やってはいけないこれだけの理由

第163回「自民党総裁選・・・1年前と同じと思ってやってはいけない」

昨年の自民党総裁選挙でのFXの動向は?


昨年の9月27日に自民党総裁選が行われましたが、僅か1年のうちに再び自民党総裁選が行われます。

参議院選挙で自民党が惨敗したことで、石破首相が辞任を表明したわけですが、一部では自民党政治が続く限り何も変わらないとの指摘もあります。

しかし、同じ自民党でも市場の捉え方は微妙に異なり、その都度市場は注目せざる負えません。


1年前の選挙を振り返ってみると、第1回目の投票で利上げ反対・財政拡大をモットーとした高市早苗氏が議員票と党員票ともにリードしたことで、市場は円売り・株買いに動きました。

ドル円は144円台から146.49円まで上昇しました。

しかし、決選投票では石破茂氏が逆転し、自民党総裁選で勝利を収めました。

そして、石破氏が利上げを容認し、金融所得課税の実施も肯定的だったことで、為替市場は円買い、株式市場は大幅下落になるなど、「(第1次)石破ショック」が起こりました。ドル円は146.49円から142.07円まで、翌営業日には141.65円まで下がりました。


1日半程度で5円近く動いてしまったわけですので、同じ自民党政治だから変わらないと思っていても、FXをやっている限りは無視できないわけです。


高市氏は積極財政・小泉氏は財政健全派?


現時点での世論調査では、小泉進次郎氏、林芳正氏、茂木敏充氏、小林鷹之氏よりも昨年も決選投票まで残った高市氏が次期総裁にふさわしいとの意見が多いようです。

上述のように高市氏は積極財政派だけではなく、利上げにも反対していました。

昨年時点では「金融緩和を我慢強くやらなければ、また元のデフレ状態に後戻り」「金利を今、上げるのはあほやと思う」と発言していたほどです。

今年も為替市場も高市氏が総裁選に出馬する可能性が報じられると、ドル円が数十銭単位で上昇(円売り)しました。


ただ、1年前と同様に高市氏が同じような経済政策を考えているかは不明です。

また、同様に日銀に対しても同じような考え(利上げをするのはあほ)と思っているかもわかりません。


先週19日に行われた出馬表明会見では、世界の潮流が緊縮財政ではなく積極財政と述べ、財政拡大の可能性を示唆したが、現金給付に関しては、自民党が参院選で敗北したことで、選挙で国民の支持を得られなかったと否定的な発言をしました。

また、食料品の消費減税に関しても、今の物価対策として即効性が無いとも述べています。

慎重な発言が目立ったこともあり、これまでのような日銀の利上げに対して「アホ」というような発言も避けています。


なお、高市氏に続いて人気のある小泉進次郎氏についての経済政策などは、一応市場のコンセンサスでは財務省主導で財政健全派とされています。

特に、加藤財務相を選対本部長に就任したことで、財務省の考えを進める=財政健全と確信する声が出ています。



自民党政治家の朝令暮改は日常茶飯事


中心となる2候補は、これまで通りの理論で言えば、高市氏が総裁になれば円安、小泉氏ならば円高となりそうです。

ただ、1年前とは経済情勢が変わっていることで、総裁になるためには何かを変えてくる可能性もあります。

気をつけなくてはいけないのは自民党政治家の朝令暮改は日常茶飯事ということです。


昨年よりもインフレが進んでいるように高市氏がいまでも利上げ否定派かは分かりません。

国民の多くが困窮している中で、参議院選挙の自民党敗北は財政健全が不人気だったこともあり、このまま小泉氏が財政健全を貫くかも分かりません。


そして、自民党の総裁選までの発言と、総裁就任(=首相就任)後に発言内容が180度転換することも多々あります。

昨年、石破氏が首相に就くと、これまでは、国会論戦を通じて有権者に判断材料を示してから衆院を解散する考えとしていたものが、突如衆議院選挙をする方針を発表。

更に、植田和男日銀総裁との会談後、これまでは日銀の利上げに賛成していたのが「個人的には現在、追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない」「これから先も緩和基調を維持しながら経済が持続的に発展することを期待している」と述べました。

FX市場は「(第2次)石破ショック」で一転円安に動きました。


これまで総裁(首相)候補の時点では自分の理想論を掲げていた自民党議員が、候補から総裁(首相)になると、一転してこれまでの主張を変えるのは実は日常茶飯事なわけです。

10月の総裁選、そしてその後を含めて朝令暮改を繰り返す自民党総裁(首相)が為替相場に影響を与えることになりそうです。

自民党の総裁候補の発言を信じてFXをやってはいけないとも言えます。



この連載の一覧
第163回「自民党総裁選・・・1年前と同じと思ってやってはいけない」
第162回「米インフレ指標をもう一度確認・・・どこが発表しているかを知らずにやってはいけない」
第161回「SCO首脳会談・・・米国の時代が終わったことを知らずにやってはいけない」
第160回「雇用統計を妄信してやってはいけない」
第159回「FRB人事を知らずにやってはいけない」
第158回「裸の王様となっていることを知らずにやってはいけない」
第157回「経済指標を信じてやってはいけない?」
第156回「これまでの常識が通じると思ってやってはいけない」
第155回「日米合意の茶番、『これまでにない』という言葉を信じてやってはいけない」
第154回「参議院選挙後の豹変を覚悟しないでやってはいけない」
第153回「チキンで良いときがあるのを知らないでやってはいけない」
第152回「本来の意味でのIMMポジション利用法を知らないでやってはいけない」
第151回「7月上旬…大きなリスクがあるのを知らないでやってはいけない」
第150回「輸入・輸出依存度の変化・・・代替国があるか否かを知らずにやってはいけない」
第149回「なぜウクライナ和平が米中協議に影響を与えりかを知らずにやってはいけない」
第148回「この後の6月の重要スケジュールを知らずにやってはいけない」
第147回「サプライズか否かを知らずにやってはいけない」
第146回「トランプ関税、これからの物価上昇を見ないでやってはいけない」
第146回「そのポジション7月まで我慢できますか?時間軸を無視してやってはいけない」
第145回「日本の政治家の会見を期待してやってはいけない」
第144回「小さな波に乗るために大きな波を逃してやってはいけない」
第143回「ドル売りと円買いが違うことを知らないで、やってはいけない」
第142回「米国の製造業回帰はあるのかを考えないでやってはいけない」
第141回「第2次プラザ合意はあるか?・・・万が一のリスクを考慮せずにやってはいけない」
第140回「反トランプが支持率回復・・・各国の政治状況を知らずにやってはいけない」
第139回「石破降ろし・・・FXも参議院選挙を考えないでやってはいけない」
第138回「4月上旬・・・重要な日程を知らずにやってはいけない」
第137回「ドル円の押し下げ介入のリスクを考えないでやってはいけない」
第136回「歴史は繰り返す・・・過去の歴史を知らずにやってはいけない」
第135回「なぜトランプ米大統領は停戦交渉を進めるか?・・・欧州圏の動向を考えずにやってはいけない」
第134回「2025年の10大リスク・・・すでに現実化、FXの動向も予想しないでやってはいけない」
第133回「米加墨通商摩擦・・・どこの国が得するかを考えないでやってはいけない」
第132回「リスク回避の動き・・・そろそろこれまでの常識通りにやってはいけない」
第131回「トランプ政権開始で一瞬先は分からず・・・8年前に倣ってやってはいけない」
第130回「日本の経済指標・・・真剣に読み解いてやってはいけない」
第129回「第2次トランプ政権・・・米国離れを考えないでやってはいけない」
第129回「順張り・逆張り?それぞれ何をやってはいけない?」
第128回「昨年1年は何をやったら儲かったか・・・反省せずに来年はやってはいけない」
第128回「短期・中長期のポジションについて・・・ポジションを混同してやってはいけない」
第127回「日銀総裁驚きの発言・・・総裁発言を信じてやってはいけない?」
第126回「第2次トランプ政権・・・脱米国になる可能性を無視してやってはいけない?」
第125回「何が市場を引っ張っているか分からないでやってはいけない」
第124回「12月の日銀政策決定会合・・・データを信じてやってはいけない?」
第123回「FXは専門家に任せてやってはいけない」
第122回「トランプ相場もアジア通貨の動きを見ないでやってはいけない」
第121回「第2次トランプ政権・・・Xを見ないでやってはいけない」
第120回「いよいよ大統領選挙・・・この通貨の動向を知らないでやってはいけない」
第119回「円買いの流れを一瞬で止めた石破政権・・・今後の政局を知らないでやってはいけない」
第118回「想定為替レートを知らないでやってはいけない」
第117回「日銀には独立性がないことを知らないでやってはいけない」
第116回「ダブル石破ショック・・・今月は政治に翻弄されることを知らないでやってはいけない」
第114回「ディーラーは変わり身が早いのを知らないでやってはいけない」
第113回「FRBの2大責務…今は何を重要視しているかを知らないでやってはいけない」
第112回「バイアスがかかった考えをもってやってはいけない」
第111回「円相場を見るならアジア通貨の動きを見ないでやってはいけない」
第110回「7・8月の相場を振り返る・・・この反省を生かさないでやってはいけない」
第109回「日銀の政策決定会合の結果発表時間がなぜ定まらないのか」
第108回「日銀のパラダイムシフト2…正副総裁が市場流動性を破壊」
第107回「日銀のパラダイムシフト…これまで通りの考えでやってはいけない」
第105回「スポーツ賭博もFXも②・・・嘘が常態化する人はやってはいけない」
第104回「自分が一番大事?・・・様々なことを勘繰らないでやってはいけない」
第103回「円安を本当に止める気があるのか・・・何が信用できるかを確かめないでやってはいけない」
第102回「クロス円をしっかり見ないでやってはいけない」
第101回「介入を過度に警戒してはいけない」
第100回「CPI後のFOMC、ドットプロントに織り込んだか吟味しないでやってはいけない」
第99回「南ア政局・・・これを知らないでランド取引はやってはいけない」
第98回「G7財務相・中央銀行総裁会議・・・結果を調べないでやってはいけない」
第97回「南ア総選挙、これを知らないでやってはいけない」
第96回「ラーメン3000円も高くない、自作自演の円安を知らないでやってはいけない」
第95回「利上げだけで円安が止まると思ってやってはいけない」
第94回「介入にも限界があることを知らないでやってはいけない」
第93回「スポーツ賭博もFXも①・・・バンプはやってはいけない」
第92回「毎回同じ理由で動くと思ってやってはいけない」
第91回「クロス通貨・・・どのように算出しているか知らないでやってはいけない」
第90回「FXの世界のギャンブル依存症・・・このような人はFXもやってはいけない」
第89回「カントリーリスク・・・混迷する世界情勢を知らないでやってはいけない?」
第88回「チャートポイントを信じますか?・・こんなチャート利用法はやってはいけない」
第87回「それって何の講演?・・・講演内容を知らないでやってはいけない」
第86回「タカ派ハト派を更新していますか?・・・最新の発言をアップデートしないでやってはいけない」
第84回「月のアノマリーはあるのか・・・その月の特徴を知らないでやってはいけない?」
第83回「中央銀行も変わる・・・マイナーチェンジを知らないでやってはいけない」
第82回「コンプライアンス・・・時代の移り変わりを知らずにやってはいけない」
第81回「こういう人はFXをやってはいけない③・・・利食えない人はやってはいけない」
第80回「こういう人はFXをやってはいけない②・・・損切りが遅い人はやってはいけない」
第79回「こういう人はFXをやってはいけない①・・・自分が正しいと思う人はやってはいけない」
第78回「なぜ年末は取引をやってはいけないのか・・・応当日の特殊事情」
第77回「今年1年は何をやったら儲かったか・・・反省せずに来年はやってはいけない」
第76回「昨年の値動きを忘れずにやってはいけない」
第75回「今年は今週でおしまい?・・・最後の2週間はやってはいけないこと」
第74回「実弾介入しか防げない・・・根強い円安基調でやってはいけないこと」
第73回「感謝祭相場・・・11月の特別事情を知らないでやっていけない」
第72回「要人発言を吟味しないでやってはいけないこと・・・介入は入らない?」
第71回「スイスフランの値動きを見ないで、やってはいけない」
第70回「10月の介入実績ゼロ、介入の噂だけを信じてやってはいけない」
第69回「下手な鉄砲は数撃っても当たるのか?・・・動かない相場の時は何をしてはいけないか」
第68回「中東紛争・・・過去とのFXの動きが違うことを考慮しなくてやってはいけない」
第67回「NZ総選挙を知らずにやるな・・・今日はNZドルに要注意」
第66回「米政治・次回は政府閉鎖も・・・FXも動く可能性あり」
第65回「月末は余裕がない人はやってはいけない」
第64回「ストライキ・・・舐めてはいけない経済への影響」
第63回「どうせなら格好よく言おう・・・こういえば通と思われる?」
第62回「NZ・10月総選挙・・・これを知らないでNZドルを取引してはいけない」
第61回「食料インフレ・・・国によって違うことを知らないでやってはいけない」
第60回「インフレ指標・・・これを知らずにやってはいけない」
第59回「夏枯れ相場でも手を出す3タイプのディーラー・・・やってはいけないのは?」
第58回「中銀は内容だけでなくスケジュールも異なる」
第57回「日銀?分からないときはやってはいけない・・・海外勢は理解不能」
第56回「ブラックアウト期間を知らないでやってはいけない…国によっても違う」
第54回「新聞を確かめずにやってはいけない」
第53回「スワップポイントを知らずにやってはいけない」
第52回「日銀の利上げ?・・・準備を怠らずにやってはいけない」
第51回「対ドル以外の取り引きを見ないでやってはいけない」
第50回「時間帯を知る②東京市場とは・・・これを知らずにやってはいけない」
第49回「時間帯を知る①月曜早朝取引・・・これを知らずにやってはいけない」
第48回「歴史は繰り返す・・・過去の動きを忘れてやってはいけない」
第47回「政治的な動きを知らなくてはやってはいけない」
第45回「経済指標での動きを50/50と思ってやってはいけない」
第46回「常に知識・情報をアップデートしないといけない」
第44回「銀行の融資状況を知らなくてFXをやってはいけない」
第43回「雇用・CPI等から、新たな視点に変えないでやってはいけない」
第42回「フェドウォッチを見ないでFXをやってはいけない・・・年末は95%利下げ予想」
第41回「高金利通貨は各国の状況を知らないとやってはいけない」
第40回「金融危機はまだ去っていない、最良のCEOの言葉を無視してはやってはいけない」
第39回「ドットプロットとフェドウォッチのずれを判断しないでやってはいけない」
第38回「若者こそFX取引を・・・その2、やってはいけないでなく、やってほしい」
第37回「銀行の救済問題、詳細を把握せず取引してはいけない」
第36回「若者こそFX取引を・・・その1、やってはいけないでなく、やってほしい」
第35回「肌感覚を大切にしないでやってはいけない」
第34回「タカ派・ハト派を知らずやってはいけない」
第33回「政治家の発言を吟味して取引しないといけない」
第32回「ポンドドル、ポンド円の取引をやってはいけない」
第31回「新たに注目される指標を無視してトレードをやってはいけない」
第30回「次の日銀総裁の意向を考えないで、やってはいけない」
第29回「他の市場の動きを無視して、やってはいけない」
第28回「中銀の独立性がない国の通貨はやって(買って)はいけない?」
第27回「昨年は何の通貨をやってはいけなかったか?」
第26回「提供されているヒントを無視することを、やってはいけない」
【やってはいけないこれだけの理由】第25回「重要イベント前にポジションを取ってはいけない」
【やってはいけないこれだけの理由】第24回「12月にトレードをやってはいけない」
【やってはいけないこれだけの理由】第23回「スケジュールを見ないで取引をやってはいけない…先週なぜ大きく動いたか」
【やってはいけないこれだけの理由】第22回「金利上昇=通貨買いをやってはいけない」
【やってはいけないこれだけの理由】第21回「FOMC…乗り遅れない!今年のメンバーはもう忘れよう」
【やってはいけないこれだけの理由】第20回「ファンダメンタルズには逆らうな」
【やってはいけないこれだけの理由】第19回「日本語を信じるな…翻訳ソフトで良いので原文を読む」
【やってはいけないこれだけの理由】第18回「サプライズ介入は成功するのか?」
【やってはいけないこれだけの理由】第17回「市場との対話、今回は大失敗?」
【やってはいけないこれだけの理由】第16回「アジア時間の欧州通貨の動きを捨てる」
【やってはいけないこれだけの理由】第15回「介入に備える…その4、中銀は負けが多い」
【やってはいけないこれだけの理由】第14回「日銀介入に備える…その3」
【やってはいけないこれだけの理由】第13回「日銀介入に備える…その2」
【やってはいけないこれだけの理由】第12回「日銀介入に備える…その1」
【やってはいけないこれだけの理由】第11回「FXだけで食べていく計画、その3…無料の情報を生かす」
【やってはいけないこれだけの理由】第10回「FXだけで食べていく計画、その2…高額の情報ベンダーと契約する必要はあるか?」
【やってはいけないこれだけの理由】第9回「FXだけで食べていく計画、その1…まずは金融機関と違うことを認識」
【やってはいけないこれだけの理由】第8回「儲けるために大事なこと…臆病者が勝つ」
【やってはいけないこれだけの理由】第7回「新聞は読むな?」
【やってはいけないこれだけの理由】第6回「FX詐欺でTKOされないために」
【やってはいけないこれだけの理由】第5回「どのFX指南役が信用できるか、その3」
【やってはいけないこれだけの理由】第4回「140.00円に売りなんて置いてはいけない!」
【やってはいけないこれだけの理由】第3回「どのFX指南役が信用できるか、その2」
【やってはいけないこれだけの理由】第2回「どのFX指南役が信用できるか、その1」
【やってはいけないこれだけの理由】第1回「ナンピンは魅力的。しかし・・・」

為替情報部 アナリスト

松井 隆

大学卒業後、1989年英系銀行入行。入行とともに為替資金部(ディーリングルーム)に配属。以後2012年まで、米系、英系銀行で20年以上にわたりインターバンクのスポット・ディーラーとして為替マーケットで活躍。ロンドン本店、アムステルダム、シンガポール、香港の各支店でもスポット・ディーラーとして活躍する。 銀行退職後は本邦総研、FX会社のコンサルティング、ビットコインのトレーディング等多岐にわたって活躍。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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