緊迫化していたイラン情勢に、ようやく一筋の光が差し込んだかのように見えます。トランプ米大統領が軍事作戦終了の意向を示したとの報道を受け、マーケット参加者の間では、これまで積み上がっていた「有事のドル買い」を解消する動きが急速に広がりました。しかし、現地イラン側の強硬な姿勢やホルムズ海峡封鎖の問題は依然として棚上げのまま、安易な楽観視は禁物と言わざるを得ない局面が続くと考えておいたほうがよいかもしれません。
「米軍事作戦終了」報道で有事のドル買い巻き戻し
外国為替市場はトランプ米大統領の一挙手一投足に激しく揺さぶられています。特に大きな転換点となったのは、米現地3月30日夕刻(日本時間31日午前)、トランプ氏が側近に対し「ホルムズ海峡の大部分が封鎖されたままでも、イランに対する軍事作戦終了を容認する」との意向を示したという報道です。
このニュースは、戦火の拡大と長期化を懸念していたマーケット参加者に大きな驚きを与えました。それまで、世界のエネルギー輸送の要衝であるホルムズ海峡の開放は、米国にとって譲れない「絶対条件」であると見られていたからです。
この前提が崩れたことで、リスク回避のために買われていたドルのロングポジション(買い持ち)を一斉に解消する「有事のドル買い」の巻き戻しが発生。週明けまだ高止まりの範疇にあったドル円は急落し、NYマーケットでは158円台まで下落幅を拡大しました(図表参照)。

米WTI(米ウェスト・テキサス・インターミディエート)原油先物価格も100ドル割れとなり下落が進むなど、過熱していたリスクオフ相場に冷や水を浴びせられた格好となりました。イランのペゼシュキアン大統領から「保証があれば戦争を終わらせる準備がある」との前向きな発言も伝わり、一時はこのまま「米軍事作戦終了」へとひた走るかのような期待感が市場を支配しました。
再び「有事のドル買い」も? 不透明な先行き
しかし、バラ色の終戦シナリオを描くのは時期尚早かもしれません。マーケット参加者が冷静さを取り戻すにつれ、事態の複雑さが改めて浮き彫りになっています。
最大の問題は、米政権内での発言が二転三転していること、そしてイラン国内の足並みの乱れです。「米軍事作戦終了」が示唆される一方で、イラン議会は「ホルムズ海峡をいかなる交渉にも使わず、開放もしない」と真っ向から対立する声明を発表しました。また、米国が提示した和平案とイラン側の条件には依然として大きな隔たりがあり、具体的な合意形成への道筋は見えていません。
加えて、四半期期初であり日本の4月年度初めにあたり、本邦実需筋によるドル買い需要が根強く存在することも無視できません。一時的な安心感からドルの売り戻しが進んだものの、158円台では一定の買い支えが入るなど、下値の堅さも意識されます。
今後のマーケットにおいて最も警戒すべきは、期待先行で進んだ「有事のドル買い」の巻き戻しが、再び強硬姿勢へと転じることで修正されるリスクです。もし期待されていた「米軍事作戦終了」の流れに具体的な進展がなければ、市場は再び不透明感から「ドル買い・円売り」のバイアスを強める可能性があります。マーケット参加者は、ヘッドラインによる一喜一憂に惑わされることなく、実需の動きと地政学リスクの“残り火”を慎重に見極める姿勢が求められます。





