暗号資産ウォッチャー これに注目!

第105回「ビットコイン、分散化が強さ 米大統領選の影響はより不透明に」

BTC円、1000万円を何度か割り込む

 

代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は7月24日22時時点で、対円では1028万円前後と前週(7日前)比で約1.3%上昇した水準で取引されています。

 

BTCドルが6万6800ドル付近とこちらも前週比で上昇ですが、約3%の上げ幅とBTC円を上回った上昇率です。外国為替市場でドル安・円高が進行した影響が(158円台から153円台まで下落)、BTCの対円と対ドルでの騰落率の違いにでています。

 

BTC円の値動きを振り返ると、先週後半18-19日には何度か1000万円を割り込みました。

 

現物ビットコインと連動している上場投資信託(ETF)への資金流入は続いたものの、週半ばに流入規模が縮小したことがBTC相場の買いの勢いを緩めたようです。

 

バイデン米大統領が新型コロナウイルスの検査で陽性が確認されたことも、一部では売り要因とされました

 

ビットコインに対する態度は?

 

なぜバイデン大統領のコロナ感染がビットコイン売りに繋がったのでしょうか?

 

暗号資産を巡る米大統領選の図式では、共和党候補のトランプ前大統領が暗号資産の擁護派という位置を固めています。一方で民主党バイデン大統領もビットコインなどへの理解を示そうとしていますが、政権としては「規制ありき」というスタンスです。


大統領選の対立構造から、暗号資産市場はバイデン大統領の再選に警戒感を持っていました

 

バイデン氏がコロナ感染したことで、同氏への健康不安が一層強まりました。そのため民主党の議員だけでなく、重鎮からも11月の米大統領選からバイデン氏の撤退を望む声が聞かれました。


※2020年11月のBBCサイトより


バイデン大統領の選挙戦からの撤退は民主党から新たな大統領候補の誕生となります。トランプ共和党候補の優勢は変わらないとされながらも、新候補への期待も当然ながら広がりました。

 

暗号資産(特にビットコイン)は米国にとって非常に重要だと叫ぶトランプ前大統領の勝利確率がやや縮小しました。これがトランプトレードの巻き戻し、つまりBTC買い持ちの調整売りに繋がったようです。


世界各地でシステム障害、でもBTCはしっかり


19日(金)の夕方にも一旦緩んだBTCですが、1000万円割れの底堅さを確認すると週末には1060万円台まで一気に上昇します。

 

日本時間の19日午後、米マイクロソフトのWindowsデバイス障害が世界各地で発生しました。セキュリティーソフトの更新が原因とされたシステム障害で、旅客機の運航、放送関連や医療など幅広い分野が影響を受けました。

 

欧州前半にリスク回避の動きが強まるとBTCも一時売られましたが、一巡後に切り返すと大きく上値を試す展開となりました。

 

今回のシステム障害で、一つの企業のミスで世界全体が機能障害に陥る可能性が懸念されました。


そこで注目されたのが暗号資産の分散化です。


 ビットコインなど多くの暗号資産ネットワークは中央管理者を持ちません。複数の独立したノード(コンピュータ)によって運営されている仕組みを分散化と言います。

 

※経産省資料より


 ビットコインの分散化は中央管理者を排除し、ブロックチェーン技術を利用してトランザクション(取引)を記録・管理する仕組みです。これによりデータの改ざんが難しくなり、ネットワークの信頼性が高まります。

 

BTC円は週明け1078万円台まで上げ幅を拡大しました。


BTC失速、ハリス氏への警戒感?


さてバイデン大統領は21日、米大統領選から撤退する考えを明らかにし、カラマ・ハリス副大統領を民主党候補に支持することを表明しました。当初、有力な候補とされた民主党の州知事もハリス氏を支持する態度を示し、副大統領は重鎮からのサポートの獲得に成功しています。


まだ正式な民主党の大統領候補ではありませんが、トランプ前大統領のリードは明らかに縮小。一部調査では、ハリス氏がトランプ氏を支持率で上回ったというものも出てきました。


問題は、ハリス副大統領がどのように暗号資産を捉えているかでしょう。以下の記事を信じたいところです。

「ハリス大統領候補は仮想通貨に前向き・・・」コインテレグラフ


25-27日に米テネシー州ナッシュビルで開催されるBitcoin Conference 2024(ビットコインカンファレンス2024)で、ハリス氏が講演をする可能性を報じるメディアもありました。しかしながら、参加は見送られたようです。


※玄光社「カマラ・ハリス ちいさな女の子の願い」より


BTC相場は失速し、対円では990万円割れまで水準を切り下げました。




この連載の一覧
第111回「ビットコイン、夏バテか? 残暑も厳しく 曲がり屋とされるあの人は」
第110回「ビットコイン、上値トライは失敗 チャットアプリ騒動が影響?」
第109回「暗号資産税制、隣の芝は青く見え過ぎた 1年以上保有すると・・・」
第108回「ビットコイン、米インフレ減速も上昇の勢いは・・・相場って難しい 米投資銀行が現物ETFを所有」
第107回「ビットコイン、夏バテ気味 リスク回避の流れに逆らえず」
第106回「ビットコイン、失速するも月間ではプラス維持 トランプ氏がビットコイン大国を掲げる」
第105回「ビットコイン、分散化が強さ 米大統領選の影響はより不透明に」
第104回「ビットコイン、大幅反発はトランプ氏のおかげ? イーサリアムもついに!」
第103回「BTC、2月以来の安値更新 独政府やMt.Goxなど売り材料目立つ ただし一巡後は持ち直す」
第102回「ビットコイン、半値戻しまで 日本の投資家は暗号資産に興味あり?!」
第101回「ビットコイン、週明けに売り強まる マウントゴックスがついに?!」
第100回「ビットコイン、ダブルトップ形成で下落?! アルトコインの影響も無視できず」
第99回「ビットコイン、対円では最高値更新も・・・ 米イベントで右往左往」
第98回「ビットコイン、ハッキングもなんのその こんどは豪とタイが!」
第97回「ビットコイン、占有率が下がり気味・・・ 現物イーサETFの取引は?!」
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第92回「ビットコイン、下落はあの国のせい? リスク耐性はどこいった」
第91回「ビットコイン、対円では高値更新も米国では小休止 香港が追随?! そして半減期」
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第89回「ビットコイン、やっぱりETF次第・・・ 手数料高いとやっぱりダメ?!」
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第87回「ビットコイン、巨人がかき集め中 わずか2カ月で追いついたETFも」
第86回「ビットコイン、ついに夢の水準へ 機関投資家はこれから?!」
第85回「強すぎるビットコイン、まだ重要イベントが控える」
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第64回「ビットコイン、米金利とドルに振り回され再び暗雲も しかし挫けない男は追加でご購入」
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第61回「ビットコイン、9月は本当に"fall"なの?今年もアノマリーが気になる」
第60回「ビットコイン、復活!きっかけはGBTC そしていよいよETFも・・・」
第59回「どうしたビットコイン?スペースXのせいなのか さて、どのサインを信じるか」
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第39回「当局の圧力にも負けず、BTC買い衰えず」
第38回「ビットコイン 時価総額はメタ超え、強欲な感じも・・・」
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第36回「ビットコイン とんだ雛祭りに、懸念材料は複数残る?」
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第34回「昨年6月以来の高値更新、ビットコインの上昇要因を探る」
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第30回「悪いニュースに反応せず、アノマリーもあったとは」
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第28回「ビットコイン 年始はまずまずのスタート、より身近になった?」
第27回「ボラティリティ低調、でも今年のビットコインは進展!」
第26回「期待は失望に変わり、一喜一憂すべきではないとの助言も・・・」
第25回「厳しい年、規制強化は仕方なし?・・・理想は遠い」
第24回「あれから1カ月、ようやく明るい話も」
第23回「破綻の検証始まるも・・・先はまだ長そう」
第22回「FTX破綻の衝撃拡大、ただ日本法人は年内にも?!」
第21回「FTX/アラメダ破綻、FTT暴落・・・暗号資産は今後?」
第20回「ETHがBTCをアウトパフォーム、市場全体をけん引」
第19回「BTC 今年も10月は良い月に、依然としてボラは注視」
第18回「ビットコイン やっと反発、ボラティリティの底打ち感も?」
第17回「何時でも何処にでも、ウクライナ支援も」
第16回「BTCと米株、相関関係はあるの?」
第15回「BTC、9月アノマリーはどうなった?」
第14回「ビットコイン かなり電気を使い過ぎ?世界で23番目と同等」
第13回「マージ後にETH下落、運の悪さも?完成度はまだ・・・」
第12回「イーサリアム、地球に優しくなるために」
第11回「暗号資産のビッグイベント! The Merge」
第10回「BTCにとって怖い9月、一方でETHは?」
第9回「久しぶりのフラッシュクラッシュ、今さらマウントゴックス?」
第8回「ディフェンスは重要、保管の方法は?」
第7回「時価総額9位がハッキング被害、財布のせい?」
第6回「ビットコイン、まずはエビになってみる?」
第5回「ビットコイン 金融市場の入り口に?」
第4回「ビットコインもFOMCは無視できず」
第3回「ビットコインの魅力~それは自由、黎明期を振り返る」
第2回「ビットコインって魅力的?」
第1回「ビットコイン、えらいことになってます!」

為替情報部 アナリスト

小針 卓哉

1993年に米系銀行へ入行し、外国為替部でインターバンク・スポットディーラーとなる。ドル円のみならず豪ドルやドルマルクなどの通貨も担当し、東京市場を中心に活躍。 ユーロ発足後からは、ユーロドルやユーロクロスなどを担当。その後に移った米系証券や大手邦銀のトレーディング部においても欧州通貨を中心に取引し、収益手法は主に短期的なトレーディングを得意とした。 為替相場以外では、アンガーマネジメント・ファシリテーターとしての一面もある。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチ社に入社。

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