暗号資産、夏バテ状態
代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は8月8日8時時点で、対円では810万円台と前週(7日前)比で約17%下落した水準で取引されています。対ドルでは5万5300ドル台での推移です。
他の主要暗号資産もさえなく、対円では時価総額2位のイーサリアム(ETH)は前週比29%下落の大幅安。ソラナ(SOL)は直近24時間で下げ止まっているものの、前週比18%安と水準は低いところにいます。
米証券取引委員会(SEC)によるリップルラボへの訴訟判決が好感され、リップル(XRP)が急騰しているものの、前週比ではまだマイナスという状況。
先月下旬から今月5日にかけて、暗号資産市場は完全に夏バテ状態です。7月29日終値時点で2兆3460億ドルだった時価総額は、5日には1兆6910億ドルまで一気に縮小します。
※数値はTrading Viewを参照
時価総額の減少率は28%、6550億ドルは1ドル=145円換算で95兆円弱が失われたことになります。
※Trading Viewより
日銀総裁に驚かされ
暗号資産の下落は、株を中心にリスク資産が大きく売られたことに影響を受けています。そのきっかけの1つは、既に様々なメディアで取り上げられている植田日銀総裁のタカ派的な発言です。
・タカ派(Hawkish)とは
金融政策において、インフレ抑制を重視する立場。インフレ率が高いと経済に悪影響を与えると考え、金融引き締めを主張する傾向。
・ハト派(Dovish)とは
経済成長と雇用の促進を重視する立場。インフレ率が多少上昇しても経済成長を促進するために、金融緩和政策を支持する傾向がある。
日銀は7月31日、2日間開いた金融政策決定会合で政策金利の0.15%引き上げ決定を公表。その後の定例記者会見で、植田総裁が今後数回の利上げにも前向きな姿勢をにじませた、と市場が受け取りました。
これまで同総裁は緩和継続の必要性を訴えることが多く、引き締めには慎重な姿勢を示し続けていました。タカ派に完全に転向とまではいかなくても、政策スタンスの変化は見受けられました。
日本の金利先高観が強まったことを受け、これまで積み上げられた円キャリーポジション(低金利の円で調達し、外貨に換えて運用)の解消が進みます。運用されていた海外資産を売り、資金の円転(日本への償還、円買い)という流れです。
また、金利上昇は企業業績への圧迫となるため、日本株の重しともなりました。
更に悪いことは続く・・
今月2日に発表された7月米雇用統計が市場予想より弱かったことも、リスク回避を加速させました。
それまで米株上昇をけん引してきたハイテク株が伸び悩んでいたところでもあり、タイミングが悪かったとも言えるでしょう。世界最大の経済大国である米国で景気後退(リセッション)への警戒感が高まり、投資家はリスク資産を手放す動きを更に進めました。
グローバルに金融市場は繋がっており、またレバレッジを効かせたポジションもかなり大きいとされるなか、一旦売りのサイクルが始まると行きつくところまで行かねば止まらないようです。
日経平均は5日に4400円超安で引け、1日としては過去最大の下げ幅を記録しました。米ダウ平均も1000ドルを超える下げ幅で終えました。
米国株式市場の安定度を測る指標とされるVIX指数(恐怖指数)も急騰し、市場参加者の不安の強さを浮き彫りしました。VIXは2日に20を超えたところから、5日は一時60超えまで急騰。引け水準は30を下回るなど、パニック相場だったことが分かります。
※Trading Viewより
リスクオフに抗えず、でもクジラはしっかりと
ビットコイン(BTC)は、政府や中央銀行の管理下にある既存金融のアンチテーゼとして作られました。しかし今や、現物ビットコインETFが上場されて資金を集めるなど、(全てがとは言いませんが)既存の金融市場に組み込まれてしまっています。
ビットコインだけでなく暗号資産全般にリスク資産として取り扱われており、今回のリスクオフの流れに抗えませんでした。
※Trading Viewより
しかしながら、こういった動きはあります。
「ビットコインのクジラ、下落局面で買い増し」コインデスク
パニック的な売りが強まっていたなか、クジラといわれる大口保有者は下落した局面でも買い増ししていたようです。また、現物ETFからの流出も限定されていました。
ここが耐え時なのかもしれません。