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第160回 2025年最新のノルウェー・クローネ円、スウェーデン・クローナ円見通し:いずれも上昇トレンドを維持

今回解説していく通貨はノルウェー・クローネ円(NOK円)スウェーデン・クローナ(SEK)円です。両通貨ともペースの違いはあれど足もとは上昇トレンドにあり、基本的には押し目戦略が有効となるでしょう。今後、金融政策の方向性に市場の目線が向いた際は、日本との金利差縮小傾向から売りが出る可能性はありますが、金利差の縮小ペースはしばらく穏やかなものにとどまる見込みです。


今後の相場の焦点:ノルウェーは今後も金融緩和方向、スウェーデンの利下げ余地は限定的

まずはノルウェーおよびスウェーデンの現在の金融政策状況を確認していきます。

 

ノルウェー中銀(ノルゲバンク)は2021年9月から金融引き締めへと動き、2023年12月には政策金利を4.50%まで引き上げました。その後は1年以上に渡って金利の据え置きを続けてきましたが、2025年6月になってサプライズ的に利下げを実施。現在の政策金利は4.25%となっています。

 

利下げを実施した6月会合時の声明文では

・経済が現在の予測通りに推移すれば2025年中に政策金利はさらに引き下げられる

・引き締め的な金融政策は依然として必要であるものの、政策金利の慎重な正常化を開始することが適切であると判断

・政策金利の予測は2025年末に4%をわずかに下回り、2028年末には約3%に低下すると見込まれている

などの見解を示しており、中銀の見通し通りに推移すると2028年まで金融緩和局面が続くことになりそうです。

 

一方、スウェーデン中銀(リクスバンク)は2022年4月に金融引き締めを開始。2023年9月に政策金利を4.00%まで引き上げて、2024年5月から金融緩和局面へと移行。現在の政策金利は2.00%です。

 

8月に開催された直近の会合時の声明文では

・想定を超えるインフレには注意が必要

・年内に追加利下げが行われる可能性はなお残されている

などの見解が示されており、年内にあと1回の程度の利下げが実施される可能性があるものの、追加利下げ余地は乏しくなっています。

 

両国を比較すると現状での金利水準が高いのはノルウェー、今後の金利先安観が高いのも同じくノルウェーということになります。


NOK円 週足チャート分析:穏やかな上昇トレンド内で押し目買い戦略が有効

ではテクニカル面でも現在の状況を確認していきましょう。下図のチャートはノルウェー・クローネ円(NOK円)の週足チャートになります。



NOK円は2020年3月に史上最安値となる8.97円まで下落した後は買い戻し基調となっています。2021年以降は上昇の勢いも穏やかとなっていますが、現在は2023年3月安値を始点とする上昇トレンド(チャート上の黄色実線)内の動きとみてよさそうです。

 

また、チャート下部に追加した「DMI」によると+DIが-DIを上回っており、現在は上昇トレンドであることを示唆していますが、トレンドの強さを示すADXは低位で推移。こちらからも「勢いは欠いているものの、現状は上昇トレンド」であることが確認できます。

 

今後ですが昨年7月につけた直近高値の15.32円をターゲットとした押し目買い戦略が有効となるでしょう。下値の目処は前述した上昇トレンドライン(チャート上の黄色実線)や今年4月につけた年初来安値の13.08円など。より長期の目線でみると節目の12.00円までサポートゾーンと捉えることもできますが、13.00円を割り込んだ場合は調整リスクにも留意する必要がでてきます。


SEK円 月チャート分析:はっきりとした上昇トレンド、当面は安泰か

次はスウェーデン・クローナ(SEK)円について、テクニカル面で現在の状況を確認していきましょう。下図のチャートはSEK円の月足チャートになります。



SEK円は2020年3月に直近安値をつけたという点ではNOK円と同様ですが、その後はしつかりとした買い戻し基調となっており、直近でも15.56円まで上値を伸ばしています。

また、チャート下部に追加した「DMI」によると+DIが-DIを上回っており、現在は上昇トレンドであることを示唆。トレンドの強さを示すADXも昨年からは低下基調にありますが、足もとでは下げ止まりの気配を見せており、今後は再びADXが上昇傾向へと転換する可能性もありそうです。

 

今後のターゲットは2014年1月につけた高値の16.42円(チャート上の丸で囲った部分)です。順調に下値を切り上げていることに加えて、直近高値超えも達成していることを考慮すると、NOK円と比較しても現状の上昇トレンドは安泰と考えてもよいでしょう。

 

ただ、長期視点での一応の懸念点として1990年代以降は10-18円台での大きなレンジ相場内で上下を繰り返しており、現状でもすでにレンジの上方に位置していることは覚えておきましょう。前述した2014年高値を超えた場合、長期的なレンジ上限を一段と意識せざるを得ない場面を迎えることになります。


今後の取引材料・変動要因をチェック:金利差縮小ペースは穏やかなものに

最後に今後1カ月間の経済指標や重要イベント等も確認しておきます。注目は日本・ノルウェー・スウェーデンの金融政策。日本は利上げ、ノルウェーやスウェーデンは利下げ方向なので、日本との金利差は縮小方向となりますが、いずれの中銀も今年の金利変更はあと1回程度と予想されており、金利差の縮小ペースは穏やかなものとなる見込みです。各国のCPIや中銀の声明文などを確認し、今後の利上げ・利下げペースに変化が生じる可能性がないか確認しておきましょう。

その他のイベントは以下の通りとなります。

 

今後1カ月の重要イベント

・9月4日 スウェーデン 8月消費者物価指数(CPI)

・9月10日 ノルウェー 8月CPI

・9月18日 ノルウェー ノルウェー中銀、政策金利公表

・9月19日 日本 8月全国CPI

・9月18-19日 日本 日銀金融政策決定会合

・9月23日 スウェーデン スウェーデン中銀、政策金利公表

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為替情報部 アナリスト

岩間 大祐

大学卒業後の2004年に国内証券会社に入社。 外国為替証拠金取引業務に携わった後、金融情報サービス会社にて個人投資家向けの為替情報配信業務を担当。市況サービスのほか、テクニカル分析を軸にした情報を配信する。 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト。

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