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第166回 2025年最新のNZドル米ドル見通し:上値トライに失敗、再び下値リスクを警戒すべき局面に

今回解説していく通貨はニュージーランド(NZ)ドル米ドル(nzd/usd)です。テクニカル面では上値トライに失敗したことで下値リスクが拡大。長期的には「三角保ち合い」を形成中で、今後の推移に注意が必要となります。ファンダメンタルズではNZと米国の金融政策に注目。NZでは中銀総裁の交代が12月に控えており、米国では政府機関の閉鎖によって経済指標の発表が次々に延期されています。両国の金融政策に関しても、今後不透明感が広がる可能性がありそうです。


今後のNZドル米ドルの相場焦点:金融政策に注目、NZ中銀は12月から新体制に

NZドル米ドル相場ですが、NZと米国の金融政策に注目が集まりそうです。NZでは本日(8日)にNZ準備銀行(RBNZ)が政策金利を公表します。市場では0.25%の金利引き下げ(3.00%から2.75%へ)が予想されていますが、一部では0.50%の大幅利下げを予想する向きもあり、注意が必要となります。

 

また、NZの金融政策を巡っては今後も不透明感が残るでしょう。ウィリスNZ財務相は先月、RBNZの次期総裁として、スウェーデン中央銀行(リクスバンク)の副総裁であるブレマン氏を指名しました。任期途中で辞任したオア元総裁の後を引き継いで期間限定の総裁に就任したホークスビー総裁は正式な総裁就任を希望していましたが、ウィリスNZ財務相は同氏の希望を退けた格好となり、ホークスビー氏はブレマン氏が新総裁に就任する12月1日をもってRBNZから離職する見込みです。

 

RBNZの年内の金融政策決定会合は10月8日と11月26日となっており、年内最後の会合まではホークスビー体制となるものの、来年以降はRBNZの金融政策方針も大きく変化する可能性があり、ブレマン体制下の金融政策の方向性を見極める必要がありそうです。

 

また、米国の金融政策に関しても不確実性が高まっています。直近の9月会合で利下げを決断した米連邦公開市場委員会(FOMC)は、今後の会合(10月28-29日、12月9-10日)でも追加利下げを実施するとの見方が規定路線とされていましたが、ここにきて見通しづらくなってきました。

米政府機関の一部閉鎖によって米経済指標の発表延期が遅れ始めており、前週末は米雇用統計が延期。来週に予定されている米消費者物価指数(CPI)などのインフレ指標も延期された場合、金融政策を判断するうえで必須となる関連情報や材料を欠いたFOMCも動けなくなるかもしれません。この事態を米金利先安観の後退と捉えるか、市場全般のリスク要因と捉えるかは難しいところですが、米金融政策を巡る不透明感が高まるのは確実でしょう。


NZドル米ドルの週足分析:下降トレンドラインのブレイクは再び失敗に終わる

下図のチャートはNZドル米ドルの週足チャートになります。

 


今年の6月末にかけて2021年2月高値を始点とする下降トレンドライン(チャート上の黄色実線)を再び試す場面があったものの、下降トレンドラインの上抜けはまたしても失敗に終わりました。その後は0.57米ドル台まで押し戻されています。

 

チャート下部に追加した「DMI」で確認すると、-DI>+DI(下落トレンド)を示唆。トレンドの強さを示すADXも上昇しており、現在が下げ基調にあることを示しています。今後のターゲットは4月9日につけた年初来安値の0.5486米ドル(チャート上の丸で囲った部分)になります。


NZドル米ドルの月足分析:長期目線では「三角保ち合い」を形成中

今度はより長期的なチャートから相場の流れを改めて確認していきましょう。下図は月足チャートです。チャート上の黄色実線は週足分析で紹介したものと同じです。

 


週足分析で上値の重さを再認識したため、今度は下値リスクについて確認しておきましょう。ポイントとなるのが、2020年3月安値の0.5470米ドル(チャート上の青色実線)。同水準付近は2022年10月、2025年4月に下押した際もサポート水準として意識されました。

今後も支持線として機能することが期待されますが、この形状は典型的な「三角保ち合い」でもあります。同水準をしっかりと下抜けると09年3月安値0.4895米ドル(チャート上の丸で囲った部分)まで下値余地が拡大するだけに注意が必要となりそうです。


今後の取引材料・変動要因をチェック:米指標は発表延期の可能性も

最後に今後1カ月間の重要イベントも確認しておきます。注目は本日のNZ準備銀行(RBNZ)会合。残りわずかとなったホークスビー体制でどのような金融政策決定と方針が示されるか注視しておきましょう。

また、米国では政府機関がいつ再開されるかがポイント。9月消費者物価指数(CPI)を始めとして重要な経済指標まで延期が決まると、米連邦公開市場委員会(FOMC)の金融政策についても一気に不透明感が広がります。

その他のイベントは以下の通りとなります。

 

今後1カ月の重要イベント

10月8日 NZ NZ準備銀行(RBNZ)、金融政策

10月15日 米国 9月消費者物価指数(CPI)

10月20日 NZ 7-9月期CPI

10月28-29日 米国 米連邦公開市場委員会(FOMC)

10月31日 米国 9月PCEコア・デフレーター

11月7日 米国 10月米雇用統計

※米経済指標の予定は暫定。消費者物価指数(CPI)やPCEコア・デフレーター、雇用統計などは発表延期の可能性あり。

この連載の一覧
第166回 2025年最新のNZドル米ドル見通し:上値トライに失敗、再び下値リスクを警戒すべき局面に
第165回 2025年最新のメキシコペソ円見通し、上昇トレンドに回帰
第164回 2025年最新のランド円見通し:直近高値超えに失敗すると・・
第163回 2025年最新の豪ドル円見通し:短期は良し、中長期は不安あり
第162回 2025年最新のチェコ・コルナ円、ポーランドズロチ円見通し:上昇トレンドは継続へ
第161回 2025年最新のユーロ円見通し:上昇トレンドは維持、上値追いはどこまで?
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第159回 2025年最新のドル円見通し:頼りない上昇トレンドの今後を探る
第158回 2025年最新のNZドル円見通し:上昇トレンドを維持するための条件とは?
第157回 2025年最新のトルコリラ円見通し:過去最安値の更新はどこまで続くのか?
第156回 2025年最新のユーロドル見通し:長期下落トレンドの転換点か?
第155回 2025年最新のランド円見通し、再び上昇基調へ?チャートとファンダメンタルズから徹底分析
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第148回 今後のユーロ円見通し、貿易リスクはあるがチャート上では上昇期待も
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第146回 NZドル円(nzdjpy)相場予想、追加利下げ濃厚も下落トレンドは終了か?
第145回 トルコリラ円(try/jpy)相場予想、過去最安値更新で止まらぬ下落
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第141回 ポンド円、下押し圧力を警戒すべき局面
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第119回 米大統領選後のシナリオ別相場展望
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第39回 ダウ理論とエリオット波動(3)
第38回 ダウ理論とエリオット波動(2)
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第36回 ローソク足(3)
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第29回 リトレースメント
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第1回「誰にでもわかるチャート教室」 相場が不安定だからこそ、チャート分析に頼りたい

為替情報部 アナリスト

岩間 大祐

大学卒業後の2004年に国内証券会社に入社。 外国為替証拠金取引業務に携わった後、金融情報サービス会社にて個人投資家向けの為替情報配信業務を担当。市況サービスのほか、テクニカル分析を軸にした情報を配信する。 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト。

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