日米協調介入を受け、ドル円は164円手前から一時155円台へ急落しました。「米介入容認」との状況は市場にインパクトを与えたものの、米国側の資金調達における制約や依然として変わらないファンダメンタルズを踏まえると、介入のみで円安トレンドを反転させるのは容易ではありません。
米介入資金の限界と“ユーロ売り”という特殊オペレーション
今回、市場の注目を集めたのは、米財務省がNY地区連銀を通じて円買い介入に加わった点です。他国通貨の買い介入に米国が参加するのは極めて異例であり、資金面には一定の制約があります。
報道では、米側が保有するユーロ資産を売却し、その資金を円買い介入に充てたとされています。これはドル資金の直接供給や米国債市場への負荷を避けるための対応ですが、米財務省の外国為替準備におけるユーロ保有額にも限りがあり、この手法を繰り返す余地は大きくありません。
また、日本側が利用する「米国債を担保としたドル調達枠組み」も、米国債の直接売却による金利急騰を避けるための措置に過ぎません。今回の「米介入容認」は、米金融市場に影響を与えない範囲での協力であり、無制限の介入を認めたものではないとみるのが自然でしょう。
158円の防衛線と今後のドル円シナリオ
ファンダメンタルズは依然として円安方向を示しています。日本の構造的な貿易赤字や、日米の大きな金利差(米5.25-5.50%、日本1%前後)は解消されていません。そのため、今回の介入はトレンドを反転させるというより、過熱した円売りをいったん落ち着かせる役割が大きいと考えられます。
市場が注目しているのは、200日移動平均線が位置する158円前後の攻防です(図表参照)。米財務省のベッセント長官が米金利の急騰や日本国債市場への波及を警戒し、この水準を事実上の上値の防衛ラインとして意識しているとの見方が広がっています。

海外ファンドやCTA(商品投資顧問 Commodity Trading Advisor)※は、この上値の重さを確認しながらポジションを巻き戻しており、当面は158円付近の上値と200日移動平均線近辺の下値との間でレンジを探る展開が見込まれます。仮に158円を明確に上抜けた場合には、再び日米当局によるけん制や協調介入への警戒感が高まる可能性があります。「ベッセント・シーリング」が機能する限り、160円台を回復するにはなお一定のハードルがあるとみられます。
一方、介入によって積み上がっていたドルロングの整理が進み、次回の日銀金融政策決定会合で政策金利を1.0%から1.25%へ引き上げるとの見方が強まれば、ドル円は200日移動平均線付近から下放れ、次の下値支持線とされる152円近辺まで3-4円程度の下落余地が生じる可能性もあるとみます。
「米介入容認」の実効性の限界を市場が意識し始めれば、再びファンダメンタルズ主導の円売りが強まる可能性は残ります。当局が介入によって得た「時間」の間に、日銀の金融政策正常化や財政への懸念がどこまで改善に向かうのか。市場はその点を見極めようとしています。
※脚注;商品投資顧問(Commodity Trading Advisor)
米国では先物のルーツともいえる商品相場に限らず、債券や為替など金融先物を売買する先物系の投資顧問業者もCFTC(米国商品先物取引委員会)の管轄となるため、為替など金融商品先物を売買する投資顧問もCTA(商品投資顧問)という名称でくくられています。
海外の先物市場では期近限月が売買の中心で、取引期限が比較的短めとなるため、CTAにはチャートなどを駆使した短期売買を活発に行う向きも多く、そのためチャートポイントをブレイクした際、CTA筋の売買がリード役となり、現物(為替ではスポット)の値動きを加速させるケースが多々あります。為替先物はシカゴマーカンタイル取引所のIMM(International Monetary Market/国際金融市場)で取引されるため、為替先物市場のCTAはIMM筋、シカゴ筋と呼ばれたりもします。



