今回解説していく通貨はハンガリーフォリント円(HUF/JPY)とチェコ・コルナ円(CZK/JPY)です。両通貨とも足もとは上昇トレンドにあり、基本的には押し目戦略が有効となるでしょう。特にチェコ・コルナ円は史上最高値も目前に迫ってきました。金融政策についても両国ともに当面金利は据え置かれる見込み。一方で、日本国内の政局の行方がクロス円全般のリスク要因となりそうです。
今後の相場の焦点:ハンガリー、チェコともに政策金利は当面据え置かれる見込み
まずはハンガリーおよびチェコの現在の金融政策状況を確認していきます。
ハンガリー中銀は2021年6月に金融引き締めを開始。2022年9月には政策金利を13.00%まで引き上げました。2023年10月から現在の緩和局面へと移行して6.50%まで引き下げられましたが、2024年10月以降は金利据え置きを続けています。
なお、現在の政策金利6.50%はルーマニアと並んで欧州連合(EU)域内で最も高い金利水準にあたります。
●9月に開催された直近の会合時の声明文では
・9月の予測における基本シナリオは、主にインフレの上振れリスクと成長の下振れリスクにさらされている
・年内はインフレ率が中央銀行の許容範囲(3%±1.0%)を上回り続けると予想
・物価上昇率は2026年初頭に許容範囲まで持続的に低下し、2027年初頭には3%のインフレ目標に達する可能性がある
・インフレ環境へのリスクに加え、貿易政策や地政学的緊張を考慮すると、金融政策には引き続き慎重かつ忍耐強いアプローチが必要
などの見解を示しました。中銀は「引き締め的な金融環境を維持することが正当化される」との見解を維持しており、インフレ見通しなどに基づくと当面は金利据え置きが続く見込み。市場でも利下げ再開は早くても2026年と見込まれています。
一方、チェコ中銀は2021年6月に金融引き締めを開始。2022年6月に政策金利を7.00%まで引き上げて、2023年12月から金融緩和局面へと移行。現在の政策金利は3.50%です。
●9月に開催された直近の会合時の声明文では
・最新の予測によるとインフレ率は年内2%をわずかに上回る見込み(中銀のインフレ目標は2.0%±1.0%)
・特にコアインフレ率は高止まりする見込み。
・国内経済からの継続的なインフレ圧力により、現状では金利の更なる引き下げは困難。
・現時点では、依然として比較的引き締め的な金融政策が必要。
などの見解が示されており、中銀としては現在の均衡を崩すような政策決定を下す必要はないとしています。こちらも当面は政策金利の据え置きが続くでしょう。
ハンガリーフォリント円の週足チャート分析:2015年来の高値超えを達成、上値余地はさらに拡大
ではハンガリーフォリント円(HUF/JPY)について、テクニカル面でも現在の状況を確認していきましょう。下図のチャートはハンガリーフォリント円の週足チャートになります。
フォリント円は先月に入って昨年高値の0.44円台、節目の0.45円(チャート上の黄色実線)を上抜け。2015年から10年以上に渡って上値を抑制してきた水準を上抜けてきました。
また、下方向を確認すると2022年3月安値を始点とする上昇トレンド(チャート上の青色実線)を維持しており、チャート下部に追加した「DMI」でも+DI>-DI(上昇トレンド)を示唆。トレンドの強さを示すADXも明確な上昇基調となっており、現状がしっかりとした上昇トレンドであることを示しています。
足もと急ピッチで上昇してきた反動は気になるところですが、今後は2013年12月と2014年12月に2度上値を抑えた水準0.49円近辺(チャート上の四角で囲った部分)が上値目標となるでしょう。同水準を上抜けるといよいよ2010年以来となる節目の0.50円も目前です。
チェコ・コルナ円の週足チャート分析:史上最高値が目前に迫る、押し目買い方針は継続
下図のチャートはチェコ・コルナ円(CZK/JPY)の週足チャートになります。
コルナ円は2020年5月安値を始点とする上昇トレンド(チャート上の青色実線)にあり、今年に入って買いが加速。昨年7月につけた直近高値6.93円台を上抜けて、直近では7.30円付近まで上値を伸ばしています。
また、チャート下部に追加した「DMI」でも+DIが-DIを上回っており、現在は上昇トレンドであることを示唆。トレンドの強さを示すADXも上昇基調にあり、こちらも明確な上昇トレンドにあることを示しています。
2008年7月につけた史上最高値7.40円付近が迫りつつあり、ここからは同水準がレジスタンスとして意識されるかをまずは見極めたいところ。押し目買い方針の継続が基本線となりますが、2020年来の上昇トレンドラインは水準が遠いこともあり、節目の7.00円や昨年高値の6.93円などが目先の押し目買い目処になりそうです。
今後の取引材料・変動要因をチェック:日本の政局の行方を注視
最後に今後1カ月間の経済指標や重要イベント等も確認しておきます。注目は日本・ハンガリー・チェコの金融政策。ハンガリーとチェコは金利据え置きが濃厚。日銀に関してはこれまで根強い利上げ観測がくすぶっていましたが、足もとで政局不安が広がるなか、日銀も動きづらくなったとの見方が広がっています。
また、日本の政局についても引き続き注意が必要です。高市氏の自民党総裁選勝利、公明党の連立離脱と波乱が続いており、現状では政局の先行きが見通しにくくなっています。いったんは「高市トレード」とされる株買い・円売りに動いた市場も、政局の行方を見極めながら戦略を見直す必要が出てきており、ハンガリーフォリント円やチェコ・コルナ円のようなクロス円も国内政局に振らされるでしょう。
その他のイベントは以下の通りとなります。
今後1カ月の重要イベント
10月21日 ハンガリー ハンガリー中銀、金融政策公表
10月24日 日本 9月全国消費者物価指数(CPI)
10月29-30日 日本 日銀金融政策決定会合
11月5日 チェコ 10月CPI
11月6日 チェコ チェコ中銀、政策金利公表
11月11日 ハンガリー 10月CPI