暗号資産ウォッチャー これに注目!

第43回「ビットコイン 冬は終了?欲張り過ぎには要注意」

行って来い相場、BTC 大幅下落からプラス圏を回復

 

代表的な暗号資産であるビットコイン(BTC)は、4月26日20時時点で対ドルでは2万9700ドル前後と前週比で約1.5%の上昇率です。BTC円が398万円前後で推移しています。

 

先週末から今週初にかけて暗号資産全般に売り込まれる場面があり、一時はBTCも下値を大きく広げました。もっとも25日終盤から切り返し、ついにはプラス圏を回復しています。

 

いわゆる「行って来い相場」でしたが、この1週間の値動きを振り返ってみましょう。何が材料だったかを知っておくのは今後の取引のためにも必要です。

 

日本時間20日朝にBTCドルは2万9000ドルを割り込み、そのまま下落基調を強めました。2万8000ドルを割れても下げ止まる様子はなく、2日後には2万7200ドル前後まで売られました。

 

一旦は小康状態になったものの週明け24日の深夜には、約4週間ぶりの安値となる2万7000ドル割れを記録。14日につけた年初来高値からだと13%近くの下げ幅となります。

 


※Trading Viewより

 

↓は24日のCoinDeskの記事です。

「Bitcoin Posts Biggest Weekly Loss in 5 Months as Dollar Liquidity Declines, Debt Ceiling Fears Return」


ドルの流動性低下と米債務上限への懸念が再び高まったことがBTCの重しとしています。この場合、ビットコインは「リスク資産(リスク回避で売られる)」という位置づけのようです。 BTCドルの週間下落率は5カ月ぶり水準まで拡大しました。


強欲すぎた? ロングの投げ

 

第38回「ビットコイン 時価総額はメタ超え、強欲な感じも・・・」でも紹介した、ビットコインの「Crypto Fear & Greed Index(CFGI、暗号資産の恐怖と強欲指数)」を見てみましょう。

 

CFGIは、暗号資産市場のセンチメント(心理、感情)を表す指数です。市場心理が悲観的であれば数値は低下し、楽観的であれば上昇しやすい傾向にあります。

 


ビットコインは4月17日時点で69とgreed(強欲)の領域に入っていました。

 

「Bitcoin Fear & Greed Index Reaches a 16-Month High of 69」watcher.gujru

こちらの記事でも69という数値は、今年3月21日つけた高値を超えて16カ月ぶりの高い水準ということでした。

 

しかしながら、センチメントが強気度合いを増したにもかかわらず相場は頭打ちに。そうなると買い持ちを閉じる動きが始まり、それが広がって短期の投資家の損切りが誘発。ロングの投げが投げを呼んだという構図でしょうか。

 

暗号資産分析サイトcoinglassによる、先物市場におけるBTCドルの清算チャートを見てみましょう。



19-21日に少ないくない規模の買い持ちポジションが閉じられていたこと、つまり売り圧力が強まっていたことが分かります。黄色の線で囲んだ緑色のバーがそうです。

 

イーサリアムも弱かった シャペラ前の水準に

 

暗号資産で時価総額2位のイーサリアム(ETH)は、今週半ばまで軟調でした。前回のコラムでも、重要なアップグレード「シャペラ」の数日後には伸び悩んでいることを記載しましたが、その動きは25日深夜まで続きました。

 

ETHは対ドルで1800ドル手前まで売り込まれ、シャペラ後につけた高値からの下落率は16%近くにおよびました。

 

※Trading Viewより

 

イーサリアムにも「Fear&Greed Index」があり、17日時点で73とビットコイン以上に「強欲、強気」でした。そうなると、反動(この場合は下向きの動き)もより大きくなったということでしょう。

 

また、イーサリアムを中心とした暗号資産を預け入れるウォレット「MetaMask(メタマスク)」で不正流出があったとの報道も、ETH売りに繋がったのかもしれません。

 

「5000ETH以上の原因不明の不正流出、メタマスク側は原因ではないと主張」コインテレグラフ

ただ記事にあるようにメタマスク側は、ウォレットに問題はないとしています。

 

そして大幅反発、金融不安が再びBTC買いに

 

この記事の執筆中にBTCドルは上昇し、24時間比では9%超える上げ幅です。他、主要なアルトコインも総じて堅調ですが、前週比では依然マイナスも多く、BTCの強さがうかがえます。


 

※CoinMarketCapより、左側の数値はステーブルコインを除くランキング


「Bitcoin Regains $28K Amid Mildly Encouraging Tech Earnings, Liquidation of Short Positions」 CoinDesk

 四半期決算が好感されマイクロソフトやアルファベット(グーグルの親会社)の株価が時間外で上昇したことなどがBTC上昇のきっかけと述べています。これもBTC=リスク資産としての位置づけです。

 

一方、「Bitcoin back above $28,000 as First Republic reignites banking fears」the block 

米国のファースト・リパブリック・バンクの大規模な預金流出が明らかとなり、再び金融不安が高まったことで 代替資産としてBTCに資金が向かった可能性も指摘している記事です。

 

つまり、何がでてもBTCは買いだった、ということでしょうか?

 

BTCが伸び悩んでいた24日にでた記事です。地合いが弱かったためか、当初あまり話題になりませんでしたが、上昇し始めると注目されるかもしれません。

「Winter is over' and bitcoin may hit $100,000 next year, says Standard Chartered」the block

「ビットコインの冬は終わった、来年には10万ドルに達する可能性がる」

 

いずれにせよ、強欲になり過ぎには要注意でしょう。

この連載の一覧
第94回「ビットコイン、2割下落は買い場? 月間の連勝記録は途絶え5月は鬼門かも」
第93回「ビットコイン、4年に1度のイベント終了 半分になったことが・・・」
第92回「ビットコイン、下落はあの国のせい? リスク耐性はどこいった」
第91回「ビットコイン、対円では高値更新も米国では小休止 香港が追随?! そして半減期」
第90回「ビットコイン、月間の連騰記録を更新 日足チャートで気になる形も」
第89回「ビットコイン、やっぱりETF次第・・・ 手数料高いとやっぱりダメ?!」
第88回「ビットコイン、大幅下落も何のその 相変わらずのジェットコースター相場」
第87回「ビットコイン、巨人がかき集め中 わずか2カ月で追いついたETFも」
第86回「ビットコイン、ついに夢の水準へ 機関投資家はこれから?!」
第85回「強すぎるビットコイン、まだ重要イベントが控える」
第84回「ビットコイン、対円では最高値更新 お隣が前向きな感じ」
第83回「どうにも止まらない、ビットコイン ETFによる保有量はあの企業も上回る」
第82回「ビットコイン、1月は何とかプラス 都合の良い見方にはご注意」
第81回「ビットコイン、トータルでは流入増だった 半値戻しは・・・」
第80回「ビットコイン、高値から2割下落 売り手はヤツが・・そろそろ終わり?!」
第79回「ビットコイン、祝・現物ETF承認!事実で売られるも取引は活況」
第78回「ビットコイン、年初も材料変わらず フェイクニュースもなんのその」
第77回「ビットコイン、4カ月連続のプラスとなるか 辰年への期待も高いまま」
第76回「ビットコイン、飛び跳ねた年 年明けも好材料が待ち受ける?!」
第75回「ビットコイン、荒い動き ただし下落率は意外とそれほどでも?」
第74回「フィーバー中に、ビットコインがフィーバーしていた! それも仕方なし」
第73回「ビットコイン、先物市場は盛り上がり ただし現物ETFへの待ち疲れ感も?」
第72回「ビットコイン、アルゼンチンからバイナンスまで材料多し 上げて下げて結局まだ底堅い」
第71回「ビットコイン、強気に傾き・買われ過ぎ感も高まっていた 後付けではありますが」
第70回「ビットコイン、5%下落は調整の範囲内、でもポジションの急拡大には要注意?」
第69回「まだまだ強いビットコイン、クジラも活発化 ハロウィンで15周年」
第68回「ビットコイン、年初来では2倍超に!ETFに心躍らせる人たち 」
第67回「ビットコイン、誤報にもめげず底堅い あの高級車も買えるようになる?!」
第66回「地政学リスクよりもハッキングリスク、9月や第3四半期は今年最悪」
第65回「急騰の要因は色々あれど、マスク氏も関係?米議会の混乱や債務増もポジティブ材料に」
第64回「ビットコイン、米金利とドルに振り回され再び暗雲も しかし挫けない男は追加でご購入」
第63回「ビットコイン大台回復、大手参戦が追い風に たまには他のコインも要チェック」
第62回「再びFTXで大騒ぎ、ソラナが大幅安 一方ビットコインは底打ち期待も?! 」
第61回「ビットコイン、9月は本当に"fall"なの?今年もアノマリーが気になる」
第60回「ビットコイン、復活!きっかけはGBTC そしていよいよETFも・・・」
第59回「どうしたビットコイン?スペースXのせいなのか さて、どのサインを信じるか」
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第46回「ビットコイン 動かず、過去2回はその後に大波」
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第44回「ビットコイン 4カ月連騰、手数料高騰が懸念?」
第43回「ビットコイン 冬は終了?欲張り過ぎには要注意」
第42回「イーサリアム 待ち時間は延びる、BTC 10カ月ぶりの高値をつけるも・・・」
第41回「ビットコイン 約10カ月ぶりの高値、信じる者は・・・」
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第27回「ボラティリティ低調、でも今年のビットコインは進展!」
第26回「期待は失望に変わり、一喜一憂すべきではないとの助言も・・・」
第25回「厳しい年、規制強化は仕方なし?・・・理想は遠い」
第24回「あれから1カ月、ようやく明るい話も」
第23回「破綻の検証始まるも・・・先はまだ長そう」
第22回「FTX破綻の衝撃拡大、ただ日本法人は年内にも?!」
第21回「FTX/アラメダ破綻、FTT暴落・・・暗号資産は今後?」
第20回「ETHがBTCをアウトパフォーム、市場全体をけん引」
第19回「BTC 今年も10月は良い月に、依然としてボラは注視」
第18回「ビットコイン やっと反発、ボラティリティの底打ち感も?」
第17回「何時でも何処にでも、ウクライナ支援も」
第16回「BTCと米株、相関関係はあるの?」
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第14回「ビットコイン かなり電気を使い過ぎ?世界で23番目と同等」
第13回「マージ後にETH下落、運の悪さも?完成度はまだ・・・」
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第10回「BTCにとって怖い9月、一方でETHは?」
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第7回「時価総額9位がハッキング被害、財布のせい?」
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第3回「ビットコインの魅力~それは自由、黎明期を振り返る」
第2回「ビットコインって魅力的?」
第1回「ビットコイン、えらいことになってます!」

為替情報部 アナリスト

小針 卓哉

1993年に米系銀行へ入行し、外国為替部でインターバンク・スポットディーラーとなる。ドル円のみならず豪ドルやドルマルクなどの通貨も担当し、東京市場を中心に活躍。 ユーロ発足後からは、ユーロドルやユーロクロスなどを担当。その後に移った米系証券や大手邦銀のトレーディング部においても欧州通貨を中心に取引し、収益手法は主に短期的なトレーディングを得意とした。 為替相場以外では、アンガーマネジメント・ファシリテーターとしての一面もある。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチ社に入社。

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