現在、ドル円は市場の需給によって日々変動しています。しかし、かつて日本の為替レートは「1ドル=360円」という固定された水準でした。では、なぜ現在のような変動相場制になったのでしょうか。その大きな転換点となったのが、1971年8月15日に米国のニクソン大統領が発表した「新経済政策」、いわゆる「ニクソン・ショック」です。
これは単に米ドルが動いたという出来事ではなく、現在のFX市場につながる「為替制度そのもの」が大きく変わった歴史的な事件でした。
「1ドル=360円」はなぜ決まったのか
第二次世界大戦後の1944年、世界各国は「ブレトン・ウッズ体制」と呼ばれる国際的な通貨制度を作りました。この制度では、各国通貨の価値を米ドルに対して固定し、さらに米ドルは1トロイオンス=35ドルで金と交換できる仕組みでした。日本円もこの制度の中で固定相場となり、1ドル=360円という水準が長く続きました。
現在のFXでは、ドル円が1日に何円も動くことがありますが、当時は基本的に政府や中央銀行が為替レートを維持する時代だったのです。
なぜ米国は制度を維持できなくなったのか
問題となったのが、米国の国際収支赤字やドルの過剰供給です。1960年代になると、米国の海外支出などによって世界に流通するドルが増えました。一方、米国が保有する金には限りがあります。
「大量に存在するドルを本当に金と交換できるのか」という不安が市場で強まり、ドルへの信認が揺らぎ始めました。市場参加者の間では、ドルが割高ではないかとの見方も強まり、ドル売りが繰り返されるようになりました。そこで1971年8月15日、ニクソン大統領は米ドルと金の交換を一時停止すると発表しました。これが「ニクソン・ショック」です。
為替市場はどう変わったのか
ニクソン・ショックによって、従来の固定相場制度は大きく揺らぎました。同年12月には主要国が新たな固定レートを設定する「スミソニアン協定」を結びましたが、これも長くは続きませんでした。
そして1973年には、主要国の通貨が相次いで変動相場制へ移行します。IMFも1973年3月を固定相場制度の終焉と位置付けています。つまり、現在私たちが当たり前のように利用している「市場の需給によってドル円やユーロドルなどの価格が動く」というFXの基本的な仕組みは、この時代の大きな変化によって生まれたのです。
FX初心者が学んでおきたいこと
ニクソン・ショックから学べる重要なポイントは、「為替レートは永遠に同じ制度で決まるわけではない」ということです。現在は変動相場制が中心ですが、世界情勢や経済環境が大きく変化すれば、為替制度や国際金融のルールそのものが変わる可能性もあります。
また、当時の米国が「ドルを守ること」と「国内経済を守ること」の両立に苦しんだように、現在の中央銀行もインフレ、景気、雇用、通貨価値など複数の課題を同時に抱えています。FXで中央銀行の政策が注目されるのは、単に金利が上がる・下がるからではありません。その政策が「通貨に対する市場の信頼」を左右するからなのです。
おわりに
ニクソン・ショックは、現在のFX市場が誕生するまでの歴史を理解するうえで欠かせない出来事です。「1ドル=360円」という固定された世界から、「1ドル=○○円」という価格を市場が日々決める世界へ。その転換には、米国の経済問題とドルへの信認、そして国際的な通貨制度の大きな変化がありました。
FXでは毎日の値動きばかりに目が向きがちですが、「そもそも、この為替レートはどのような仕組みで決まっているのか」を知ることも非常に重要です。現在のドル円相場を見るときも、50年以上前に始まったこの大きな変化が、今日の為替市場につながっていることを知っておくと、FXがより身近で面白いものに感じられるのではないでしょうか。



