現物ETF、辰年まで待つ可能性?
代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は7月25日17時時点では、414万円付近と前週比では0.5%ほど低い水準です。小幅安ですが、24日(月)早朝に429万円台まで上昇したことを考えると上値が重いという印象は拭えません。外国為替市場では先週末に円安が急速に進みましたが、その影響も削ぎ落ちてしまいました。
※Trading Viewより
BTCドルも3万ドルを割り込んで推移し、一時2万9000ドルを下回る場面もありました。ビットコイン売りにつながるような目立ったニュースはありませんでしたが、暗号資産分析サイトcoinglassの清算チャートをみると、溜まったロングの投げが24日に起きたようです。
※coinglassより
さて先週も触れたビットコイン現物ETF(上場投資信託)の件です。先月に資産運用大手ブラックロックやフィデリティなどが申請し、今月ついに米証券取引委員会(SEC)が審査プロセスを開始したことを前回のコラムでお伝えしました。
気になるのは、いったい何時SECのETF承認または非承認が決定されるかということでしょう。暗号資産情報サイトの記事によると、基本的な審査期間としては45日間が設けられています。順調であれば8月前半には結果が分かるのですが、そうはすんなり行かないようです。
最終的な決定までSECは最長240日間延長することができるというのです。つまり、なんだかんだと来年3月まで持ち越されてしまう可能性が残っています。
来年は辰年です。その第1四半期の終わりのほうまでと考えると、結構先に感じてしまいますね。待ち疲れないか心配です。
なぜETFが待ち望まれるのか?
ここで一旦、ETFのおさらいをしておきましょう。ETFとはExchange Traded Fundの略です。日本語で「上場投資信託」とも呼ばれているように、証券取引所に上場されている投資信託の一種です。
ETFは、特定の金融資産に連動する指数を基準としてその指数に沿った運用を目指すものです。上場されている証券取引所の取引時間内であれば、リアルタイムで売買できます。少額から取引が可能であり、売買対象の資産を直接保有せず、(ETFにもよりますが)管理コストが小さいのも特徴です。
ただ、米国でETFが申請されているビットコイン現物であれば、取引時間に制限のない、それも土日も取引できる交換所で直接買えば良いだけです。少額でも売買できますし、ビットコインを所有するだけでは別段コストもかかりませんので、あまりETFのメリットはない?と思えてしまいます。
今回これだけ市場が注目している大きな理由の1つは、資産運用大手が上場申請したビットコイン現物ETFがもし承認されれば、機関投資家が参入しやすくなるということなのでしょう。資金量が桁違いに大きい投資家が市場に本格的に参入するとなると、当然ながら上昇圧力が増すことが期待されます。
また、ビットコイン現物ETFが証券取引所に上場された場合、これまでビットコインに不信感を持っていた人たちも「ならば、ちょっと手を出してみようか」となるかもしれません。
2004年後半、ゴールドETFが良い例?
ビットコイン現物ETFは米国でこれまで何度か申請され、米証券取引委員会(SEC)に却下されてきました。現物ETFが申請される度に、承認された時の良い例として、希望の光として持ち出される話が金(ゴールド)のETFです。ゴールドETFとは金価格に連動するETFであり、今では複数上場されています。
特に米国初のゴールドETF、2004年11月にニューヨーク証券取引所に上場された「SPDR ゴールド・シェアーズ」と上場後の実際の金価格の値動きが象徴的と言えるでしょう。
まずはこちらが、そのETFの月足です。上場後、暫くはさえない動きでした。しかしETFの認知度が上がるにつれ、株式市場などから資金が流入するようになりました。
※yahoo! financeより
ゴールドは株や債券などの代替(オルタナティブ、alternative)する資産として、もともと位置付けされていました。今でもそういった側面は強いです。
ゴールドETFの登場により、その現物を直接購入することなく、保管料なども必要なくポジションを作れるため、機関投資家が積極的にポートフォリオに組み入れることができたと言われています。
以下が1トロイオンス(国際的な単位)あたりの対ドルでの金価格、月足チャートです。
1980年1月につけた高値を25年以上も超えることが出来ませんでした。
高値の前年979年は「イラン革命や第2次石油危機、年後半にはテヘランにあるアメリカ大使館の占拠事件、12月に旧ソ連のアフガニスタン侵攻」という出来事がありました。安全資産として金に資金が向かったということです。
※Trading Viewより
SPDRゴールド・シェアが米国で上場され、2008年6月末には「SPDRゴールド・シェア受益証券」として東京証券取引所にも上場されました。上場機運が高まっていた同年1月に金価格は過去最高値を更新し、同年3月には初の1000ドル乗せを達成。米国でのETF上場から3年超で2倍以上にもなりました。
BTCホルダーが期待していることは、こういうことなのでしょう。
現物ETFが承認されれば、ビットコインがゴールドのように羽ばたく。価格が2倍、3倍、更にそれ以上になると信じている(なってほしい・・)。
いずれにせよ、米証券取引委員会(SEC)の決定が待たれます。