雛祭りなのに・・・
代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は8日14時点で対ドルでは2万2100ドル台、対円では305万円割れと前週比5%超の下げ幅で推移しています。雛祭りだった先週3日に突然売りが強まり、その後の反発も限定的です。
雛祭りの東京午前、BTCドルは2万3400ドル台から2万2200ドル割れ、BTC円が320万円付近から302万円前後と6%近く急落しました。それも約1時間での出来事です。この短時間の下落幅は、昨年11月に暗号資産交換所大手FTXが破綻したとき以来の大きさでした。
※Trading Viewより
ことの発端は、またFTX?!
きっかけは、暗号資産業界に向け金融サービスを手掛けるシルバーゲート銀行の持ち株会社シルバーゲート・キャピタルの財務不安の高まりです。米証券取引委員会(SEC)への年次報告書の提出を延期すると発表し、同社株は2日ニューヨーク株式市場で50%超も暴落しました。
シルバーゲート銀行を巡っては、前述したFTXが大口顧客だったことが嫌気され昨年末にかけて取り付け騒ぎが起きていました。暗号資産関連の預金は第4四半期に7割近く急減しています。米ウォールストリートジャーナル紙によれば、約81億ドル(1ドル=136円、約1兆1000億)の引き出しに対応するため、シルバーゲートは資産を投げ売りせざるを得ない状況に陥っていたようです。
もっとも2日の米国市場では、シルバーゲート株の暴落を横目に、ビットコインだけでなく主要なアルトコインはどちらかというと底堅い動きだったとも言えます。これは、米株式市場の全体を見渡すと総じて堅調だったということがあるのでしょう。
※Trading Viewより
しかしながらその後、コインベースやビットスタンプ、ギャラクシーデジタルなどを含めた暗号資産関連企業が次々とシルバーゲートとの取引停止を発表。暗号資産の流動性不足を懸念する声が米国夜(日本時間3日午前)に急速に高まり、おそらく大口投資家が売り走ったと思われます。それにより、溜まっていた買い持ちが一気に投げさせられたのでしょう。
一時パニック的な売りとなり、暗号資産情報サイトCoinDeskによれば、先物市場で買い持ちの清算額は8月以来の規模まで拡大したということです。
「Bitcoin Long Liquidations Hit Highest Level Since August」
シルバーゲート 2年間で資産規模が8倍に
さて元凶のシルバーゲート、coindeskのこちらの記事「The Rise and Fall of Silvergate’s Crypto Business(シルバーゲートの暗号資産事業の盛衰)」によれば、資産規模が最も大きかった2021年第4四半期には160億ドルと19年の当時から8倍近くも増加していました。
Silvergate Exchange Network(SEN)という24時間・年中無休でドルと暗号資産の交換が可能なサービスや、ビットコインを担保にドルを貸し付ける商品など独自のサービスを展開。当時は暗号資産の市場規模が急速に拡大し、シルバーゲートにとって追い風が吹いていました。
米投資銀行大手のゴールドマン・サックスも、条件付きながらシルバーゲートの成長見通しに楽観的な見方を示していました。
※coindeskサイトより
しかしながら暗号資産市場が一時の隆盛を失い、そこに重要顧客FTXの詐欺が明るみにでてシルバーゲートの信頼もガタ落ち。結局、一時は半年間で取引高が4060億ドルにも達したSENは閉鎖されました。
「シルバーゲート銀が取引所ネットワークを閉鎖」コインテレグラフ
他にも懸念材料、まだあるの?
ある暗号資産アナリストによれば、市場にとって逆風となる「5つの懸念材料」があるそうです。
シルバーゲート問題はそのうちの1つでした。
「There are 5 major crypto headwinds alarming the market right now」
他には、2014年に破産したビットコイン取引所「マウントゴックス」に絡んだ思惑です。債権者へのBTC返還(合計で14万2000BTC)が実施された場合に売り圧力になるという話。昨年夏に浮上し、第9回「久しぶりのフラッシュクラッシュ、今さらマウントゴックス?」、その日が近づいているとの見方です。
また、まもなく実行されるイーサリアムのアップグレード、「上海アップグレード」も取り上げられています。ネットワークに預け入れられていた(ステーキング)イーサが引き出され、こちらも売りに繋がるということなのでしょう。
くわえて、「マクロ経済の変化」と「規制当局による暗号資産の取り締まり強化」です。
マクロ経済については、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の議会証言が米金利の先高観を強め、リスク資産にとってはネガティブ要因に働いています。規制強化については、第33回「ビットコイン とばっちり食らう、PoWには関係なし?」で取り上げました。
個人的には、暗号資産市場の本格的な回復にはFTXの膿み出しは必要だと思っていましたが、それ以外にも気を付けねばならいことはまだあるようですね。