雇用統計の時代は終わるのか?
これまで市場が注目する経済指標は移り変わりがありました。
1980/90年代のころは市場が一番注目していたのが、米国の貿易収支でした。
これは当時は日米の貿易問題が注目されていたことが原因です。
当時は、為替市場のディーラーは一度中抜け(17時ごろにいったん仕事を中断し、指標発表前に戻ってくること)をしていました。
ただ、徐々に貿易収支から市場の注目は雇用統計に変わり、今では貿易収支で中抜けをするディーラーはほぼいなくなりました。
その、雇用統計ですが、今後は取扱注意となりそうです。
衝撃の7月雇用統計とトランプ政権
すでにFX取引をしている方にとっては既報ですが、8月1日に発表された米国の7月雇用統計はあまりにも大きな衝撃となりました。
当日は、通常の失業率や非農業部門雇用者数変化 、平均時給等が発表されただけではなく、過去2カ月分の非農業部門雇用者数変化の修正が公表されました。
その過去2カ月分の修正があまりにもショッキングな内容で、これまでの1.6万人増加が25.8万人減少と大幅に下方修正されました。
ここまでの修正が入るのであれば、これまでの雇用統計で一喜一憂していた意味が全くなくなったといえます。
しかも、この結果発表後にトランプ米大統領がマッケンターファー労働省労働統計局(Bureau of Labor Statistics=BLS)局長を解任してしまいました。
統計局局長に指標の修正の責任はないものの、なんでも前政権やオバマ政権などに関わった人物を排除したいトランプ氏ですので、隙を見せたらすぐに解任をしてしまいます。
日本の戦国時代に、自分のために働いた武将たちに褒章を与えるために、他の武将を追い出してしまうような行動です。
しかも、前任のマッケンターファー氏が、統計局局長の前は国勢調査局経済研究センターで労働市場担当の主任経済学者を務めている経済にも統計にも精通していましたが、後任者は違います。
後任についた保守系エコノミストのE・J・アントニー氏は、大学を卒業して5年という浅い経験だけではなく、労働市場やデータ収集に関する研究の専門家でもないとのこと。
1月6日の米国議会議事堂襲撃事件へも加わり(本人は単に傍観していただけと発言)、前政権批判に関しては様々な発言を繰り返しているだけの熱狂的なトランプ支持者です。
アントニー氏がBLSの後任候補に名前が挙げる前に同氏は、BLSの報告書を「乱数発生器」と非難し、バイデン政権下での同局の働きは「魔法の世界(the magical world of make-believe)」から「でたらめな(phoney baloney)」数字を生み出していると批判していました。
当然根拠もないことだったのですが、この乱数発生器を操るのが、今後はアントニー氏になるわけです。
アントニー後のインフレ指標も信用失墜か
BLSが労働省ということで、雇用統計を発表しますが、BLSはほかにも消費者物価指数(CPI)、卸売物価指数(PPI)も発表します。
狂信的ともいわれているアントニー氏ですので、今後はCPI、PPIの結果も乱数発生器が「魔法の世界」から「でたらめな」へと変わる可能性が高そうです。
9月5日には8月の米雇用統計が発表されますが、乱数発生器から計算される雇用統計の結果を信用してトレードをやってはいけなくなったのではと思われます。