イラン戦争、トランプ氏のターゲットは中国?
トランプ米政権は2月末にイラン攻撃を開始しました。トランプ米大統領はこの攻撃を「イランに核兵器を作らせないためだ」と説明していますが、世界各国から「国際法違反」と非難する声も多く上がっています。同氏はホルムズ海峡を航行する石油タンカーの安全確保のために他国に協力を要請したが、応じる国は出ませんでした。
1月にはベネズエラへの大規模な攻撃を行い、マドゥロ大統領を拘束しました。そして今回のイラン攻撃に踏み切った、トランプ米大統領の「本当の狙い」はオイルの蛇口を絞ることで、中国を抑制しようという「ハイレベルな地政学的オペレーション」という見方もあります。14億の人口を擁する中国は世界最大の原油輸入国であります。長年にわたり、石油をイランやベネズエラからの輸入に頼ってきました。一部の発表によると両国からの輸入は総輸入量の15%(中国は公表していない)にも上ると言われます。また、中国は両国に対し石油開発や社会インフラを中心に、巨額の投資を続けてきました。
トランプ米政権の軍事行動は中国の石油資源確保に打撃を与え、中国による投資そのものを事実上無効化する目的もあり、イランで親米政権を打ち立てることができれば、中国による両国への投資も阻止するとの見方があります。ただ、トランプ米政権のイラン攻撃は中国に多大な悪影響を及ぼしているのでしょうか?
中国、エネルギー危機は起きない
イランのホルムズ海峡封鎖は世界2位の石油消費国である中国のエネルギー危機につながるとの見方もありますが、中国の十分な石油備蓄、10年にわたる原油輸入先多角化などで大きな打撃を受けることはないでしょう。
中国海関総署は、中国が昨年11月に前年同期比14.95%増の5089万トン、12月に17.0%増の5597万トン、2026年1-2月に16.0%増の1億1883万トンを輸入し、4カ月間で前年より3114万トン多く輸入しており、既存の商業用原油備蓄と戦略石油備蓄を合わせれば90日以上まかなえると強調しています。
中国は10年以上原油輸入先多角化戦略を強化しました。中国国家エネルギー局のデータによると、ホルムズ海峡を通じた原油輸入は約33%を占めました。このほかはロシアが26%、ブラジル、カナダ、コロンビアなどが14%、アンゴラやナイジェリアなどアフリカが19%を示し、カザフスタンなど中央アジアとオーストラリアなどからも輸入しており、ホルムズ海峡が完全に封鎖されても供給不足分を埋め合わせることは可能です。
なお、一部の報道によるとイラン戦争が始まった以降、ホルムズ海峡を通過した船舶の多くが中国船籍であり、イランは人民元で石油を取引する国の船舶にホルムズ海峡通過を認める案を検討しているとも伝わっています。
中国はむしろ中東紛争の勝者なのか
イラン戦争は「世界の複数の地域で脱炭素化のプロセスの加速」につながる可能性があり、早くから低炭素技術に投資してきた中国は大きな勝者になるとの見方があります。中国は低炭素技術における世界最大の投資家であり、海外向けのソーラーパネルやバッテリーのナンバーワン製造国でもあります。中国はすでに世界の電気自動車(EV)の約70%、リチウムイオン電池の80%を製造しています。イラン戦争は、クリーンテクノロジーにおける中国の支配的地位をさらに強固にする可能性があります。
また、トランプ米大統領が米国の信認を低下させているのに対し、習中国政権は「揺るがない中国」というイメージを定着させ、「米国よりも中国を信頼できる貿易パートナー」と認識する国が増えています。中国は現在、人工知能、超電導技術、量子コンピューティング、光通信を含む74の先端技術のうち、66分野の研究において米国をリードしており、トランプ氏が対中警戒感を高める中、中国は着々と国力を強めています。イラン戦争で、各国の通貨が神経質な動きとなり、「有事のドル買い」で下落基調を強める中、人民元は安定した動きを見せています。




