今回解説していく通貨はチェコ・コルナ円(CZK円)とポーランドズロチ円(PLN円)です。両通貨とも足もとは上昇トレンドにあり、基本的には押し目戦略が有効となるでしょう。特にCZK円は史上最高値更新も視野に入っています。金融政策については、チェコは当面金利が据え置かれる見込み。ポーランドはやや利下げ余地がありそうです。
今後の相場の焦点:ポーランドは利下げ余地あり、チェコは当面金利据え置きか
まずはポーランドおよびチェコの現在の金融政策状況を確認していきます。
ポーランド中銀は2021年10月から金融引き締めへと動き、2022年9月には政策金利を6.75%まで引き上げました。その後は2023年9月から金融緩和方向へと転進。しばらく金利を据え置く期間もありましたが、現在の政策金利は4.75%となっています。
●利下げを実施した9月会合時の声明文では
・2025年8月の消費者物価指数(CPI)の年間インフレ率は2.8%、2025年7月は3.1%(中銀のインフレ目標は2.5%±1.0%)
・8月にはサービス価格の上昇が高止まりするなか、食品価格とエネルギー価格を除いたインフレ率が低下したと推定される
・インフレ動向を鑑み、理事会の評価では、政策金利の水準を調整することが正当化された
・理事会の今後の決定は、インフレと経済活動の見通しに関する今後の情報に基づいて行われる
などの見解を示しました。中銀としては「現在は利下げサイクルではなく、調整的な動き」であるとしていますが、今後のインフレ動向次第では追加の利下げ余地もありそうです。
一方、チェコ中銀は2021年6月に金融引き締めを開始。2022年6月に政策金利を7.00%まで引き上げて、2023年12月から金融緩和局面へと移行。現在の政策金利は3.50%です。
●8月に開催された直近の会合時の声明文では
・インフレ率は年内2%を超える見込み(中銀のインフレ目標は2.0%±1.0%)
・コアインフレ率は今後数四半期にわたり高水準を維持する見込み
・国内経済からの継続的なインフレ圧力により、現状では金利の更なる引き下げは困難
・現時点では、依然として比較的引き締め的な金融政策が必要
などの見解が示されており、中銀はインフレ警戒姿勢を維持。長期的に金利が据え置かれる可能性も出てきました。
CZK円 月足チャート分析:上昇トレンド継続中で史上最高値も視野に
ではテクニカル面でも現在の状況を確認していきましょう。下図のチャートはチェコ・コルナ円(CZK円)の月足チャートになります。
CZK円は2020年5月安値を始点とする上昇トレンド(チャート上の青色実線)にあり、今年に入って買いが加速。昨年7月につけた直近高値6.93円台を上抜けて、直近では7.13円台まで上値を伸ばしています。
また、チャート下部に追加した「DMI」でも+DIが-DIを上回っており、現在は上昇トレンドであることを示唆。トレンドの強さを示すADXは2024年から低下基調にありましたが、今年に入ってから上昇へと転じており、足もとで上昇の勢いが増しつつあることがうかがえます。
ここからは2020年5月安値を始点とする上昇トレンドラインを目処にした押し目買い方針がベターでしょう。また、昨年後半から半年近く下げ止まっていた水準(6.1-6.2円台)もサポートとして機能することが見込まれます。
上値に関しては2008年7月につけた史上最高値7.40円付近が視野に入っており、当面は同水準が目標となりそうです。
PLN円 月足チャート分析:上昇トレンド継続中、昨年高値超えで上値余地拡大も
次はポーランドズロチ円(PLN円)について、テクニカル面で現在の状況を確認していきましょう。下図のチャートはPLN円の月足チャートになります。
PLN円は2020年5月から現在の上昇基調がスタート。2024年7月に41.28円付近で直近高値をつけたのち、いったんは伸び悩む場面も見られましたが、それまでの高値36.00円近辺(チャート上の黄色実線)がサポートとして機能したことを確認すると、再び40.90円付近まで上昇しています。
チャート下部に追加した「DMI」でも+DI>-DI(上昇トレンド)を示唆。トレンドの強さを示すADXも高水準での推移が続いており、こちらもしっかりとした上昇トレンドと捉えることができそうです。
ここからは2024年7月につけた直近高値の41.28円付近がまず目標となります。同水準をしっかりと上抜けると、水準としてはかなり遠いものの2008年7月につけた52.95円近辺まで上値余地が拡大することになります。当面は前述した36.00円付近を目処として押し目買い方針を維持するとよいでしょう。
今後の取引材料・変動要因をチェック:自民党総裁選の行方にも注目
最後に今後1カ月間の経済指標や重要イベント等も確認しておきます。注目は日本・チェコ・ポーランドの金融政策。9月の日本およびチェコ中銀は金利据え置きとなる見込みで、声明文の内容が注目されそうです。中銀が金利調整に動く可能性があるポーランドに関しては、9月末に公表される消費者物価指数(CPI)で最新のインフレ動向を確認しておきたいところ。
また、日本に関しては石破首相の辞任によって次期政権に対する注目が集まっており、新総裁の財政・経済方針次第でチェコ・コルナ円やポーランドズロチ円などを含めたクロス円全般も振らされるでしょう。
その他のイベントは以下の通りとなります。
今後1カ月の重要イベント
・9月19日 日本 8月全国消費者物価指数(CPI)
・9月18-19日 日本 日銀金融政策決定会合
・9月24日 チェコ チェコ中銀、政策金利公表
・9月30日 ポーランド 9月CPI
・10月上旬予定 日本 自民党総裁選
・10月6日 チェコ 9月CPI
・10月8日 ポーランド ポーランド中銀、政策金利公表