7月末の急激な円高局面で、ドル円は155円台まで下落しました。その裏側では、投機筋が積み上げていたシカゴ国際通貨先物(IMM)における円先物の売りポジションが縮小しています。ただ、「IMMポジション」は、為替の方向を当てるための単純な指標ともいえません。ポジションの偏りがどれほど積み上がり、その巻き戻しが値動きをどこまで増幅し得るのかを把握するための手掛かりの1つと考えたほうがよいでしょう。
円売りポジション巻き戻し
「IMMポジション」とは、CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)のIMM(国際通貨市場)で取引される通貨先物について、CFTC(米商品先物取引委員会)が公表する投機筋などの建玉を指します。CFTCは毎週火曜日時点のポジションを金曜日に公表しており、円の買い持ちと売り持ちの差から、市場が円に対して強気か弱気かを読み取ることができます。
今回の特徴は、その偏りが短期間で劇的に変化した点です。円のネットポジションは7月21日時点で15万2125枚の売り越し、28日には16万3412枚まで拡大し、過去数年でも最大規模の円ショートとなっていました。それが8月4日には4万5473枚まで縮小し、わずか1週間で11万7939枚、約7割が解消された計算です。介入観測をきっかけに、損失回避の円買い戻しが一気に連鎖したことがうかがえます。
ただ、ドル円の値動きを見ると、7月末の急落後、8月3日に155円前半まで下落したものの、その後は下げ止まり、12日には159円半ばまで戻しています。急落がそのまま円高トレンドへつながったわけではなく、むしろ下値を固める展開が続いています(図表参照)。
「IMMポジション」リセットの先は
注意したいのは、「円ショートが減ったから円高になる」という単純な流れで捉えられない点です。円ショートが大きく積み上がった状態でドル円が急落すると、損失を抑えるための円買い戻しが発生します。買い戻しが買い戻しを呼べば、実際の下落幅以上にドル円が下振れすることがあります。今回の急落では、こうしたポジション調整が値動きを増幅したと考えられます。
しかし、偏りが解消されれば、その追加的な円買い圧力は弱まります。8月4日時点の「IMMポジション」で円ショートが大幅に縮小した後、ドル円が155円台から159円台へ戻してきたことは、その変化を考えるうえで重要です。需給の偏りがリセットされたことで、相場が本来の材料へ視線を戻し始めたといえます。
つまり、「IMMポジション」は方向を当てるための指標とは断定しきれず、相場が一方向へ走ったとき、反対方向への巻き戻し余地がどれほど残っているのかを見るための指標です。偏りが大きいほど、巻き戻しのインパクトも大きくなります。
現在のドル円は、7月末の急落前に付けた164円近辺にはまだ届いていません。今後、再び円ショートが積み上がるのか、それとも日米金利差や実需の資金フローがドル円を押し上げるのか。8月4日までの「IMMポジション」は、急落局面の需給が大きくリセットされたことを示しています。
ポジションの巻き戻しが一巡した今、ドル円の次の方向を決めるのは何なのか。需給の動向だけではなく、日米金利差や実需の資金動向といったファンダメンタルズが改めて意識される局面に移行していくとみます。



