暗号資産ウォッチャー これに注目!

第80回「ビットコイン、高値から2割下落 売り手はヤツが・・そろそろ終わり?!」

あの高値が夢のよう、弱気相場にはまだ

 

代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は、1月24日15時時点では対円で590万円前後と前週(7日前)比で7%近い下落率です。BTCドルも節目の4万ドルを割り込んだ水準で推移しています。

 

週初から売り圧力が強まり、23日のニューヨーク序盤にはBTC円が一部取引所で572万円前後、BTCドルは3万8500ドルまで下値を広げました。米国時間11日に同国の証券取引委員会(SEC)が現物ビットコイン上場投資信託(ETF)を承認し、715万円近辺/4万8700ドル台まで上伸したのが夢のようです。


※※Trading Viewより

 

株式市場などでは、上昇トレンドの中でつけた高値から20%下落すると「弱気相場入り」という捉え方があります。BTC円の直近の動き「715万円を高値に572万円までの下落」が20%の下落率です。

 

この20%という水準、あくまで目安ではあります。値動きが激しい暗号資産では、大きなトレンド転換の区切りはもう少し幅を広げる必要があるかもしれません。ただ、そういった見方もあると頭の片隅には置いておいたほうが良いでしょう。

 

執筆時点では、ビットコイン相場は下落率20%で何とか持ちこたえています。

 

ETF、流入拡大も価格上昇に繋がらず

 

さて、ビットコイン支持者たちが待ち焦がれた現物ETFですが、先週は流入拡大が話題となっていました。運用資産残高は先週時点で約9万5000BTC、40億ドル(1ドル=148円換算で5920億円)に迫ったというのです。

 

Bitcoin MagazineのXより


こちらのコインテレグラフの記事でも取り上げています。

「ビットコインETFに6日間で95,000BTC流入、運用資産残高は40億ドルに迫る」コインテレグラフ

 

しかしながら、現物ビットコインETFへの資金流入=BTC価格の上昇には繋がりませんでした。

 

モノの価格は買いが売りより多ければ上がり、逆に売りが多ければ下がります。単純ですが金融相場も同じです。つまりビットコインの大幅下落は、売りたい人、または売らなければならない人が多かったということでしょう。

 

売り手は最大のビットコインETF

 

昨年8月末のコラム「ビットコイン、復活!きっかけはGBTC・・・」で、暗号資産運用会社グレースケール・インベストメンツが運用しているファンド「Grayscale Bitcoin Trust(以下GBTC)」について取り上げました。

 

SECが現物ビットコインに連動するETFの上場を承認し、このGBTCも現物(スポット)ETFに転換されました。SEC承認後から資金を集め始めた他ファンドと違い、GBTCは以前のファンド分を持ち越したため世界最大のビットコインETFとなりました。

 

 

最大のETFが売り手に回ったことが、大幅下落の主要な要因だったようです。

 

こちらのサイトBitcoinTreasuries.NETでは、ビットコインを大量に保有している企業やファンドがまとめられています。

GBTC(Grayscale Bitcoin Trust)の動向も以下のようにフォローできます。

SECがETFを承認した翌日、1月12日からBTCの持ち高(BTC Balance)が減少し続けています。


ETFの取引き開始当初は2000BTCを超える程度に留まっていました(それでも130億円ですが)。60万BTC以上も保有しているGBTCから、他のビットコインETFへの移し替えとも見られていました。

 

それが、先週前半から1万BTCを超える規模の減少が今週に入るまで続きました。1月12日時点で62万弱だったBTC保有数は、23日時点では53万強にまで縮小しています。

 

その後ろにはやつがいた、もうそろそろ終わり?

 

GBTC以外の9つの現物ETFには資金が流入しており、その分のBTC保有量も拡大しています。BloombergのETFシニアアナリストのXによれば、ブラックロックのiSharesは4万1000BTCを超え、フェデリティも3万5000BTCを上回っています。


前述のBitcoinTreasuries.NETとGBTCは1日ずれがありますが、新たなETF合計で11万超のBTCを保有しています。 


Balchaunas氏のXより

 

ただし、GBTCから単純に他ETFに移った訳ではなさそうです。というのもGBTCから資金を引き出していたのは、2022年11月に破綻した暗号資産交換業者FTXだったからです。

 

「ビットコインETFからの資金流出、大部分はFTXによる売却」コインデスク

「FTX管財人、保有していたグレイスケール・ビットコイントラストの3分の2を売却」コインテレグラフ

 

上記の記事によれば、FTXは10億ドル規模のGBTC株を保有していたようです。FTXの管財人が持ち分の3分の2を売却し、それがグレースケールによるBTC売りの大部分を占めたと言われています。

 

さて市場では、「FTXに絡んだ売りが終われば、BTCは再び反発する」と見る人が増えています。

「グレイスケールのビットコインETF 資金流出はいつ止まるか?」コインテレグラフ

「FTXのGBTC10億ドル売却報道でビットコイン強気派が盛り上がる」コインデスク


そろそろ終わりと確かに思えてしまいますが・・・。

この連載の一覧
第94回「ビットコイン、2割下落は買い場? 月間の連勝記録は途絶え5月は鬼門かも」
第93回「ビットコイン、4年に1度のイベント終了 半分になったことが・・・」
第92回「ビットコイン、下落はあの国のせい? リスク耐性はどこいった」
第91回「ビットコイン、対円では高値更新も米国では小休止 香港が追随?! そして半減期」
第90回「ビットコイン、月間の連騰記録を更新 日足チャートで気になる形も」
第89回「ビットコイン、やっぱりETF次第・・・ 手数料高いとやっぱりダメ?!」
第88回「ビットコイン、大幅下落も何のその 相変わらずのジェットコースター相場」
第87回「ビットコイン、巨人がかき集め中 わずか2カ月で追いついたETFも」
第86回「ビットコイン、ついに夢の水準へ 機関投資家はこれから?!」
第85回「強すぎるビットコイン、まだ重要イベントが控える」
第84回「ビットコイン、対円では最高値更新 お隣が前向きな感じ」
第83回「どうにも止まらない、ビットコイン ETFによる保有量はあの企業も上回る」
第82回「ビットコイン、1月は何とかプラス 都合の良い見方にはご注意」
第81回「ビットコイン、トータルでは流入増だった 半値戻しは・・・」
第80回「ビットコイン、高値から2割下落 売り手はヤツが・・そろそろ終わり?!」
第79回「ビットコイン、祝・現物ETF承認!事実で売られるも取引は活況」
第78回「ビットコイン、年初も材料変わらず フェイクニュースもなんのその」
第77回「ビットコイン、4カ月連続のプラスとなるか 辰年への期待も高いまま」
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第75回「ビットコイン、荒い動き ただし下落率は意外とそれほどでも?」
第74回「フィーバー中に、ビットコインがフィーバーしていた! それも仕方なし」
第73回「ビットコイン、先物市場は盛り上がり ただし現物ETFへの待ち疲れ感も?」
第72回「ビットコイン、アルゼンチンからバイナンスまで材料多し 上げて下げて結局まだ底堅い」
第71回「ビットコイン、強気に傾き・買われ過ぎ感も高まっていた 後付けではありますが」
第70回「ビットコイン、5%下落は調整の範囲内、でもポジションの急拡大には要注意?」
第69回「まだまだ強いビットコイン、クジラも活発化 ハロウィンで15周年」
第68回「ビットコイン、年初来では2倍超に!ETFに心躍らせる人たち 」
第67回「ビットコイン、誤報にもめげず底堅い あの高級車も買えるようになる?!」
第66回「地政学リスクよりもハッキングリスク、9月や第3四半期は今年最悪」
第65回「急騰の要因は色々あれど、マスク氏も関係?米議会の混乱や債務増もポジティブ材料に」
第64回「ビットコイン、米金利とドルに振り回され再び暗雲も しかし挫けない男は追加でご購入」
第63回「ビットコイン大台回復、大手参戦が追い風に たまには他のコインも要チェック」
第62回「再びFTXで大騒ぎ、ソラナが大幅安 一方ビットコインは底打ち期待も?! 」
第61回「ビットコイン、9月は本当に"fall"なの?今年もアノマリーが気になる」
第60回「ビットコイン、復活!きっかけはGBTC そしていよいよETFも・・・」
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第58回「ビットコイン、売り買い材料が交錯 あのトランプ氏も心変わり?」
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第29回「クジラがショートカバーを誘発?! 最後の一押しは日銀」
第28回「ビットコイン 年始はまずまずのスタート、より身近になった?」
第27回「ボラティリティ低調、でも今年のビットコインは進展!」
第26回「期待は失望に変わり、一喜一憂すべきではないとの助言も・・・」
第25回「厳しい年、規制強化は仕方なし?・・・理想は遠い」
第24回「あれから1カ月、ようやく明るい話も」
第23回「破綻の検証始まるも・・・先はまだ長そう」
第22回「FTX破綻の衝撃拡大、ただ日本法人は年内にも?!」
第21回「FTX/アラメダ破綻、FTT暴落・・・暗号資産は今後?」
第20回「ETHがBTCをアウトパフォーム、市場全体をけん引」
第19回「BTC 今年も10月は良い月に、依然としてボラは注視」
第18回「ビットコイン やっと反発、ボラティリティの底打ち感も?」
第17回「何時でも何処にでも、ウクライナ支援も」
第16回「BTCと米株、相関関係はあるの?」
第15回「BTC、9月アノマリーはどうなった?」
第14回「ビットコイン かなり電気を使い過ぎ?世界で23番目と同等」
第13回「マージ後にETH下落、運の悪さも?完成度はまだ・・・」
第12回「イーサリアム、地球に優しくなるために」
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第10回「BTCにとって怖い9月、一方でETHは?」
第9回「久しぶりのフラッシュクラッシュ、今さらマウントゴックス?」
第8回「ディフェンスは重要、保管の方法は?」
第7回「時価総額9位がハッキング被害、財布のせい?」
第6回「ビットコイン、まずはエビになってみる?」
第5回「ビットコイン 金融市場の入り口に?」
第4回「ビットコインもFOMCは無視できず」
第3回「ビットコインの魅力~それは自由、黎明期を振り返る」
第2回「ビットコインって魅力的?」
第1回「ビットコイン、えらいことになってます!」

為替情報部 アナリスト

小針 卓哉

1993年に米系銀行へ入行し、外国為替部でインターバンク・スポットディーラーとなる。ドル円のみならず豪ドルやドルマルクなどの通貨も担当し、東京市場を中心に活躍。 ユーロ発足後からは、ユーロドルやユーロクロスなどを担当。その後に移った米系証券や大手邦銀のトレーディング部においても欧州通貨を中心に取引し、収益手法は主に短期的なトレーディングを得意とした。 為替相場以外では、アンガーマネジメント・ファシリテーターとしての一面もある。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチ社に入社。

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