今回解説していく通貨はニュージーランド(NZ)ドル米ドル(nzd/usd)です。テクニカル面では上値トライに失敗したことで下値リスクが拡大。長期的には「三角保ち合い」を形成中で、今後の推移に注意が必要となります。ファンダメンタルズではNZと米国の金融政策に注目。NZでは中銀総裁の交代が12月に控えており、米国では政府機関の閉鎖によって経済指標の発表が次々に延期されています。両国の金融政策に関しても、今後不透明感が広がる可能性がありそうです。
今後のNZドル米ドルの相場焦点:金融政策に注目、NZ中銀は12月から新体制に
NZドル米ドル相場ですが、NZと米国の金融政策に注目が集まりそうです。NZでは本日(8日)にNZ準備銀行(RBNZ)が政策金利を公表します。市場では0.25%の金利引き下げ(3.00%から2.75%へ)が予想されていますが、一部では0.50%の大幅利下げを予想する向きもあり、注意が必要となります。
また、NZの金融政策を巡っては今後も不透明感が残るでしょう。ウィリスNZ財務相は先月、RBNZの次期総裁として、スウェーデン中央銀行(リクスバンク)の副総裁であるブレマン氏を指名しました。任期途中で辞任したオア元総裁の後を引き継いで期間限定の総裁に就任したホークスビー総裁は正式な総裁就任を希望していましたが、ウィリスNZ財務相は同氏の希望を退けた格好となり、ホークスビー氏はブレマン氏が新総裁に就任する12月1日をもってRBNZから離職する見込みです。
RBNZの年内の金融政策決定会合は10月8日と11月26日となっており、年内最後の会合まではホークスビー体制となるものの、来年以降はRBNZの金融政策方針も大きく変化する可能性があり、ブレマン体制下の金融政策の方向性を見極める必要がありそうです。
また、米国の金融政策に関しても不確実性が高まっています。直近の9月会合で利下げを決断した米連邦公開市場委員会(FOMC)は、今後の会合(10月28-29日、12月9-10日)でも追加利下げを実施するとの見方が規定路線とされていましたが、ここにきて見通しづらくなってきました。
米政府機関の一部閉鎖によって米経済指標の発表延期が遅れ始めており、前週末は米雇用統計が延期。来週に予定されている米消費者物価指数(CPI)などのインフレ指標も延期された場合、金融政策を判断するうえで必須となる関連情報や材料を欠いたFOMCも動けなくなるかもしれません。この事態を米金利先安観の後退と捉えるか、市場全般のリスク要因と捉えるかは難しいところですが、米金融政策を巡る不透明感が高まるのは確実でしょう。
NZドル米ドルの週足分析:下降トレンドラインのブレイクは再び失敗に終わる
下図のチャートはNZドル米ドルの週足チャートになります。
今年の6月末にかけて2021年2月高値を始点とする下降トレンドライン(チャート上の黄色実線)を再び試す場面があったものの、下降トレンドラインの上抜けはまたしても失敗に終わりました。その後は0.57米ドル台まで押し戻されています。
チャート下部に追加した「DMI」で確認すると、-DI>+DI(下落トレンド)を示唆。トレンドの強さを示すADXも上昇しており、現在が下げ基調にあることを示しています。今後のターゲットは4月9日につけた年初来安値の0.5486米ドル(チャート上の丸で囲った部分)になります。
NZドル米ドルの月足分析:長期目線では「三角保ち合い」を形成中
今度はより長期的なチャートから相場の流れを改めて確認していきましょう。下図は月足チャートです。チャート上の黄色実線は週足分析で紹介したものと同じです。
週足分析で上値の重さを再認識したため、今度は下値リスクについて確認しておきましょう。ポイントとなるのが、2020年3月安値の0.5470米ドル(チャート上の青色実線)。同水準付近は2022年10月、2025年4月に下押した際もサポート水準として意識されました。
今後も支持線として機能することが期待されますが、この形状は典型的な「三角保ち合い」でもあります。同水準をしっかりと下抜けると09年3月安値0.4895米ドル(チャート上の丸で囲った部分)まで下値余地が拡大するだけに注意が必要となりそうです。
今後の取引材料・変動要因をチェック:米指標は発表延期の可能性も
最後に今後1カ月間の重要イベントも確認しておきます。注目は本日のNZ準備銀行(RBNZ)会合。残りわずかとなったホークスビー体制でどのような金融政策決定と方針が示されるか注視しておきましょう。
また、米国では政府機関がいつ再開されるかがポイント。9月消費者物価指数(CPI)を始めとして重要な経済指標まで延期が決まると、米連邦公開市場委員会(FOMC)の金融政策についても一気に不透明感が広がります。
その他のイベントは以下の通りとなります。
今後1カ月の重要イベント
10月8日 NZ NZ準備銀行(RBNZ)、金融政策
10月15日 米国 9月消費者物価指数(CPI)
10月20日 NZ 7-9月期CPI
10月28-29日 米国 米連邦公開市場委員会(FOMC)
10月31日 米国 9月PCEコア・デフレーター
11月7日 米国 10月米雇用統計
※米経済指標の予定は暫定。消費者物価指数(CPI)やPCEコア・デフレーター、雇用統計などは発表延期の可能性あり。