暗号資産ウォッチャー これに注目!

第79回「ビットコイン、祝・現物ETF承認!事実で売られるも取引は活況」

上場承認、金融技術革命の第一歩との声も

 

代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は2024年1月17日20時時点では633万円台と、前週(7日前)比で4%超の下落率です。この一週間、特に11-13日は文字通り「荒い」値動きでした。

 

前回コラムに追記しましたが、日本時間11日早朝(米国では10日夕方)、ついに米証券取引委員会(SEC)は現物ビットコインに連動する上場投資信託(ETF)を承認しました。

「米SEC、ビットコイン現物ETF初承認」ロイター

 

機関投資家がビットコインに投資しやすくなったとし、巨額マネーの流入を期待した買いが対ドルを中心にBTC相場を押し上げました。11日に米国勢が本格参入してくると、BTC円は一部取引所で715万円まで上げ幅を拡大しています。


ちなみに上記は、ETFが承認された大手資産運用会社ブラックロックのフィンクCEOがビットコインについて語った米CNBC記事のタイトルです。12日に配信されたインタビューで、フィンク氏は「ビットコインETFは金融技術革命の第一歩に過ぎない」と述べていました。


このフィンクCEO、2017年には「ビットコインはマネーロンダリングの指標」だと呼び、アンチ・ビットコインの立場だったようです。この世界で成功するには、「こだわらないこと」ということも大事なのかもしれませんね。

  

ところで、どのくらいの資金がETFに?

 

SECが現物ETFを承認した後、英金融大手スタンダードチャータード銀行のレポートが再び話題にもなっていました。

「Spot bitcoin ETFs may bring $50-100 billion of inflows in 2024」The Block

(現物ビットコインETFは2024年に500億ドルから1000億ドル流入の可能性)


上記の記事によると、レポートではETFが承認されれば24年に500億から1000億ドルの資金流入が見込まれると予測。また、25年末までにBTCドルが20万ドル近くに達する可能性があると予想もしています。

 

1ドル=147円換算で最大14.7兆円規模の資金が現物ビットコインETFに向かうというのです。1BTCも2900万円以上になるという見立てです。

 

捕らぬ狸の皮算用にならないと良いのですが・・・・。



 

相場格言、ビットコインにも当てはまった

 

しかしながら、BTC相場は11日ニューヨーク昼前から一転し売りが優勢に。12日も下落圧力が強まると対円では650万をアッサリ割り込み、13日東京朝には603万円前後まで売り込まれました。

 

下げの局面で見受けられたのが、「Sell the fact(事実で売れ)」という言葉です。「Buy the rumor,sell the fact(噂で買って、事実で売れ)」という有名な相場格言の後半の部分ですね。

 

この格言は相場が未来を予測して動く、いわゆる「噂で買う」という性質を表しています。噂は今回で言うと、現物ビットコインETFの上場承認とそれに伴う巨額資金流入への期待です。BTC相場は何度かの調整を繰り返しながら上昇トレンドを形成してきました。

 

予測(噂)が現実のものになると材料出尽くし感から更なる上昇は期待できないとし、買っていた人たちは売りに回る行動が「事実で売れ」です。今回は「Sell the fact」がけっこう強まり、BTC円は高値から15%の下落率を記録しました。

 

※Trading Viewより

 

懸念はリスクの集中?取引高は絶好調


BTCが下落する局面で、以下のような記事も見受けられました。

「誰も語らないビットコインETF最大の脅威」コインデスク

 

こちらのオピニオン記事では、現物ビットコインETFのカストディアンについて述べています。カストディアンとは通常、投資家に代わって有価証券の保管・管理を行う金融機関のことを指します。

 

ただ、今回のETFでは証券ではなくビットコインを安全に保管することになります。デジタル、そして無記名資産であるビットコインを預かるには、株・債券など以上にサイバーセキュリティ能力が求められます。

 

記事では、承認されたETFの運用会社のうち、一部を除きほぼ全てが暗号資産カストディアンに米の暗号資産交換業コインベース(Coinbase)を選んだことを指摘。同社はこれまで一度もハッキングされたことがないとしながらも、「ハッキング不可能なターゲットは存在しない」との考えを示しました。

 

暗号資産カストディアンにとって、たった一度のミスで資産が完全に消えてしまうことになるとも著者は述べています。もっとも懸念は今のところ気にされず、ETF取引きはかなり盛り上がっているようです。

 「現物型ビットコインETFの1日あたり取引量 23年に立ち上げられたETF500銘柄を上回る」コインテレグラフ


なお、これだけ現物ビットコインETFの話をしていますが、24年1月時点で日本ではこのETFを取引できません。

この連載の一覧
第94回「ビットコイン、2割下落は買い場? 月間の連勝記録は途絶え5月は鬼門かも」
第93回「ビットコイン、4年に1度のイベント終了 半分になったことが・・・」
第92回「ビットコイン、下落はあの国のせい? リスク耐性はどこいった」
第91回「ビットコイン、対円では高値更新も米国では小休止 香港が追随?! そして半減期」
第90回「ビットコイン、月間の連騰記録を更新 日足チャートで気になる形も」
第89回「ビットコイン、やっぱりETF次第・・・ 手数料高いとやっぱりダメ?!」
第88回「ビットコイン、大幅下落も何のその 相変わらずのジェットコースター相場」
第87回「ビットコイン、巨人がかき集め中 わずか2カ月で追いついたETFも」
第86回「ビットコイン、ついに夢の水準へ 機関投資家はこれから?!」
第85回「強すぎるビットコイン、まだ重要イベントが控える」
第84回「ビットコイン、対円では最高値更新 お隣が前向きな感じ」
第83回「どうにも止まらない、ビットコイン ETFによる保有量はあの企業も上回る」
第82回「ビットコイン、1月は何とかプラス 都合の良い見方にはご注意」
第81回「ビットコイン、トータルでは流入増だった 半値戻しは・・・」
第80回「ビットコイン、高値から2割下落 売り手はヤツが・・そろそろ終わり?!」
第79回「ビットコイン、祝・現物ETF承認!事実で売られるも取引は活況」
第78回「ビットコイン、年初も材料変わらず フェイクニュースもなんのその」
第77回「ビットコイン、4カ月連続のプラスとなるか 辰年への期待も高いまま」
第76回「ビットコイン、飛び跳ねた年 年明けも好材料が待ち受ける?!」
第75回「ビットコイン、荒い動き ただし下落率は意外とそれほどでも?」
第74回「フィーバー中に、ビットコインがフィーバーしていた! それも仕方なし」
第73回「ビットコイン、先物市場は盛り上がり ただし現物ETFへの待ち疲れ感も?」
第72回「ビットコイン、アルゼンチンからバイナンスまで材料多し 上げて下げて結局まだ底堅い」
第71回「ビットコイン、強気に傾き・買われ過ぎ感も高まっていた 後付けではありますが」
第70回「ビットコイン、5%下落は調整の範囲内、でもポジションの急拡大には要注意?」
第69回「まだまだ強いビットコイン、クジラも活発化 ハロウィンで15周年」
第68回「ビットコイン、年初来では2倍超に!ETFに心躍らせる人たち 」
第67回「ビットコイン、誤報にもめげず底堅い あの高級車も買えるようになる?!」
第66回「地政学リスクよりもハッキングリスク、9月や第3四半期は今年最悪」
第65回「急騰の要因は色々あれど、マスク氏も関係?米議会の混乱や債務増もポジティブ材料に」
第64回「ビットコイン、米金利とドルに振り回され再び暗雲も しかし挫けない男は追加でご購入」
第63回「ビットコイン大台回復、大手参戦が追い風に たまには他のコインも要チェック」
第62回「再びFTXで大騒ぎ、ソラナが大幅安 一方ビットコインは底打ち期待も?! 」
第61回「ビットコイン、9月は本当に"fall"なの?今年もアノマリーが気になる」
第60回「ビットコイン、復活!きっかけはGBTC そしていよいよETFも・・・」
第59回「どうしたビットコイン?スペースXのせいなのか さて、どのサインを信じるか」
第58回「ビットコイン、売り買い材料が交錯 あのトランプ氏も心変わり?」
第57回「リップルにつれ安、8月のビットコインは?そして6カ月後までに・・・」
第56回「ビットコイン、400万円台維持 ネガティブニュースも跳ね返す」
第55回「ビットコイン、ゴールドのように羽ばたけるか ただしETFはもう少し先かも?」
第54回「Simple is Best、相場は単純に考える ところでBTCが上がらない理由は?」
第53回「ビットコイン 円高の影響、分かれたヤツは元気」
第52回「ビットコイン、対円にしました!口座開設はもうお済み?」
第51回「現物ETF 承認への期待大! ただし一旦落ち着く必要も・・・」
第50回「ビットコイン、救世主が出現! 現物ETFへの期待高まる」
第49回「BTCの占有率上昇、ただし市場が盛り上がっているわけでは・・・」
第48回「ビットコイン SECの圧力はちょっと違う、底打ち感も?!」
第47回「ビットコイン 5月は失速、でも今年中には大幅上昇?!」
第46回「ビットコイン 動かず、過去2回はその後に大波」
第45回「G7は規制強化 交換業大手はカナダから日本へ」
第44回「ビットコイン 4カ月連騰、手数料高騰が懸念?」
第43回「ビットコイン 冬は終了?欲張り過ぎには要注意」
第42回「イーサリアム 待ち時間は延びる、BTC 10カ月ぶりの高値をつけるも・・・」
第41回「ビットコイン 約10カ月ぶりの高値、信じる者は・・・」
第40回「リップル 3月は元気いっぱい、裁判の終わりが見えた?!」
第39回「当局の圧力にも負けず、BTC買い衰えず」
第38回「ビットコイン 時価総額はメタ超え、強欲な感じも・・・」
第37回「まるでジェットコースター、ビットコイン 代替資産としての位置づけも」
第36回「ビットコイン とんだ雛祭りに、懸念材料は複数残る?」
第35回「ビットコイン 売り持ちファンドに資金流入、投資家の懸念を反映」
第34回「昨年6月以来の高値更新、ビットコインの上昇要因を探る」
第33回「ビットコイン とばっちり食らう、PoWには関係なし?」
第32回「ビットコイン、2月も底堅い クリスマスまでには?!」
第31回「イーサリアム、マージから4カ月半 伸び代あり?!」
第30回「悪いニュースに反応せず、アノマリーもあったとは」
第29回「クジラがショートカバーを誘発?! 最後の一押しは日銀」
第28回「ビットコイン 年始はまずまずのスタート、より身近になった?」
第27回「ボラティリティ低調、でも今年のビットコインは進展!」
第26回「期待は失望に変わり、一喜一憂すべきではないとの助言も・・・」
第25回「厳しい年、規制強化は仕方なし?・・・理想は遠い」
第24回「あれから1カ月、ようやく明るい話も」
第23回「破綻の検証始まるも・・・先はまだ長そう」
第22回「FTX破綻の衝撃拡大、ただ日本法人は年内にも?!」
第21回「FTX/アラメダ破綻、FTT暴落・・・暗号資産は今後?」
第20回「ETHがBTCをアウトパフォーム、市場全体をけん引」
第19回「BTC 今年も10月は良い月に、依然としてボラは注視」
第18回「ビットコイン やっと反発、ボラティリティの底打ち感も?」
第17回「何時でも何処にでも、ウクライナ支援も」
第16回「BTCと米株、相関関係はあるの?」
第15回「BTC、9月アノマリーはどうなった?」
第14回「ビットコイン かなり電気を使い過ぎ?世界で23番目と同等」
第13回「マージ後にETH下落、運の悪さも?完成度はまだ・・・」
第12回「イーサリアム、地球に優しくなるために」
第11回「暗号資産のビッグイベント! The Merge」
第10回「BTCにとって怖い9月、一方でETHは?」
第9回「久しぶりのフラッシュクラッシュ、今さらマウントゴックス?」
第8回「ディフェンスは重要、保管の方法は?」
第7回「時価総額9位がハッキング被害、財布のせい?」
第6回「ビットコイン、まずはエビになってみる?」
第5回「ビットコイン 金融市場の入り口に?」
第4回「ビットコインもFOMCは無視できず」
第3回「ビットコインの魅力~それは自由、黎明期を振り返る」
第2回「ビットコインって魅力的?」
第1回「ビットコイン、えらいことになってます!」

為替情報部 アナリスト

小針 卓哉

1993年に米系銀行へ入行し、外国為替部でインターバンク・スポットディーラーとなる。ドル円のみならず豪ドルやドルマルクなどの通貨も担当し、東京市場を中心に活躍。 ユーロ発足後からは、ユーロドルやユーロクロスなどを担当。その後に移った米系証券や大手邦銀のトレーディング部においても欧州通貨を中心に取引し、収益手法は主に短期的なトレーディングを得意とした。 為替相場以外では、アンガーマネジメント・ファシリテーターとしての一面もある。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチ社に入社。

小針 卓哉の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております