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第188回 イラン戦争、中国への影響

イラン戦争、トランプ氏のターゲットは中国?

トランプ米政権は2月末にイラン攻撃を開始しました。トランプ米大統領はこの攻撃を「イランに核兵器を作らせないためだ」と説明していますが、世界各国から「国際法違反」と非難する声も多く上がっています。同氏はホルムズ海峡を航行する石油タンカーの安全確保のために他国に協力を要請したが、応じる国は出ませんでした。

 

1月にはベネズエラへの大規模な攻撃を行い、マドゥロ大統領を拘束しました。そして今回のイラン攻撃に踏み切った、トランプ米大統領の「本当の狙い」はオイルの蛇口を絞ることで、中国を抑制しようという「ハイレベルな地政学的オペレーション」という見方もあります。14億の人口を擁する中国は世界最大の原油輸入国であります。長年にわたり、石油をイランやベネズエラからの輸入に頼ってきました。一部の発表によると両国からの輸入は総輸入量の15%(中国は公表していない)にも上ると言われます。また、中国は両国に対し石油開発や社会インフラを中心に、巨額の投資を続けてきました。

 

トランプ米政権の軍事行動は中国の石油資源確保に打撃を与え、中国による投資そのものを事実上無効化する目的もあり、イランで親米政権を打ち立てることができれば、中国による両国への投資も阻止するとの見方があります。ただ、トランプ米政権のイラン攻撃は中国に多大な悪影響を及ぼしているのでしょうか?

 

中国、エネルギー危機は起きない

イランのホルムズ海峡封鎖は世界2位の石油消費国である中国のエネルギー危機につながるとの見方もありますが、中国の十分な石油備蓄、10年にわたる原油輸入先多角化などで大きな打撃を受けることはないでしょう。

 

中国海関総署は、中国が昨年11月に前年同期比14.95%増の5089万トン、12月に17.0%増の5597万トン、2026年1-2月に16.0%増の1億1883万トンを輸入し、4カ月間で前年より3114万トン多く輸入しており、既存の商業用原油備蓄と戦略石油備蓄を合わせれば90日以上まかなえると強調しています。

 

中国は10年以上原油輸入先多角化戦略を強化しました。中国国家エネルギー局のデータによると、ホルムズ海峡を通じた原油輸入は約33%を占めました。このほかはロシアが26%、ブラジル、カナダ、コロンビアなどが14%、アンゴラやナイジェリアなどアフリカが19%を示し、カザフスタンなど中央アジアとオーストラリアなどからも輸入しており、ホルムズ海峡が完全に封鎖されても供給不足分を埋め合わせることは可能です。

 

なお、一部の報道によるとイラン戦争が始まった以降、ホルムズ海峡を通過した船舶の多くが中国船籍であり、イランは人民元で石油を取引する国の船舶にホルムズ海峡通過を認める案を検討しているとも伝わっています。

 

中国はむしろ中東紛争の勝者なのか

イラン戦争は「世界の複数の地域で脱炭素化のプロセスの加速」につながる可能性があり、早くから低炭素技術に投資してきた中国は大きな勝者になるとの見方があります。中国は低炭素技術における世界最大の投資家であり、海外向けのソーラーパネルやバッテリーのナンバーワン製造国でもあります。中国はすでに世界の電気自動車(EV)の約70%、リチウムイオン電池の80%を製造しています。イラン戦争は、クリーンテクノロジーにおける中国の支配的地位をさらに強固にする可能性があります。

 

また、トランプ米大統領が米国の信認を低下させているのに対し、習中国政権は「揺るがない中国」というイメージを定着させ、「米国よりも中国を信頼できる貿易パートナー」と認識する国が増えています。中国は現在、人工知能、超電導技術、量子コンピューティング、光通信を含む74の先端技術のうち、66分野の研究において米国をリードしており、トランプ氏が対中警戒感を高める中、中国は着々と国力を強めています。イラン戦争で、各国の通貨が神経質な動きとなり、「有事のドル買い」で下落基調を強める中、人民元は安定した動きを見せています。

この連載の一覧
第188回 イラン戦争、中国への影響
第187回 スイスフラン、なぜ強い
第186回 中東情勢に主要通貨の反応
第185回 経常収支の黒字は過去最大も、円安続く
第184回 中国・全人代、3月5日に開幕
第183回 ドル円、ドルの信認低下も重し
第182回 トランプ関税圧力と加ドル
第181回 円相場のカギは日本国債
第180回 2026年世界10大リスク-米調査会社
第179回 25年の中国貿易黒字、初の1兆ドル超え
第178回 金の台頭、ドルの支配に影響
第177回 人民元は堅調
第176回 FRB、来年の政策運営はなお不透明
第175回 円安、結局は再び介入との勝負か
第174回 円安、メリットとデメリット
第173回 実質為替レート 1ドル=270円
第172回 インフレと円安
第171回 予算案控え、慌ただしい英政府
第170回 トランプ氏、米中をG2と表現
第169回 ヘッジファンド資産、過去最高
第168回 通貨スワップ協定
第167回 カナダ経済は厳しい
第166回 自動売買のメリット・デメリット
第165回 FX活用の為替ヘッジ
第164回 利下げ再開、米経済は?
第163回 市場とFRB、来年以降の見通しにかい離
第162回 自民党総裁選と金融市場
第161回 英国の財政懸念
第160回 FRB理事の解任騒動
第159回 11人の次期FRB議長候補
第158回 「基調的な物価上昇率」
第157回 中国の政策金利
第156回 今年後半の米経済
第155回 日米合意、今後のドル円は?
第154回 トランプ氏、人民元の影響拡大の引き立て役になるか
第153回 香港ドル、キャリー取引が活発化
第152回 英国でもトリプル安
第151回 中東リスクに円買いではなくドル買い
第150回 悪いドル安
第149回 FX、マイルールを徹底
第148回 FX詐欺の手口
第147回 信認低下のドル、売り圧力が継続
第146回 半導体を制するものが世界を制する
第145回 米中会談、過度な期待は禁物
第144回 加ドル、米加首脳会談に注目
第143回 日米協議、円安是正に一安心も警戒残る
第142回 関税方針、トランプ氏の正念場
第141回 トランプ氏の脅かし、中国には通用しない
第140回 トランプ関税、ポンド相場への影響
第139回 RBA、追加利下げは5月か
第138回 英中銀、慎重な利下げペース維持
第137回 ドイツの大規模な財政拡大策
第136回 中国、今年GDP成長目標を5%前後に
第135回 米消費者信頼感指数、消費鈍化を示唆
第134回 リーダー不在のEU
第133回 各国中銀の利下げも、トランプ関税効果を薄めるか
第132回 円と加ドル、IMMポジションの変化
第131回 FX取引、投資詐欺に注意
第130回 FX、リスクも把握した上で取引を
第129回 トランプ氏VS中国
第128回 トランプトレードはいつまで続くか
第127回 ポジションの手仕舞い
第126回 今年最後の日米金融政策会合
第125回 中国景気、改善傾向もトランプリスク高まる
第124回 尹韓国大統領の戒厳令騒動
第123回 ポジションの管理
第122回 ドル円、160円台復帰はあるか
第121回 AI・FX取引
第120回 FX取引はギャンブルなのか
第119回 FXの確定申告
第118回 元キャリートレードの復活に注意
第117回 ドル円 8/1以来の150円台
第116回 ポンド、雇用・物価データの見極め
第115回 中国、景気支援策を強化
第114回 自民党総裁選、サプライズの結果に
第113回 景気回復が鈍いままの中国経済
第112回 最近の円相場、スキャルピング手法が有利か
第111回 最近主要国の金融政策(4)
第110回 最近主要国の金融政策(3)
第109回 最近主要国の金融政策(2)
第108回 最近主要国の金融政策(1)
第107回 投機筋、2週間以内での勝負多い
第106回 トランプVSハリス
第105回 来週の日銀会合、利上げは?
第104回 イベント・材料の認識から消化まで
第103回 経済指標の基本知識
第102回 勝つために情報本質の見極めは大事
第101回 押し目買いの罠
第100回 円安・円高の影響
第99回 円キャリートレードは正念場
第98回 ドル・ブル=ドル買いではない
第97回 ドル円 200円になったら
第96回 デイトレードの基本は順張り
第95回 ドル円、どこに向かうのか
第94回 FX、初心者に多い失敗例
第93回 本間宗久が残した相場の極意
第92回 基軸通貨のドル、強い
第91回 外国為替相場制度
第90回 米長期金利とドル円
第89回 RBNZ政策金利とNZドル円
第88回 日銀、利上げに踏み切るも円安
第87回 日本、「金利のある世界」に向かう
第86回 豪中銀と政策金利
第85回 トランプ氏の再選リスク
第84回 加中銀とその金融政策
第83回 英中銀とMPC
第82回 ECBと理事会
第81回 FRB 、FOMC
第80回 人民元の基準値
第79回 円キャリートレード
第78回 日銀、1月会合でマイナス金利解除を見送るか
第77回 ドル円 ゆく年くる年(2)
第76回 ドル円 ゆく年くる年(1)
第75回 ポジションの偏り
第74回 ユーロ圏、厳しい財政ルール
第73回 米国の双子の赤字、ドル相場への影響は?
第72回 日本の貿易収支
第71回 国際収支と為替(2)
第70回 国際収支と為替(1)
第69回 円買い介入警戒感が続く
第68回 FXにも山・谷がある
第67回 FX、時間軸視点も大切
第66回 PPPよりかなりの円安
第65回 購買力平価説
第64回 米大統領選とドル相場
第63回 円の実質実効為替レート、50年ぶりの低水準
第62回 実質実効為替レート、通貨の強弱が分かる
第61回 FX取引には時間・季節も影響
第60回 プロと素人
第59回 相場に入る・離れるタイミング
第58回 FX、成功する人・失敗する人
第57回 外貨預金にも使えるFX取引
第56回 FXトレードスタイル(3)
第55回 FXトレードスタイル(2)
第54回 FXトレードスタイル(1)
第53回 近年の相場の軸足
第52回 FX相場の軸足
【第51回 ドル・ユーロ・円、3大通貨に注目】
【第50回 FX、取り組みのタイミング】
【第49回 大局観下でのアプローチ】
【第48回】大局観、身につけよう
【第47回】FX取引の投資資金
第46回 相場と真摯に付き合う
第45回 金相場と為替
第44回 うわさで買って、事実で売る
第43回 原油相場と為替
第42回 金利差拡大ならお金は金利の高い国へ
第41回 貿易収支と為替相場
第40回 米国、なぜドル高にこだわるのか?
第39回 景気と為替相場
第38回 先物市場で投機筋の動きを把握
第37回 米SVB経営破綻の為替相場への影響
第36回 インフレと為替
第35回 FX、最強の参加者は?
第34回 為替レートの安定は為替ディーラーに不利なのか?
第33回 FXの自動売買取引
第32回 注目度の高い米雇用統計
第31回 リスクオン・リスクオフ取引
第30回 注目度の高い経済指標
第29回 アフリカの人気通貨 南アフリカ・ランド
第28回 安全資産・逃避通貨のCHF
第27回 2023年の為替相場
【FX、やるならお得に】第26回 年末年始の取引に注意
【FX、やるならお得に】第25回 急落で魅力低下の高金利通貨(トルコリラ)
【FX、やるならお得に】第24回 多難も地位が上がりつつある通貨(人民元)
【FX、やるならお得に】第23回 NZドル、豪ドルに似た動き
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【FX、やるならお得に】第18回 取引量が第2位の通貨(ユーロ)
【FX、やるならお得に】第17回 取引量が最も多い通貨(ドル)
【FX、やるならお得に】第16回 ファンダメンタルズ
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【FX、やるならお得に】第14回 為替レートはテーマで動く
【FX、やるならお得に】第13回 為替の変動要因
【FX、やるならお得に】第12回 FXはゼロサムゲーム?
【FX、やるならお得に】第11回 FX取引の注文方法
【FX、やるならお得に】第10回 外国為替取引の中心はドル
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【FX、やるならお得に】第2回 そもそも為替って何?
【FX、やるならお得に】第1回 敵知らずして勝利なし!

為替情報部 アナリスト

金 星

中国出身。横浜国立大学大学院卒業後、国内商品先物会社に入社。 外国為替証拠金取引会社へ出向し、カバーディール業務に携わりながら市況サービスも担当。 2013年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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