週末に飛び込んできた「米・イラン協議決裂」というヘッドラインは、週明けの金融市場に冷や水を浴びせ、地政学リスクの再燃を強く印象付けました。緊迫する中東情勢を受けてマーケット参加者の間には一時、凍り付くような緊張が走りましたが、その直後にトランプ米大統領が「イラン側は合意を強く望んでいる」と柔軟な姿勢を示唆したことで、状況は一変しています。現在は「交渉再開への期待」を必死に織り込もうとする、極めて目まぐるしくも不安定な相場展開が続いています。
緊迫の「米・イラン協議決裂」一転、有事のドル買い巻き戻しへ
週明けの東京市場は、まさに嵐の前の静けさを破るようなスタートとなりました。パキスタンでの和平交渉が不調に終わったとの報を受け、「米・イラン協議決裂」による軍事的緊張が意識されたためです。
特に原油市場の反応は凄まじく、エネルギー輸送の要衝であるホルムズ海峡の封鎖懸念から、WTI原油先物価格は一時1バレル=105ドル台半ばまで急騰。これに呼応する形で、為替市場では安全資産に資金を退避させる「有事のドル買い」が加速しました。
さらに日本にとっては、エネルギー価格の上昇が貿易収支のさらなる悪化を招くという懸念から「円売り」も重なりました。ドル円は一時159.80円台と、歴史的な節目160円を目前にした水準まで上値を伸ばしています。
しかし、この一方的な流れにブレーキをかけたのが、トランプ米大統領の発言です。ニューヨーク市場の取引時間帯に入ると、大統領は自身のSNSや会見を通じ、「協議は継続しており、合意に向けて進展している」との見解を表明。「米・イラン協議決裂」を決定的なものとはせず、あえて交渉の余地を残す「ディール(取引)」の姿勢を打ち出したのです。
この「トランプ砲」とも呼べる発言により、最悪のシナリオ(軍事衝突や長期的な供給網の寸断)を警戒していたマーケット参加者は、一斉にポジションの調整に動きました。その結果、それまでの「有事のドル買い」は急速に巻き戻され、ドル円は158円台半ばまで押し戻されるという、非常にボラティリティ(価格変動)の激しい展開となりました(図表参照)。
揺れるマーケット参加者、「160円」付近に介入警戒感も
今回の騒動を経て改めて浮き彫りになったのは、中東情勢の行方とトランプ氏の一挙手一投足に対する、マーケット参加者の感度の高さです。一度は「米・イラン協議決裂」という最悪のヘッドラインで市場を動揺させながら、すぐさま「再交渉の期待」というポジティブな材料を投げ込む。このジェットコースターのような値動きは、冷静な投資判断を阻む大きな壁となっています。テクニカルな分析が通用しにくい、いわゆる「ヘッドライン・リスク」が支配する相場と言えるでしょう。
また、ドル円が160円という象徴的な大台に接近するたび、マーケット参加者の脳裏には「政府・日銀による円安阻止の介入」という影が色濃くちらつきます。実際に円買い介入が発動されずとも、その「警戒感」だけで上値が重くなる一方で、中東の地政学リスクという根本的な懸念が消えない限り、円を積極的に買い戻す動機も乏しい。
こうした「膠着感の中の不安定さ」が、現在の為替相場の本質です。「交渉への期待と軍事的緊張の再燃」が背中合わせとなっている現在の状況は、少なくとも週末に予定されている第2回和平協議の結果が判明するまでは継続する公算が大きいでしょう。
今後の焦点は、今回の「米・イラン協議決裂」を教訓に、双方がどこまで歩み寄れるか。そして、再び「米・イラン協議決裂」という言葉が現実味を帯びた際、マーケットがそれを「二度目の正直」としてどれほどの衝撃で受け止めるかです。
マーケット参加者は、表面的なニュースの文面を追うだけでなく、その背後にある各国の思惑や「交渉カード」の出し入れを冷静に洞察し、この神経質な相場環境を乗りこなしていく必要があります。





