上場承認、金融技術革命の第一歩との声も
代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は2024年1月17日20時時点では633万円台と、前週(7日前)比で4%超の下落率です。この一週間、特に11-13日は文字通り「荒い」値動きでした。
前回コラムに追記しましたが、日本時間11日早朝(米国では10日夕方)、ついに米証券取引委員会(SEC)は現物ビットコインに連動する上場投資信託(ETF)を承認しました。
機関投資家がビットコインに投資しやすくなったとし、巨額マネーの流入を期待した買いが対ドルを中心にBTC相場を押し上げました。11日に米国勢が本格参入してくると、BTC円は一部取引所で715万円まで上げ幅を拡大しています。
ちなみに上記は、ETFが承認された大手資産運用会社ブラックロックのフィンクCEOがビットコインについて語った米CNBC記事のタイトルです。12日に配信されたインタビューで、フィンク氏は「ビットコインETFは金融技術革命の第一歩に過ぎない」と述べていました。
このフィンクCEO、2017年には「ビットコインはマネーロンダリングの指標」だと呼び、アンチ・ビットコインの立場だったようです。この世界で成功するには、「こだわらないこと」ということも大事なのかもしれませんね。
ところで、どのくらいの資金がETFに?
SECが現物ETFを承認した後、英金融大手スタンダードチャータード銀行のレポートが再び話題にもなっていました。
「Spot bitcoin ETFs may bring $50-100 billion of inflows in 2024」The Block
(現物ビットコインETFは2024年に500億ドルから1000億ドル流入の可能性)
上記の記事によると、レポートではETFが承認されれば24年に500億から1000億ドルの資金流入が見込まれると予測。また、25年末までにBTCドルが20万ドル近くに達する可能性があると予想もしています。
1ドル=147円換算で最大14.7兆円規模の資金が現物ビットコインETFに向かうというのです。1BTCも2900万円以上になるという見立てです。
捕らぬ狸の皮算用にならないと良いのですが・・・・。
相場格言、ビットコインにも当てはまった
しかしながら、BTC相場は11日ニューヨーク昼前から一転し売りが優勢に。12日も下落圧力が強まると対円では650万をアッサリ割り込み、13日東京朝には603万円前後まで売り込まれました。
下げの局面で見受けられたのが、「Sell the fact(事実で売れ)」という言葉です。「Buy the rumor,sell the fact(噂で買って、事実で売れ)」という有名な相場格言の後半の部分ですね。
この格言は相場が未来を予測して動く、いわゆる「噂で買う」という性質を表しています。噂は今回で言うと、現物ビットコインETFの上場承認とそれに伴う巨額資金流入への期待です。BTC相場は何度かの調整を繰り返しながら上昇トレンドを形成してきました。
予測(噂)が現実のものになると材料出尽くし感から更なる上昇は期待できないとし、買っていた人たちは売りに回る行動が「事実で売れ」です。今回は「Sell the fact」がけっこう強まり、BTC円は高値から15%の下落率を記録しました。
※Trading Viewより
懸念はリスクの集中?取引高は絶好調
BTCが下落する局面で、以下のような記事も見受けられました。
「誰も語らないビットコインETF最大の脅威」コインデスク
こちらのオピニオン記事では、現物ビットコインETFのカストディアンについて述べています。カストディアンとは通常、投資家に代わって有価証券の保管・管理を行う金融機関のことを指します。
ただ、今回のETFでは証券ではなくビットコインを安全に保管することになります。デジタル、そして無記名資産であるビットコインを預かるには、株・債券など以上にサイバーセキュリティ能力が求められます。
記事では、承認されたETFの運用会社のうち、一部を除きほぼ全てが暗号資産カストディアンに米の暗号資産交換業コインベース(Coinbase)を選んだことを指摘。同社はこれまで一度もハッキングされたことがないとしながらも、「ハッキング不可能なターゲットは存在しない」との考えを示しました。
暗号資産カストディアンにとって、たった一度のミスで資産が完全に消えてしまうことになるとも著者は述べています。もっとも懸念は今のところ気にされず、ETF取引きはかなり盛り上がっているようです。
「現物型ビットコインETFの1日あたり取引量 23年に立ち上げられたETF500銘柄を上回る」コインテレグラフ
なお、これだけ現物ビットコインETFの話をしていますが、24年1月時点で日本ではこのETFを取引できません。