今回解説していく通貨はユーロドル(eur/usd)です。2022年からの上昇トレンドが継続中ですが、足もとではやや伸び悩みの気配があり、短期のトレンドの行方なども見極めながら今後の展開を探っていく必要がありそうです。ファンダメンタルズ面では、欧州中央銀行(ECB)が昨年から続けてきた金融緩和局面がひと段落。今後はインフレの進展次第となるでしょう。
今後のユーロドルの相場焦点:金融緩和局面はほぼ終了か
まずはユーロ圏の現在の金融政策状況を確認していきます。
欧州中央銀行(ECB)は2022年7月に金融引き締めを開始。2023年9月に政策金利を4.50%まで引き上げて、2024年6月から金融緩和局面へと移行しました。現在の政策金利は2.15%です。
●ECBが金利の据え置きを決めた10月直近会合での声明文では
・インフレ率は引き続き2%の中期目標に近く、理事会によるインフレ見通しの評価に概ね変更はない
・適切な金融政策スタンスを決定するにあたっては、データに基づき、会合ごとに適切なアプローチを採用する
・理事会の金利決定は、今後発表される経済・金融データ、基調的なインフレ動向、そして金融政策の波及効果の強さを踏まえ、インフレ見通しとそれを取り巻くリスクの評価に基づく
などの見解が示されました。
声明文では先行きに金融政策に対する具体的な示唆は盛り込まれませんでしたが、インフレ率は2%の中期目標に近いとしており、ラガルドECB総裁もその後の記者会見で「現行政策は良好な位置にある」「しかし良い位置は固定されたものではなく、維持するためには必要なことは何でも行う」などと言及。
現状でインフレ目標がほぼ達成できたことから、金融緩和局面はほぼ終了したと見てよさそうです。今後はインフレ動向をにらみながら、リスクに応じて政策を微調整していくことになるでしょう。
ユーロドルの週足分析:足もとの上昇トレンドには懸念点もあり
下図のチャートはユーロドルの週足チャートになります。

2008年からの下降トレンドライン(チャート上の青色実線)は今年に入って上抜けており、現在は2022年9月安値を起点とする上昇トレンド(チャート上の黄色実線)が進行中。
ここからは直近高値ゾーン(2021年1月高値の1.2349ドルや2018年2月高値の1.2555ドル、チャート上の四角で囲った部分)を超えることで、2008年からの長期に渡った下落トレンドの転換を確固たるものにしたいところです。
その一方で気になるのが、今回のチャート下部に追加した「DMI」の推移。ここにきては「DMI」は-DI>+DI(下落トレンド)を示唆しています。トレンドの強さを示すADXが低下基調にあり、しっかりとした下げトレンドというわけではありませんが、今後の推移に注意する必要がありそうです。
ユーロドルの日足分析:8月の直近安値を維持できるかがポイント
では短期的な視点で今後のユーロドルの見通しを確認していきます。下図は日足のユーロドルチャートです。

今年2月からの上昇トレンド(チャート上の黄色実線)を10月に入って下抜けてしまい、買いの勢いは足もとでやや後退気味。「DMI」で確認しても-DI>+DI(下落トレンド)を示唆しています。
目先は8月1日につけた直近安値(1.1392ドル)を維持できるかがポイントになるでしょう。同水準を下抜けると調整がさらに深くなることが予想されます。一方で、同水準付近がサポートとなった場合は再び上昇、もしくは1.14-1.19ドル台でのレンジ相場へと転じる可能性もあり、この水準を巡る攻防が今後の方向性を左右することになります。
今後の取引材料・変動要因をチェック:年内の米金融政策にリスク
最後に今後1カ月間の重要イベントも確認しておきます。注目は米連邦公開市場委員会(FOMC)。市場では12月会合でも利下げは決定的との見方が強かったものの、前回の会合時にパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が「12月の利下げは決して確実ではない」と述べたことから、先行きの金融政策に関して不透明感も広がっています。
一方で、欧州中央銀行(ECB)ですが、期間内に金融政策決定理事会は予定されていません(次回は12月18日)。こちらに関してはインフレ状況に大きなリスクが生じない限り、追加利下げの可能性は低そうです。
その他の経済指標・イベント等は以下の通りとなります。
今後1カ月の重要イベント
11月13日 米国 10月消費者物価指数(CPI)
11月26日 米国 10月PCEコア・デフレーター
12月2日 ユーロ圏 11月消費者物価指数(HICP、速報値)
12月5日 米国 11月米雇用統計
12月10日 米国 11月消費者物価指数(CPI)
12月9-10日 米国 米連邦公開市場委員会(FOMC)
米政府機関の閉鎖により、一部の米経済指標は発表が延期される可能性があります



