暗号資産ウォッチャー これに注目!

第60回「ビットコイン、復活!きっかけはGBTC そしていよいよETFも・・・」

ビットコイン円、400万円超えまで急騰

 

代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は31日8時時点で、対円では398万円台と前週比(7日前比)4.6%上昇した水準で取引されています。BTCドルが2万7300ドル前後での推移です。

 

BTC円は380万円を挟み上下が続いていたところから、29日夜に急騰しました。その日に410万円手前まで値を上げています。BTCドルも2万6000ドル割れから2万8000ドルを一時上回っています。


 

※Trading Viewより

 

買いが集中したきっかけは、暗号資産への規制を強めようとしている米証券取引委員会(SEC)関連の報道です。

「現物型ビットコインETFに道、グレースケールがSECに勝訴」bloomberg

 

複数のメディアが報じていますが、暗号資産運用会社グレースケール・インベストメンツがSEC対して起こした訴訟で勝利しました。これにより現在ブラックロックなど大手資産運用会社が申請している現物ビットコイン上場信託(ETF)について、承認されるとの期待が大きく広がっています。

 

グレースケール運用のファンド、GBTC

 

2013年に設立されたグレースケールが運用しているファンド(投資信託)のうち「Grayscale Bitcoin Trust(以下GBTC)」という有名なファンドがあります。

 

GBTCの特徴としては

・ビットコイン価格に連動して動く

・ビットコインの保管や管理にかかる手間やリスクを省くことができる

・GBTCの株式を購入すると米国の税制や規制に適合した形でビットコインに投資することができる

 

このファンドは、米国の主要取引所に上場していない店頭取引銘柄を売買できる市場「OTCXX」で取引されています。

 

GBTC注意点としては-

・年間で純資産価値の2%を管理手数料として徴収

・純資産価値と市場価格との間に乖離(プレミアムやディスカウント)が生じることがある

・流動性や信用リスクなどの市場リスク

 

※グレースケールHPより


運用残高が大きく拡大した時も乖離は・・・

 

ビットコインが勢いよく上昇していた2020年代後半から2021年にかけて、税制の分かりやすさや管理の楽さなどで機関投資家がGBTCを積極的に購入したようです。

2020年9月末にGBTCの運用残高は49億ドル弱でしたが、21年11月には435億ドルにも膨張しました。

 

※暗号資産サイトTHE BLOCKより、AUM=運用資産残高


前述したGBTCの注意点で指摘した乖離は、原資産であるビットコインとGBTCの需給バランスが違うため発生します。GBTCプレミアムのときはビットコイン価格より高い水準で取引され、ディスカウントのときは低い水準で売買されているということです。

 

GBTCに資金は集まっていましたが、2021年にはいるとビットコインとの乖離はディスカウントに陥りました。

「楽勝のはずのビットコイン裁定取引が崩壊-プレミアム消滅で」 bloomberg

 

22年に入ってもディスカウント状態は続き、アルゴリズム型ステーブルコイン「テラ UST」の崩壊や暗号資産交換業大手FTXの破綻を受け、ディスカウント率は50%近くまで拡大しました。

 


※THE BLOCKより、GBTCのディカウント推移

 

今年のビットコインの上昇を受けて、GBTCも大幅反発しました。ディスカウント率は縮小したものの、投資家はまだ苦しんでいたとの記事もあります。

「ファンドは今年25%上昇したが、割引で投資家は苦しむ」コインジャーナル

 

米裁判所、SECに厳しい判決 今週末には

 

暗号資産運用会社グレイスケールが米裁判所に異議申し立てを訴えたのは、GBTCを上場信託(ETF)に転換するための同社申請を昨年6月に米証券取引委員会(SEC)が却下したことです。


これに対し裁判所は、SECの判断を「気まぐれ」かつ「恣意的」という厳しい判断を下し、グレースケールの申請を見直すよう命令しました。これを受けGBTCの取引も急増しています。

 「グレイスケールがSECに勝訴でGBTCの取引高急増」コインデスク

 

※Bloomberg情報を引用したX(旧ツイッターより)

 

さて今週末、大手資産運用会社による現物ビットコインETF申請に関し、SECが判断を明らかにしなければならない期限を迎えます。↑の表でも示されているFirst Deadline(1回目期限)は、ブラックロック(Company 上から2段目)やフィデリティ(下から2段目)は9月2日です。


ただし、SecondThirdそしてFinal Deadlineまで設定されているため、今回で承認か非承認かの判断は下されない可能性はあり得ます。


ただしグレースケールの勝訴を受けて、承認に向けた市場の期待がかなり膨らんでいるのは確かでしょう。

 

この連載の一覧
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第93回「ビットコイン、4年に1度のイベント終了 半分になったことが・・・」
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第91回「ビットコイン、対円では高値更新も米国では小休止 香港が追随?! そして半減期」
第90回「ビットコイン、月間の連騰記録を更新 日足チャートで気になる形も」
第89回「ビットコイン、やっぱりETF次第・・・ 手数料高いとやっぱりダメ?!」
第88回「ビットコイン、大幅下落も何のその 相変わらずのジェットコースター相場」
第87回「ビットコイン、巨人がかき集め中 わずか2カ月で追いついたETFも」
第86回「ビットコイン、ついに夢の水準へ 機関投資家はこれから?!」
第85回「強すぎるビットコイン、まだ重要イベントが控える」
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第81回「ビットコイン、トータルでは流入増だった 半値戻しは・・・」
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第69回「まだまだ強いビットコイン、クジラも活発化 ハロウィンで15周年」
第68回「ビットコイン、年初来では2倍超に!ETFに心躍らせる人たち 」
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第63回「ビットコイン大台回復、大手参戦が追い風に たまには他のコインも要チェック」
第62回「再びFTXで大騒ぎ、ソラナが大幅安 一方ビットコインは底打ち期待も?! 」
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第29回「クジラがショートカバーを誘発?! 最後の一押しは日銀」
第28回「ビットコイン 年始はまずまずのスタート、より身近になった?」
第27回「ボラティリティ低調、でも今年のビットコインは進展!」
第26回「期待は失望に変わり、一喜一憂すべきではないとの助言も・・・」
第25回「厳しい年、規制強化は仕方なし?・・・理想は遠い」
第24回「あれから1カ月、ようやく明るい話も」
第23回「破綻の検証始まるも・・・先はまだ長そう」
第22回「FTX破綻の衝撃拡大、ただ日本法人は年内にも?!」
第21回「FTX/アラメダ破綻、FTT暴落・・・暗号資産は今後?」
第20回「ETHがBTCをアウトパフォーム、市場全体をけん引」
第19回「BTC 今年も10月は良い月に、依然としてボラは注視」
第18回「ビットコイン やっと反発、ボラティリティの底打ち感も?」
第17回「何時でも何処にでも、ウクライナ支援も」
第16回「BTCと米株、相関関係はあるの?」
第15回「BTC、9月アノマリーはどうなった?」
第14回「ビットコイン かなり電気を使い過ぎ?世界で23番目と同等」
第13回「マージ後にETH下落、運の悪さも?完成度はまだ・・・」
第12回「イーサリアム、地球に優しくなるために」
第11回「暗号資産のビッグイベント! The Merge」
第10回「BTCにとって怖い9月、一方でETHは?」
第9回「久しぶりのフラッシュクラッシュ、今さらマウントゴックス?」
第8回「ディフェンスは重要、保管の方法は?」
第7回「時価総額9位がハッキング被害、財布のせい?」
第6回「ビットコイン、まずはエビになってみる?」
第5回「ビットコイン 金融市場の入り口に?」
第4回「ビットコインもFOMCは無視できず」
第3回「ビットコインの魅力~それは自由、黎明期を振り返る」
第2回「ビットコインって魅力的?」
第1回「ビットコイン、えらいことになってます!」

為替情報部 アナリスト

小針 卓哉

1993年に米系銀行へ入行し、外国為替部でインターバンク・スポットディーラーとなる。ドル円のみならず豪ドルやドルマルクなどの通貨も担当し、東京市場を中心に活躍。 ユーロ発足後からは、ユーロドルやユーロクロスなどを担当。その後に移った米系証券や大手邦銀のトレーディング部においても欧州通貨を中心に取引し、収益手法は主に短期的なトレーディングを得意とした。 為替相場以外では、アンガーマネジメント・ファシリテーターとしての一面もある。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチ社に入社。

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