底を打った?
代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は2025年11月12日12時頃、対円では1595万円前後と前週(7日前)比で約2.3%高い水準で取引されています。BTCドルが10万3100ドル近辺の値動きです。
BTCは7日に再び弱含む場面があったものの、対円では1520万円付近/対ドルで9万9000ドル手前と、5日に付けた直近安値には届かず切り返す展開となりました。
反発のきっかけとなったのは、過去最長となった「米政府機関の一部閉鎖」の解消に向けて米議会が動き出したことです。7日に上院民主党の提案を共和党が拒否という報道はありましたが、週末にかけて一部民主党議員が共和党と合意し、政府機関の再開に向けて大きく前進しました。
「米上院、政府閉鎖解消へ法案前進 来年1月までのつなぎ予算など」ロイター通信
BTC円は1600万円台を回復すると、11日午前には1663万円台まで上昇。BTCドルも1週間ぶりの高値となる10万7400ドル台まで反発しました。

※Trading Viewより
政府機関の閉鎖が…やはり
米国の新会計年度は10月1日です。この日までに「つなぎ予算」が議会で承認されなかったことが、政府機関の一部閉鎖につながりました。これにより、金融市場が重要視する雇用統計の発表が延期されています。
「米政府機関の閉鎖、恒例行事化した背景とその影響…」Bloomberg
米政府機関が閉鎖された後の暗号資産市場ですが、10月第1週は堅調でした。暗号資産全体の時価総額は4.27兆ドルまで拡大し、過去最大を更新します。しかしながら、7日辺りから雲行きが怪しくなりました。
トランプ米大統領が中国への関税強化を示唆した10日に暴落し、先物市場では大規模なロング清算(買い持ちの投げ)が発生します。5日間で全体の時価総額は一時1兆ドル以上も縮小しました。円貨にして、150兆円以上です。
そこから何度か持ち直しましたが、暗号資産の時価総額は3.9兆ドルを超えたところでは伸び悩んでいます。米中貿易摩擦は緩和したものの、暗号資産市場の傷は癒えず、11月に入ると約4カ月ぶりの水準まで市場規模が縮小する場面ありました。

※Trading Viewより
3つの要因
10月以降の値動きを見ると、米政府機関の一部閉鎖が暗号資産市場に悪影響を与えたことは否定できません。以下が考えられる3つの要因です。
①規制当局の業務停止による不透明感
政府閉鎖の影響で、米証券取引委員会(SEC)と商品先物取引委員会(CFTC)は緊急案件のみを扱う縮小体制に移行しました。通常業務の停止は、新規承認や免除措置の導入を遅らせ、市場参加者に強い不透明感を与えました。
さらに政権交代に伴う人員の入れ替えや離職も重なり、規制当局の対応力は低下しました。投資家は「規制の方向性が見えない」という状況に直面し、積極的な取引を控える傾向が強まりました。結果として、暗号資産市場は停滞感を増し、価格の上昇余地が狭まったのです。
②ETFの扱いに関する不確実性
閉鎖期間中でも複数の暗号資産ETFが例外的な手続きで上場しました。具体的には、ソラナ(SOL)、ライトコイン、ヘデラ(HBAR)などのETFが取引を開始しましたが、再開後にSECがどのように対応するかは不透明です。
自動的に承認が有効化される可能性もあれば、追加審査やコメント対応が求められる場合もあります。こうした複数のシナリオが存在することで、投資家は「ETFが継続的に取引できるのか」という不安を抱えました。結果的に、ETFの上場は短期的な話題を提供したものの、中期的には市場心理を冷やす要因となりました。
③立法の遅延による政策リスク
暗号資産規制法案の審議は、政府閉鎖によって約1カ月半遅れました。下院ではすでに法案が通過していますが、上院ではSECとCFTCの管轄分担や「付随(補完)資産」という新しい概念を含む草案が調整中です。
閉鎖中は職員がメール対応すら制限され、議会との協議が停滞しました。さらに来年の中間選挙を控え、政治的な思惑が立法の進展を難しくしています。規制の枠組みが固まらないことは、市場にとって政策リスクを高める要因となり、投資家は長期的な見通しを立てにくい状況に置かれました。
閉鎖が解除されると…
米国政府機関の再開は、暗号資産市場にとって停滞を解消するきっかけとなります。
しかし、閉鎖中に積み残された課題は依然として重く、しばらく影響は続くでしょう。規制法案はSECとCFTCの管轄や「付随資産」の定義をめぐって調整が難航しており、中間選挙を控えることで成立の見通しはさらに不透明です。加えて、閉鎖による業務効率の低下は当局の政策実行を遅らせ、閉鎖中に上場したETFも再開後に追加審査を受ける可能性があるため、市場には不確実性が残っています。
一方で、前向きな材料もあります。SECとCFTCの間で進む協力関係は、規制の明確化を後押しする可能性がありますし、ETFに関してもSECが合理的なガイダンスを示せば投資家の不安は和らぎ、市場の安定につながるでしょう。結局のところ、閉鎖で生じた非効率を当局と議会がどれだけ早く克服し、規制の枠組みを整えられるかが、今後の暗号資産市場の方向性を決める大きな鍵となります。



