今更ベトナム戦争、なぜ?
ネットフリックスで「プラトーン」が配信されており、劇場で見て以来、久しぶりに見てしまいました。
舞台はベトナム戦争です。ベトナム戦争がなぜ起き、どのような結果になったのかについては、今さら説明する必要もなく、多くの方が理解していると思います。
ただ、ここでなぜベトナム戦争なのか。
そして、なぜFX市場でベトナム戦争に注目する必要があるのか、不思議に思われるかもしれません。
過去にあった「軍事介入」による金融介入!
22日、トランプ米大統領は記者団とのやり取りの中で、米債利回りの上昇について問われ、「別の種類の介入について、ベッセント氏とは話し合ったのか」と質問されました。
これに対してトランプ大統領は、
「究極の介入手段は、わが国の軍隊だ。もしそれを用いる必要があれば、そうするつもりだ」
と回答しました。
英語では「The ultimate intervention is our military. And if we have to use that, we will.」となっています。
この発言を読めば、多くの人は「トランプ大統領は債券市場のことなど分からないため、相変わらず強気な発言をしている」と受け止めるかもしれません。
確かに、これまで何でも力で押し通そうとしてきたトランプ氏だけに、そのような見方もできるでしょう。
しかし、ここで注目したいのは、軍事力を背景とした圧力が、過去に債券市場や為替政策に影響を与えた事例が実際に存在することです。
それが1960年代の米国と西ドイツの関係です。
当時の米国は、ベトナム戦争の泥沼化や社会保障費の増大、いわゆる「グレート・ソサエティ」政策、さらに貿易赤字などを背景に、大量のドルが海外へ流出していました。
そこで米国が圧力を強めた相手の一つが西ドイツでした。

当時のドイツは東西に分断され、まさに冷戦の最前線に位置していました。米国は西ドイツに対して、駐留米軍の費用を相殺する「オフセット」を求め、十分な対応がなければ駐留軍を削減・撤退させるとの圧力をかけました。
これに対して、西ドイツ連邦銀行総裁のカール・ブレッシング氏は1967年、保有するドルを金へ交換することを控え、その代わりに米国の国債などを購入・保有する方針を示す書簡を米国側に送りました。
これが、いわゆる「ブレッシング書簡」です。
つまり、当時の米国による軍事的な影響力は、敵対国に対してだけではなく、同盟国に対する圧力を通じて金融市場にも及んでいたということです。
ここが現在の米国を考えるうえで非常に興味深いところです。
日本の米債買い増しによる協調介入合意か?
では、1967年を2026年に置き換えてみます。
ベトナム戦争をイランとの戦争に、西ドイツを日本や韓国に置き換えると、現在との類似性が見えてきます。
もちろん、現在と1960年代では政治・金融制度も国際情勢も大きく異なるため、単純に同じ構図だと断定することはできません。
しかし、米国が戦争による財政負担の増大に直面し、その負担を同盟国にも求めるという構図には共通点があります。
そして、現在の米国が最も警戒しているものの一つが、米国債市場の不安定化です。
7月末から8月初旬にかけて、本邦通貨当局による円買い介入が行われた際、ベッセント米財務長官が米債市場への影響を強く意識していたことを考えると、日米間で何らかの協調が行われていた可能性について考える余地はあります。
さらに重要なのが、FIMAレポ・ファシリティの存在です。
FIMAレポ・ファシリティとは、外国の中央銀行や通貨当局が保有する米国債を担保として、FRBから一時的にドル資金を調達できる制度です。
これを利用すれば、為替介入に必要なドルを確保するために、保有する米国債を市場で売却する必要性を抑えることができます。
そう考えると、非常に興味深い仮説が浮かび上がります。
日本が米国の資金調達を支えるために米国債を購入する。
↓
米国債購入によってドル買いが発生し、ドル円が上昇する。
↓
ドル円の上昇に対して、日本が為替介入を行う。
↓
その際にはFIMAレポ・ファシリティを利用し、米国債を市場で売却せずにドル資金を調達する。
もちろん、現時点で日米間にこのような具体的な合意が存在すると確認できているわけではありません。
しかし、米国が財政赤字と米国債の需給問題を抱え、日本もまた円安と財政問題を抱えていることを考えれば、両国がそれぞれの問題を解決するために、金融・為替政策を組み合わせるという発想自体は十分に考えられます。
59年前の「ブレッシング書簡」が示したのは、軍事力を背景とした米国の外交圧力が、同盟国の金融政策や米国債市場にまで影響を及ぼすことがあるという事実です。
果たして2026年にも、形を変えた「ブレッシング書簡」が存在するのでしょうか。
これは単なる歴史の話ではなく、現在の米債市場とドル円を考えるうえで、無視できない視点なのかもしれません。



