暗号資産ウォッチャー これに注目!

第89回「ビットコイン、やっぱりETF次第・・・ 手数料高いとやっぱりダメ?!」

BTC、先週末の下落から切り返す


代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は3月27日20時頃、1064万円台と前週(7日前)比では約11%高の水準で推移しています。BTCドルが7万100ドル付近での値動きです。

 

執筆時点では堅調ですが、先週末にかけてBTC相場は上値の重い展開が続いていました。対円では947万円割れ、対ドルでも6万2300ドル台まで下落した場面がありました。

 

しかしながら週明けからは持ち直し始め、BTC円は一時1084万円台まで反発しました。BTCドルも一部取引所で7万1500ドル超えまで上昇しています。

 

※Traders Viewより

 

保有量が半分近くに

 

先週末に水準を下げた要因は、当たり前といえば当たり前ですが、売りが買いよりも多かった(買いが売りよりも少なかった)ということです。

 

2月から3月にかけてビットコインの大幅上昇をけん引してきたのが、米証券取引委員会(SEC)が承認し、1月前半から米国で取引が開始された現物ビットコイン上場投資信託(ETF)です。

 

しかしながらこのコラムでも何度か取り上げているように、複数あるETFのうちグレースケール運用の「Grayscale Bitcoin Trust(以下GBTC)」は1月から資金流出が続いています。


こちらは暗号資産分析サイトcoinglassで、GBTCの1月末からのネットフローを示したチャートです。 


 

流出一辺倒ですね。最大流出額が3月19日の6.18億ドル、同月1日も6億ドル超え、2日が約5.3億ドルの流出を記録しています。

 

GBTCからの資金流出に伴い、保有しているビットコインの換金売りをし続けねばなりません。同ETFは1月12日に61万9160BTCを保有していたところから、3月26日時点では34万2600BTCまで減少していました。


減少率は約45%にも達しています。


 

暗号資産分析サイトcoinglassより、BTC保有量推移

 

AUMは2倍以上に拡大

 

GBTCからビットコイン売りは出ていたものの、2月から3月にかけてBTC相場は大きく上昇。これは新たに上場された現物ETFに資金が流れ込んだからです。

 

現物ビットコインETFの運用資産残高(AUM)は1月末時点271億ドルから3月半ばには635億ドル近くまで拡大しました。

 

※coinglassより

 

しかしながら、先週はその勢いに陰りが見えました。coinglassによれば、3月18日から22日の5日間で総額8.8億ドル(1ドル=151円で約1329億円)の資金が10ある現物ビットコインETFから流出しました。

 

※coinglassより

 

↑の表の一番右側の棒グラフは、今週のビットコイン相場の持ち直しとともに再び上にしっかりと伸びています。

 

以下の表が示しているようにグレースケールのGBTCは変わらず流出超ですが、資産運用大手ブラックロックのIBITやフェデリティのFBTCなどはしっかりと資金を取り込んでいます。

 

(日本では取引できませんが)米国の現物ビットコインETFの動向に相場全般が振らされる展開はまだまだ続くことになるでしょう。

 

 

※coinglassより

 

やっぱり手数料は大事


こちらのニュースは、米資産運用会社ハッシュデックスの先物ビットコインETFが現物を裏付けとするETFに転換したという話です。

「11番目となる現物ビットコインETFが取引開始」コインテレグラフ

https://jp.cointelegraph.com/news/hashdex-11th-approved-spot-bitcoin-etf-united-states

 

遅れて参加したETFに対し、記事では「手数料に競争力があれば関心が集まるかもしれない」という専門家の意見を紹介しています。

 

この新たな現物ビットコインETFの管理手数料は年間0.9%とされています。ここでもcoinglassのサイトからビットコインETFの手数料をチェックしてみましょう。

 


 右端のExpense Ratioが管理手数料とほぼ同じ意味としてみると、GBTCを除いた9社ETFの平均は約0.25%です。手数料の観点からだと、ハッシュデックスのETFは苦戦することになるかもしれません。

 

表ではGBTCの手数料(右端の一番上、赤丸)が年間1.5%と高さが際立っていました。実はこれがGBTCから資金が流出し続けている大きな要因とされています。いくらビットコインが大きく上昇しているとしても、投資家のコストに対する目は厳しいと言えます。

 

しかしながら、先日こういった記事が出ていました・

「グレイスケールのビットコインETF 高額な手数料を維持している理由は?・・・」コインテレグラフ

 

一部アナリストの見解として、グレースケールはGBTCの手数料ディスカウントを実施しないとしています。その理由として、この資産運用会社は「ETF売却時の税金の問題でこれ以上離脱者は増えない」と見ていること、また「BTC価格の上昇による資産増加で流出分を相殺できる」と考えていることが挙げられました。

 

日本にいるBTC保有者にとって直接関係ない話のように見えます。しかしながらグレースケールの思惑が外れ、GBTCを手放す顧客が増えた場合、相場の波乱要因になるかもしれません。

 

GBTC関連の報道は、他の現物ETFも含めて、一応は気にかけておくのが良いかと思われます。

 


この連載の一覧
第93回「ビットコイン、4年に1度のイベント終了 半分になったことが・・・」
第92回「ビットコイン、下落はあの国のせい? リスク耐性はどこいった」
第91回「ビットコイン、対円では高値更新も米国では小休止 香港が追随?! そして半減期」
第90回「ビットコイン、月間の連騰記録を更新 日足チャートで気になる形も」
第89回「ビットコイン、やっぱりETF次第・・・ 手数料高いとやっぱりダメ?!」
第88回「ビットコイン、大幅下落も何のその 相変わらずのジェットコースター相場」
第87回「ビットコイン、巨人がかき集め中 わずか2カ月で追いついたETFも」
第86回「ビットコイン、ついに夢の水準へ 機関投資家はこれから?!」
第85回「強すぎるビットコイン、まだ重要イベントが控える」
第84回「ビットコイン、対円では最高値更新 お隣が前向きな感じ」
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第82回「ビットコイン、1月は何とかプラス 都合の良い見方にはご注意」
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第63回「ビットコイン大台回復、大手参戦が追い風に たまには他のコインも要チェック」
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第22回「FTX破綻の衝撃拡大、ただ日本法人は年内にも?!」
第21回「FTX/アラメダ破綻、FTT暴落・・・暗号資産は今後?」
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第19回「BTC 今年も10月は良い月に、依然としてボラは注視」
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第16回「BTCと米株、相関関係はあるの?」
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第10回「BTCにとって怖い9月、一方でETHは?」
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第8回「ディフェンスは重要、保管の方法は?」
第7回「時価総額9位がハッキング被害、財布のせい?」
第6回「ビットコイン、まずはエビになってみる?」
第5回「ビットコイン 金融市場の入り口に?」
第4回「ビットコインもFOMCは無視できず」
第3回「ビットコインの魅力~それは自由、黎明期を振り返る」
第2回「ビットコインって魅力的?」
第1回「ビットコイン、えらいことになってます!」

為替情報部 アナリスト

小針 卓哉

1993年に米系銀行へ入行し、外国為替部でインターバンク・スポットディーラーとなる。ドル円のみならず豪ドルやドルマルクなどの通貨も担当し、東京市場を中心に活躍。 ユーロ発足後からは、ユーロドルやユーロクロスなどを担当。その後に移った米系証券や大手邦銀のトレーディング部においても欧州通貨を中心に取引し、収益手法は主に短期的なトレーディングを得意とした。 為替相場以外では、アンガーマネジメント・ファシリテーターとしての一面もある。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチ社に入社。

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