BTC円、上昇が一服
代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は、2025年6月5日9時頃、対円では1499万円前後と前週(7日前)比で約4.6%低い水準で取引されています。BTCドルが10万4700ドル台での値動きです。
BTC円はこの1週間、1580万円辺りから一時1480万円台まで売り込まれました。トランプ米大統領が鉄鉱・アルミニウムへの関税を25%から50%に引き上げることを表明し、貿易摩擦の激化懸念がリスク回避のBTC売りに繋がりました。
下げたところでの買い意欲は強く、1540万円近くまで戻す場面もありました。もっとも4日発表された米経済指標が低調な結果が続いたことにも影響され、BTC相場は伸び悩んでいます。
※Trading Viewより
月間はプラス、下ヒゲ陽線が暗示するものは?
ところでビットコイン(BTC)円の5月は、月間騰落率約12%と2カ月連続のプラスで終えました。月初は1350万円付近で始まり、1331万円台を下値に一時1615万円手前まで上昇。月後半にかけて上値を切り下げましたが、月末は1511万円前後で終えています。
以下は、Trading ViewからとったBTC円の月足チャートです。緑が陽線(終値が始値より高い)、赤が陰線(終値が始値より低い)のロウソク足となります。
※Trading Viewより
最高値をつけた2025年1月の翌2カ月(2、3月)が陰線です。次の4月も下値を試し、24年11月以来の安値まで売られました。しかしながらその後に反発し、結局は下方向にヒゲ(長い線)を作って陽線で終えました。
これは下ヒゲ(または下影)陽線と言われ、結果として買い圧力が強いときに形成されます。相場の安値圏で現れた場合、上昇への転換を暗示すると解説されることが多いのですが、5月はまさにそれを証明したことになります。
ストラテジー、購入量は少なめ?
上場企業として世界で最もビットコインを保有しているストラテジー(旧マイクロストラテジー)社は、変わらずBTCを購入し続けています。同社のビットコイン財務戦略を率いるマイケル・セイラー氏は、6月2日に約7510万ドル(1ドル=144円換算では108.1億円)で705BTCを購入したことをXに投稿しました。
※マイケル・セイラー氏のX
ストラテジー社はこれで、1BTCの平均所得価格が7万23ドルで合計58万955BTCを保有していることになります。今回の購入のため同社は、満期のない優先株を市場価格に応じて発行して資金を調達しました。
今年に入ってからのストラテジー社のBTC購入履歴を、https://www.strategy.com/purchasesで見ることができます。。
先月をみると「1895、1万3390、7390、4020」と合計で2万7400BTCも所得していました。ただ3月末には1度で2万2048BTC、2月下旬にも2万356BTCの購入を報告しており、5月が多いという訳ではなさそうです。
Avg BTC Cost (平均BTCコスト)をみると、1BTCが10万ドルを超えたところではさすがに無理はしないという感じなのでしょうか。6月2日の705BTCは、3月17日以来の少なさです。
※履歴より
なぜこんなにも保有するのか…
なぜストラテジー社は、これほどまでにビットコインをかき集めるのでしょうか。以下の3つが主な理由のようです。
1、「インフレヘッジと価値保存手段としての活用」
ストラテジーはビットコインを「デジタルゴールド」と位置づけ、法定通貨(特に米ドル)の価値下落やインフレリスクから企業資産を守るために大量保有しています。ビットコインは発行上限(2100万BTC)があり、希少性が高いことから、長期的な価値保存手段として優れていると判断しています。これにより、ドル資産の価値変動リスクを軽減し、企業の財務基盤を強化する狙いがあります
2.、「企業価値・株主価値の最大化」
ビットコインの長期的な価格上昇を見込んでおり、保有することで企業価値や株主価値の向上を目指しています。実際、ストラテジーの株価はビットコイン価格と強く連動し、ビットコインの上昇局面では株価も大きく上昇する傾向があります。これにより、同社の株式は「ビットコインへの代理投資手段」としても機関投資家から注目を集めています
3、「グローバル資産・金融戦略としての活用」
ビットコインは国境を越えて移動が容易で、特定の国や企業に依存しないグローバル資産です。この特性を活かし、地政学的リスクや資産凍結リスクを回避しやすくなります。また、ストラテジーはビットコインを基盤とした金融商品やサービス(例:レバレッジ運用、転換社債発行など)を展開し、他社やビットコインETFにはない柔軟な資本戦略を実現しています。これにより、先行者利益の獲得や新たな金融ビジネスへの展開も視野に入れています
しかしながらストラテジーのアプローチは、BTC価格の上昇時に高いリターンをもたらす可能性がある一方、価格下落時には財務健全性や株価に大きな影響を及ぼすリスクも伴います。例えば、2025年4月には新会計基準により約59億ドルの評価損を計上し、株価が一時10%近く急落しました。
米大統領の関連企業も購入に意欲
現在の米大統領であるトランプ氏が設立し、今も大株主である「トランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループ(TMTG)」のビットコインに関する報道もありました。TMTGはソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル(Truth Social)」を運営している会社でもあります。
「トランプ・メディア、資金調達完了でビットコイン購入資金確保」コインデスク
「トゥルース・ソーシャルが発行するビットコイン現物ETFの申請を提出」コインデスク
TMTGは、24.4億ドル相当のBTCを購入する準備をし、また現物ビットコインETFの上場も申請しました。米大統領もBTCへの傾斜を強めています。