8月CPI発表・・・どこが発表しているか?
これまで経済指標が発表される中で、その指標が政府からなのか、民間なのかの区別はついても、政府のどの局が発表しているかは、ほとんどの人があまり気にしていなかったと思われます。
先週11日にインフレ指標の一つである8月の消費者物価指数(CPI)が発表されました。
このCPIを発表しているのは米労働省労働統計局(U.S. Bureau of Labor Statistics=BLS)です。
また、他のインフレ指標では、米連邦準備理事会(FRB)の注目度が高い指標として個人消費支出(PCE)があります。
PCEを発表しているのは 米商務省経済分析局(U.S. Bureau of Economic Analysis =BEA)です。
同じインフレ指標ですが、調査している省庁が労働省と商務省で異なっています。
CPIとPCEの違いを再確認
以前と言っても2年以上前に、こちらのコラムでCPIとPCEが異なることを説明しました。
第60回「インフレ指標・・・これを知らずにやってはいけない」に記載しています。
上記のサイトから確認できますが、簡単に内容を再掲載します。
CPIは、家計への調査(Household Surveys)
PCEは、GDPと企業への調査(GDP report and from Suppliers)
CPIは、購入した商品やサービスに対する自己負担支出のみをカバーします。
これは、直接支払われないその他の支出(雇用主が提供する保険、メディケアなど)は除外されます。
PCE は、これらの除外されたものを含めるために、より広範囲とも言えます。
CPI の計算式は、価格変動が大きいカテゴリーの影響を受ける可能性が高くなります。
PCE の計算ではこれらの価格変動が平滑化されるため、PCE は CPI よりも変動しにくくなります。
このように、同じインフレ指標でも異なる調査になっています。
BLSとBEAの違い
これまでは両指標ともに市場の信頼性のあるものでしたが、今後はデータに相違が出てくる可能性が指摘されています。
その理由が第160回「雇用統計を妄信してやってはいけない」に記載してもありますが、BLS局長が交代したことです。
これも、同コラムに記載してある物から抜粋しますが、後任についた保守系エコノミストのE・J・アントニー氏は熱狂的なトランプ支持者です。
米国議会議事堂襲撃事件へも加わっていたことでも知られています。
これまでBLSが発表していた雇用統計を出鱈目(phoney baloney)と批判していました。
逆に、政権の意向を組んで、今後はBLSの発表する指標が改ざんされないとは否定できないという憶測が高まっています。
BLSのアントニー局長の前任のマッケンターファー氏が、統計局局長の前は国勢調査局経済研究センターで労働市場担当の主任経済学者を務めている経済にも統計にも精通していました。
またBEAの局長は、ヴィピン・アローラ氏という方ですが、この方もBEA入社以前、アローラ博士は米国科学技術統計センター(National Center for Science and Engineering Statistics)の副所長を務め、米国エネルギー情報局(EIA)で経済分析を主導しました。
一方でアントニー新BLS局長は統計に関しては、専門ではありません。
経歴を度外視して採用しているトランプ政権ですので、今後はBLSとBEAの違いが出てくる可能性が大いにありそうです。
経済指標も、誰が局長をやっているかを知らなくてはいけないことになってきています。