第151回「ビットコイン、中東情勢で右往左往 現物ETFには着実に…ところで日本も」

再び中東情勢で右往左往


代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は、2025年6月25日19時頃、対円では1557万円前後と前週(7日前)比で約2.5%高い水準で取引されています。BTCドルが10万6800ドル付近での値動きです。

 

他、暗号資産で時価総額2位のイーサリアム(ETH)は前週比3.6%前後の下落率、リップル(XRP)は1%弱の上昇、ソラナ(SOL)が0.8%低下と主要アルトコインはまちまちです。

 

※アルトコイン、ビットコイン以外の暗号資産の総称。オルタナティブ(alternative、代替)コインを略したもの。

 

週末を挟み暗号資産は、再び中東情勢を巡るリスクセンチメントの強弱で右往左往させられました。

※Trading Viewより

 

米の対イラン攻撃で緊迫感が↑

 

米軍は21日、イスラエルと交戦するイランの核施設を攻撃しました。トランプ米大統領はその前日、「イランに2週間の猶予を与える」ことを示唆した後なだけに、市場参加者にとってはサプライズでした。

 

今や株などと同じリスク資産として扱われるBTCは、当然ながら売りの流れが強まりました。BTC円は1500万円割れで下値を試し、BTCドルも10万ドルを下抜けました。

 

23日(月)の日本時間早朝には、BTCは対円で1437万円、対ドルでは9万8300ドル前後と5月8日以来の安値圏まで下落しました。

 

先物市場でも、暗号資産の強気派が持ち高の清算(強制的に売り戻される)に追い込まれました。

「米軍によるイラン核施設空爆で暗号資産ロングポジションが…」コインデスク


こちらの記事↑によると、24時間で合計6億ドル弱(1ドル=146円で870億円超)、人数にして17万2000人以上!のトレーダーのポジションが清算されたということです。

 

特にイーサリアム(ETH)ロングの投げが大きく、2.82億ドルとBTCよりも1.3億ドル近く多かったとされています。

※ETH/BTCチャート、Trading Viewより


 ETH/BTCの時間足チャートをみると、日本時間20日夜から23日未明までで、ETHが対BTCでも10%近く下落していました。現在のETHの重さは、そのときの影響がまだ残っているのかもしれません。

 

状況は改善、BTCは上昇へ

 

週明けの売りが一巡すると、BTC相場は意外とあっさり上昇に転じました。対ドルでは10万ドル超え、対円でも1500万円を回復します。まさしくクライマックス売りだったのかもしれません。

 

米国によるイラン攻撃は、核施設を狙った「限定的なもの」であることをトランプ政権が強調。それを受けたイランによる報復措置も、事前に通知したカタールの米軍基地のみに留まり、中東紛争激化への懸念が後退しました。

 

その後トランプ米大統領が、「イスラエルとイランの停戦」をSNSに投稿。それに対して双方とも直ぐに同意しなかったものの、徐々に戦闘終結に向けて動きだしました。


金融市場のリスクセンチメントも急速に改善し、暗号資産への買い安心感が再び強まりました。

 

※Trading Viewより

 

現物ETF、今月最大の流入 ところで日本では…

 

さて米国で上場されている現物ビットコインETFですが、総ネットフローでは24日まで11営業日連続で流入を記録していました。

 

米国の対イラン軍事行動への警戒感が高まっていた20日でさえも、小幅ながらネットでプラスでした。イスラエルとイランの停戦期待が高まった24日は、約5.89億ドル(約860億円)と6月最大の流入額となりました。

 

「機関投資家のビットコイン投資意欲は、依然としてかなり高いまま」ということなのでしょう。

 

※Crypto Market Capより


さて日本国内では、ビットコインETFは上場されていません。ただし、25日に金融庁が開いた第55回金融審議会総会を経て、暗号資産に対する規制に変化が見えてきした。


金融庁ウェブページからダウンロードできる配布された資料がこちら

「暗号資産を巡る制度の在り方に関する検討について」


こちらについて、次回は触れていきたいと考えています。

 

為替情報部 アナリスト

小針 卓哉

1993年に米系銀行へ入行し、外国為替部でインターバンク・スポットディーラーとなる。ドル円のみならず豪ドルやドルマルクなどの通貨も担当し、東京市場を中心に活躍。 ユーロ発足後からは、ユーロドルやユーロクロスなどを担当。その後に移った米系証券や大手邦銀のトレーディング部においても欧州通貨を中心に取引し、収益手法は主に短期的なトレーディングを得意とした。 為替相場以外では、アンガーマネジメント・ファシリテーターとしての一面もある。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチ社に入社。

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