暗号資産ウォッチャー これに注目!

第5回「ビットコイン 金融市場の入り口に?」

暗号資産、どのくらいの人たちが?


皆さんの周りに、暗号資産(仮想通貨)を保有している人どのくらいいるでしょうか?


消費者の暗号資産保有行動

野村総合研究所(NRI)が3年ごとに行っている「生活者1万人アンケート調査」の結果です。調査は昨年夏に行われ、ウエブサイトには今年2月に発表されました。


こちらによれば回答者の1.7%が暗号資産を保有しており、前回2018年と比べる0.6ポイント上昇しました。株式保有13.5%や投信11.9%とはかなり差はありますが、増加率として大きいという評価です。


調査対象者年齢は15-80歳とされ、リスク資産保有者のプロフィールによれば、暗号資産保有の平均年齢は40代前半でした。これは株式や投信の50代半ばから比べると、若年層に人気があるようですね。


3月や5月の海外の記事では、さらに若い20-30代の若者が暗号資産に引き付けられているというニュースも見受けられました。

ビットコイン、安定の秘密は若い「ホドラー」

Z世代がはまる暗号資産 何が若者を吸い寄せるのか



暗号資産交換業の自主規制団体として設立された日本暗号資産取引業協会(JVCEA)は、毎月ウエブサイトで協会会員の合計口座数を発表しています。


その統計情報によれば、5月時点での口座数(証拠金を含む)は約610.6万口、そのうち稼働口座は約351.3万口でした。これは1年前の470.8万口と276.5万口に比べて3割に迫る増加率です。


私のように1人で複数の取引所で口座を開設している人もいるでしょうから、単純に口座数イコール暗号資産の保有者数とはならないでしょう。ただ、昨年から今年にかけても暗号資産市場に参入した人は着実に増えたということは明らかです。


ちなみ1ビットコイン(BTC)は300万円を挟み上下していますが、1BTCが最小の取引単位ではありません。取引所にもよりますが、多くが0.0001BTC-0.001BTC(300円-3000円程度)から受け付けています。


※日本暗号資産取引業協会データを参照し作成


ビットコイン、7月の値動きを振り返る


さてここで、7月に入ってからのビットコイン(BTC)の値動きを振り返ってみましょう。


執筆している7月25日15時頃では、1BTCが299万円前後で取引されています。時価総額は約57兆円、暗号資産全体の占有率は41.5%となっております。

※数値はコインマーケットキャップを参照


大きな区切りとしては4つでしょうか。

・7月の初めにつけた252万円台が底となり、月前半のうちに305万円台まで買い戻し

・305万円台からは260万円台まで再び水準を下げる

・260万円台からは切り返し、20日には335万円台まで大幅に上昇

・戻り高値から296万円台まで再び水準を下げました


上げた場面ではクジラと言われる大口保有者たちの買い増しが出たとされ、それに小口が追随。また、悪材料の出尽くし感による買い戻しなどにも後押しされたようです。下げたところでは、暗号資産ファンドの清算、電気自動車テスラが大量に買い持ちを減らしたことなどのニュースが流れていました。


また、先週の【暗号資産よもやま話】第4回でも触れたナスダック総合の動向も、相関性の高さは変わらずビットコインの値動きに大きく影響しました。


前述した4つの区切りでのビットコインの変動率をみてみると、「21%上昇し、14.7%下落、そこから28.8%の大幅上昇を記録した後に、11.6%下落」。その間にも5%程度の上下は常にしていたような印象です。




出所:Trading Viewより


買いたい、売りたいは人の性(サガ)


ビットコインの元来の目的は、「既存の金融システムから離れ、自由に送金や決済ができる」というものでした。しかしながらこれだけ激しく価値が上下してしまっては、デジタル通貨としての機能を働かせるのは難しいということは否定できません。

※お金が持つ機能の説明はこちら⇒一般社団法人全国銀行協会


なぜここまでビットコインは激しく動いてしまうのでしょうか。


その答えとして、「CBDC 中央銀行デジタル通貨の衝撃」(新潮社)という本のなかで著者の野口悠紀雄氏は、人は価格が変動するものを投機の対象とするからと述べています。


株式や外国為替(FX)には劣りますが、国内で暗号資産業者が運営する取引所もかなり整備されてきたと感じます。また、米国では世界最大の先物取引所もビットコインを取り扱い、北米ではビットコインのETF(上場投資信託)も承認されています。


ビットコインへの投資環境が整い、様々な取引方法が提供されれば、人の性(サガ)として「買ってみたい、売ってみたい」となってしまうのでしょうか。


ただ株式やFXほど参加者の裾野が広がっているわけでもなく、流動性(取引所で言えば板の厚み)は薄いというのが現状です。それが値動きの大きさに繋がっている原因の1つかもしれません。


※取引所のビットコイン板状況 左がbitFlyer、右がGMOコイン


トレンドを捉える練習に?


ここでビットコインの値動きを考えてみると、一定の幅のトレンドが出やすいとも言えそうです。トレンドとは相場の方向性や傾向のことです。このトレンドを捉える・見極めるのが、金融市場で生き残るコツの1つだと思っています。


ビットコインを取引することで、そのトレンドを掴む練習になるかもしれません。


ビットコインは少額から参入でき、逆指値を置ける取引所も増え、土日を含めて24時間取引できます。また、今のビットコイン相場はナスダック総合など株式相場も目を向けねばならず、ドルインデックスが影響するという人もいます。


これらの相関性がいずれ変わる可能性はあるものの、「他の市場も注視し、調べる」というトレードにおける大切なクセをつけることもできるでしょう。


もしかしたらビットコイン取引は、金融市場への1つの入り口/投資への第1歩としても良いのかもしれません。


そのビットコインで金融市場を感じるには、まずは取引所に口座開設ですね。来週は暗号資産業者が運営する取引所について、私が気にしている ポイントについて述べたいと考えています。


この連載の一覧
第94回「ビットコイン、2割下落は買い場? 月間の連勝記録は途絶え5月は鬼門かも」
第93回「ビットコイン、4年に1度のイベント終了 半分になったことが・・・」
第92回「ビットコイン、下落はあの国のせい? リスク耐性はどこいった」
第91回「ビットコイン、対円では高値更新も米国では小休止 香港が追随?! そして半減期」
第90回「ビットコイン、月間の連騰記録を更新 日足チャートで気になる形も」
第89回「ビットコイン、やっぱりETF次第・・・ 手数料高いとやっぱりダメ?!」
第88回「ビットコイン、大幅下落も何のその 相変わらずのジェットコースター相場」
第87回「ビットコイン、巨人がかき集め中 わずか2カ月で追いついたETFも」
第86回「ビットコイン、ついに夢の水準へ 機関投資家はこれから?!」
第85回「強すぎるビットコイン、まだ重要イベントが控える」
第84回「ビットコイン、対円では最高値更新 お隣が前向きな感じ」
第83回「どうにも止まらない、ビットコイン ETFによる保有量はあの企業も上回る」
第82回「ビットコイン、1月は何とかプラス 都合の良い見方にはご注意」
第81回「ビットコイン、トータルでは流入増だった 半値戻しは・・・」
第80回「ビットコイン、高値から2割下落 売り手はヤツが・・そろそろ終わり?!」
第79回「ビットコイン、祝・現物ETF承認!事実で売られるも取引は活況」
第78回「ビットコイン、年初も材料変わらず フェイクニュースもなんのその」
第77回「ビットコイン、4カ月連続のプラスとなるか 辰年への期待も高いまま」
第76回「ビットコイン、飛び跳ねた年 年明けも好材料が待ち受ける?!」
第75回「ビットコイン、荒い動き ただし下落率は意外とそれほどでも?」
第74回「フィーバー中に、ビットコインがフィーバーしていた! それも仕方なし」
第73回「ビットコイン、先物市場は盛り上がり ただし現物ETFへの待ち疲れ感も?」
第72回「ビットコイン、アルゼンチンからバイナンスまで材料多し 上げて下げて結局まだ底堅い」
第71回「ビットコイン、強気に傾き・買われ過ぎ感も高まっていた 後付けではありますが」
第70回「ビットコイン、5%下落は調整の範囲内、でもポジションの急拡大には要注意?」
第69回「まだまだ強いビットコイン、クジラも活発化 ハロウィンで15周年」
第68回「ビットコイン、年初来では2倍超に!ETFに心躍らせる人たち 」
第67回「ビットコイン、誤報にもめげず底堅い あの高級車も買えるようになる?!」
第66回「地政学リスクよりもハッキングリスク、9月や第3四半期は今年最悪」
第65回「急騰の要因は色々あれど、マスク氏も関係?米議会の混乱や債務増もポジティブ材料に」
第64回「ビットコイン、米金利とドルに振り回され再び暗雲も しかし挫けない男は追加でご購入」
第63回「ビットコイン大台回復、大手参戦が追い風に たまには他のコインも要チェック」
第62回「再びFTXで大騒ぎ、ソラナが大幅安 一方ビットコインは底打ち期待も?! 」
第61回「ビットコイン、9月は本当に"fall"なの?今年もアノマリーが気になる」
第60回「ビットコイン、復活!きっかけはGBTC そしていよいよETFも・・・」
第59回「どうしたビットコイン?スペースXのせいなのか さて、どのサインを信じるか」
第58回「ビットコイン、売り買い材料が交錯 あのトランプ氏も心変わり?」
第57回「リップルにつれ安、8月のビットコインは?そして6カ月後までに・・・」
第56回「ビットコイン、400万円台維持 ネガティブニュースも跳ね返す」
第55回「ビットコイン、ゴールドのように羽ばたけるか ただしETFはもう少し先かも?」
第54回「Simple is Best、相場は単純に考える ところでBTCが上がらない理由は?」
第53回「ビットコイン 円高の影響、分かれたヤツは元気」
第52回「ビットコイン、対円にしました!口座開設はもうお済み?」
第51回「現物ETF 承認への期待大! ただし一旦落ち着く必要も・・・」
第50回「ビットコイン、救世主が出現! 現物ETFへの期待高まる」
第49回「BTCの占有率上昇、ただし市場が盛り上がっているわけでは・・・」
第48回「ビットコイン SECの圧力はちょっと違う、底打ち感も?!」
第47回「ビットコイン 5月は失速、でも今年中には大幅上昇?!」
第46回「ビットコイン 動かず、過去2回はその後に大波」
第45回「G7は規制強化 交換業大手はカナダから日本へ」
第44回「ビットコイン 4カ月連騰、手数料高騰が懸念?」
第43回「ビットコイン 冬は終了?欲張り過ぎには要注意」
第42回「イーサリアム 待ち時間は延びる、BTC 10カ月ぶりの高値をつけるも・・・」
第41回「ビットコイン 約10カ月ぶりの高値、信じる者は・・・」
第40回「リップル 3月は元気いっぱい、裁判の終わりが見えた?!」
第39回「当局の圧力にも負けず、BTC買い衰えず」
第38回「ビットコイン 時価総額はメタ超え、強欲な感じも・・・」
第37回「まるでジェットコースター、ビットコイン 代替資産としての位置づけも」
第36回「ビットコイン とんだ雛祭りに、懸念材料は複数残る?」
第35回「ビットコイン 売り持ちファンドに資金流入、投資家の懸念を反映」
第34回「昨年6月以来の高値更新、ビットコインの上昇要因を探る」
第33回「ビットコイン とばっちり食らう、PoWには関係なし?」
第32回「ビットコイン、2月も底堅い クリスマスまでには?!」
第31回「イーサリアム、マージから4カ月半 伸び代あり?!」
第30回「悪いニュースに反応せず、アノマリーもあったとは」
第29回「クジラがショートカバーを誘発?! 最後の一押しは日銀」
第28回「ビットコイン 年始はまずまずのスタート、より身近になった?」
第27回「ボラティリティ低調、でも今年のビットコインは進展!」
第26回「期待は失望に変わり、一喜一憂すべきではないとの助言も・・・」
第25回「厳しい年、規制強化は仕方なし?・・・理想は遠い」
第24回「あれから1カ月、ようやく明るい話も」
第23回「破綻の検証始まるも・・・先はまだ長そう」
第22回「FTX破綻の衝撃拡大、ただ日本法人は年内にも?!」
第21回「FTX/アラメダ破綻、FTT暴落・・・暗号資産は今後?」
第20回「ETHがBTCをアウトパフォーム、市場全体をけん引」
第19回「BTC 今年も10月は良い月に、依然としてボラは注視」
第18回「ビットコイン やっと反発、ボラティリティの底打ち感も?」
第17回「何時でも何処にでも、ウクライナ支援も」
第16回「BTCと米株、相関関係はあるの?」
第15回「BTC、9月アノマリーはどうなった?」
第14回「ビットコイン かなり電気を使い過ぎ?世界で23番目と同等」
第13回「マージ後にETH下落、運の悪さも?完成度はまだ・・・」
第12回「イーサリアム、地球に優しくなるために」
第11回「暗号資産のビッグイベント! The Merge」
第10回「BTCにとって怖い9月、一方でETHは?」
第9回「久しぶりのフラッシュクラッシュ、今さらマウントゴックス?」
第8回「ディフェンスは重要、保管の方法は?」
第7回「時価総額9位がハッキング被害、財布のせい?」
第6回「ビットコイン、まずはエビになってみる?」
第5回「ビットコイン 金融市場の入り口に?」
第4回「ビットコインもFOMCは無視できず」
第3回「ビットコインの魅力~それは自由、黎明期を振り返る」
第2回「ビットコインって魅力的?」
第1回「ビットコイン、えらいことになってます!」

為替情報部 アナリスト

小針 卓哉

1993年に米系銀行へ入行し、外国為替部でインターバンク・スポットディーラーとなる。ドル円のみならず豪ドルやドルマルクなどの通貨も担当し、東京市場を中心に活躍。 ユーロ発足後からは、ユーロドルやユーロクロスなどを担当。その後に移った米系証券や大手邦銀のトレーディング部においても欧州通貨を中心に取引し、収益手法は主に短期的なトレーディングを得意とした。 為替相場以外では、アンガーマネジメント・ファシリテーターとしての一面もある。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチ社に入社。

小針 卓哉の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております