってます!」

為替情報部 アナリスト

小針 卓哉

1993年に米系銀行へ入行し、外国為替部でインターバンク・スポットディーラーとなる。ドル円のみならず豪ドルやドルマルクなどの通貨も担当し、東京市場を中心に活躍。 ユーロ発足後からは、ユーロドルやユーロクロスなどを担当。その後に移った米系証券や大手邦銀のトレーディング部においても欧州通貨を中心に取引し、収益手法は主に短期的なトレーディングを得意とした。 為替相場以外では、アンガーマネジメント・ファシリテーターとしての一面もある。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチ社に入社。

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