暗号資産ウォッチャー これに注目!

第19回「BTC 今年も10月は良い月に、依然としてボラは注視」

BTCドル、10月は3カ月ぶりにプラスで終了

 

代表的な暗号資産ビットコイン(BTC)は1日の東京夜、対ドルでは2万0400ドル前後で推移しています。10月の騰落率は約5.5%高、月間では3カ月ぶりに上昇して終えました。ただし年初来では、残念ながら55%ほどの下落率ではあります。

 

暗号資産分析サイトcoinglassによれば10月は、2013年から21年にかけてマイナスで終えたのが2回に対しプラスが7回と好調な月であり、その流れを今年も引き継ぎました。ただ9月がかなり弱い月のため、その反動とも言えるかもしれませんが・・・。

 

BTCの9月が弱いというアノマリー(よく当たると言われている経験則・規則性)に関するコラムはこちら↓

【暗号資産よもやま話】第10回「BTCにとって怖い9月、一方でETHは?」

【暗号資産よもやま話】第15回「BTC、9月アノマリーはどうなった?」

 

↓こちらがcoinglassサイトによるBTCドルの月間パフォーマンスです。

 

ショートカバー、買いが買いを呼ぶ展開

 

先月のBTCは下旬まで明確な方向性もなく、狭い値幅で取引されていました。しかしながら日本時間25日の夜から買いが強まり、同日1万9300ドル台で始まったBTCドルは2万ドル台に乗せ、翌日は一時2万1000ドル付近まで上昇。既に大幅反発していた米国株の動きに遅ればせながら追随した形となりました。

 

このBTCの上げについては、↓こういった記事が見受けられました。

Bitcoin, Ethereum Rally Liquidates Over $1 Billion in Trades Overnight

「ビットコイン、イーサリアムの上昇により、一晩で10億ドル以上の取引が清算される」

※情報サイトdecryptより


月半ばまではどちらかと言えば上値が重かったこともあり、暗号資産の先物やパーペチュアル(限月がない)市場ではレバレッジをかけた売り持ち(ショートポジション)がかなり溜まっていたようです。


相場全体の持ち高がかなり「売り」に偏っていたことで、上昇した場面では持ち高の清算を強いられた買い戻しが、更なる買い戻しを呼びました。売り持ち側の清算額は合計で9億7900万ドルとされています。


※FXや先物などで使われる「レバレッジ」とは、担保として預けた証拠金の何倍にも相当する資金で取引できることを意味します。日本の交換業者が提供する暗号資産の先物取引はレバレッジ2倍ですが、海外では100倍以上のレバレッジを提供する取引所も多くあります。

 ※パーペチュアルについては、暗号資産交換業者FTX Japanのサイトを参照してください。「パーペチュアル取引(PERP)とは?」


ところでCoinglassのデータによれば↓、10月25-26日だけでなく29日にもポジション清算が膨らんでいました。

 

 

BTCのボラティリティ、どうなった?

 

前回の【暗号資産よもやま話】第18回「ビットコイン やっと反発、ボラティリティの底打ち感も?」で触れたBTCドルのヒストリカル・ボラティリティ(HV)が持ち直しつつある件について、その後どうなったかを見てみましょう。

 ※ボラティリティとは、その商品の変動度合いや変動率(性)のこと。


今回もTrading ViewでcoinbaseのBTCドルとインジケーターHVを使用します。

 

↓のチャート、HVは24日の20付近を底に10月29日には11日以来の30超えまで回復しましたが、月末にかけては小康状態でした。BTCドルが2万1000ドル上値に伸び悩んだことが影響したようです。



ところで過去にも、BTCドルのHVが20付近またはその水準を下回ったところから回復した局面が何度かありました。その時のBTCドルとHVの動きを簡単に振り返ってみたいと思います。

 

先月より前でHVが直近一番低かったのは、21付近まで低下した2020年10月15日です。BTCドルは同年7月に約1年ぶりの1万ドル回復となりましたが、1万2500ドル前後では上値を抑えられてレンジ相場が続いていました。

 

その後、BTCドルがしっかりと1万2500ドルを超えて上昇基調を強めていくと共に、HVも11月には60台まで水準を上げています。12月かけてHVは70に向かい、BTCドルも2万ドルを目指ざして上昇していきました。

 

※Trading Viewより


ボラティリティの上昇、決して上昇トレンドを意味せず


2019年3月25-26日にはHVは18台まで低下しています(↓チャートのオレンジ〇部分)。BTCドルが約3カ月間、3000ドル台前半から4000ドル台前半の狭いレンジで推移した影響を受けました。4月に入りBTCドルが5000ドル台に乗せるとHVも急上昇。BTCドルは5月末に9000ドルに一時乗せ、HVも100台に乗せる場面もありました。


ここまではBTCドルが上昇するとHVも上昇と方向は同じです。ただしHVは変動の度合いを示す数値であり、決して上昇トレンドを示唆するものではありません


※Trading Viewより

 

↑のチャートの赤丸〇紫の矢印部分、2018年11月から12月にかけてHVが12台から120台まで急騰した局面です。BTCドルは6500ドル前後を戻りの高値に約1カ月で半分以上も価値を減らしました。

 

このようにヒストリカル・ボラティリティ(HV)だけを見ても相場の方向性は分かりません。しかしながら、変動率を示すHVが低いところから上昇基調に転じる場合、それまで溜まっていたエネルギーが相場に放たれるとも言えるでしょう。大きな値動き、トレンドの強まりを期待しても良いかもしれません。

 

現状はその低い水準から上がりつつあるように見えるBTCドルのHV、まだ暫く注視する必要がありそうです。

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第2回「ビットコインって魅力的?」
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為替情報部 アナリスト

小針 卓哉

1993年に米系銀行へ入行し、外国為替部でインターバンク・スポットディーラーとなる。ドル円のみならず豪ドルやドルマルクなどの通貨も担当し、東京市場を中心に活躍。 ユーロ発足後からは、ユーロドルやユーロクロスなどを担当。その後に移った米系証券や大手邦銀のトレーディング部においても欧州通貨を中心に取引し、収益手法は主に短期的なトレーディングを得意とした。 為替相場以外では、アンガーマネジメント・ファシリテーターとしての一面もある。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチ社に入社。

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