堅調な豪ドル・NZドルは上値が重い
豪州の中央銀行の豪準備銀行(RBA)とニュージーランド(NZ)の中央銀行のNZ準備銀行(RBNZ)の間では金融政策の方向性の違いが際立っています。
RBAは昨年まで利上げをしていたにも関わらず、今年に入って利下げに転換。
このことは第183回「豪ドル相場は変動の多いインフレ率を知らずにやってはいけない」に詳細を記載していますので参照してください。
一方、RBNZは、引き続きハト派姿勢を維持しています。
市場では、1月のインフレ率が市場予想を上回ったことを受け、RBNZが一定程度タカ派寄りの姿勢を示す可能性も指摘されていました。
しかし実際には、「経済が概ね見通し通りに推移する場合、当面は緩和的な金融環境を維持する可能性が高い」との認識が示され、金融政策スタンスに大きな変化は見られませんでした。
こうした金融政策のスタンスの違いもあり、為替市場では豪ドルが比較的堅調に推移する一方、NZドルはやや軟調な動きとなっています。
この結果、豪ドル/NZドルは底堅い動きが続いており、2013年6月以来となる1.20NZドル台が視野に入りつつあります。
脱NZ・・・豪州への移住が増える
もともと国の規模が小さいこともあり、NZでは若者を中心に海外で働くケースが多いことが知られています。
ただし、近年はその傾向が若年層に限ったものではなくなりつつあります。
昨年のNZからの移住者は、豪州だけでなく他国への移住も含めて増加し、6万6000人を超えました。
この数字は一見すると多くないようにも見えますが、NZの人口がわずか約530万人であることを考えると、決して小さくない規模と言えるでしょう。
移住者が増加している主な背景には、NZ経済の停滞が挙げられます。
失業率もここ数カ月で上昇し、約10年ぶりの高水準に達しています。
こうした状況のもと、通貨市場の動きだけでなく、人の流れの面でもNZから豪州への移動が急速に拡大しています。
実際、過去4年間でNZから豪州への移住者は1万8000人から4万3000人へと大きく増加しています。

特に最近目立っているのは、40歳代の移住者が増加している点です。
この背景には、NZ経済の停滞があります。失業率はここ数カ月で上昇し、約10年ぶりの高水準に達しています。
さらに住宅市場も大きく調整しており、主要都市であるオークランドとウェリントンでは、パンデミック後の急騰の反動から深刻な不況に見舞われています。
とりわけ首都ウェリントンでは、2022年1月のピークから住宅価格が約30%近く下落しているとされています。
元首相まで移住する
移住者の増加が続くなかで、市場関係者の間で衝撃をもって受け止められた出来事があります。
元首相のジャシンダ・アーダーン氏が、豪州のメルボルンへ移住していたことが明らかになったことです。
アーダーン氏は首相退任後、米国のハーバード大学で研究員として活動していましたが、最近になってメルボルンへ移り住んでいたことが判明しました。
この件について同氏は、「長男がニュージーランドでは仕事を見つけられなかったため、メルボルンへ移ることにした」と説明しています。
さらに、アーダーン氏は実弟についても、中国の方が給与水準が高いことを理由に現在は中国で働いていることを認めています。
一国の首相を務めた人物が、自国ではなく他国へ生活の拠点を移すという事実は、NZ経済が置かれている厳しい状況を象徴する出来事として受け止められていると言えるでしょう。




