BTC、米中関係が依然として…
代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は2025年10月23日13時頃、対円では1659万円台と前週(7日前)比で約1.8%低い水準で取引されています。BTCドルが10万8500ドル前後と月初来で約4.6%低下した水準です。
先週末にかけて、BTC相場は再び下値を試す場面が見られました。BTC円が1767万円台を戻りの高値に17日(金)夜には1554万円台と7月初め以来の安値圏まで売り込まれました。BTCドルも11万6000ドル台前後から10万3500ドル台と、こちらは6月下旬以来の安値を更新しました。
前回コラム【第167回「ビットコイン、高値圏から急落…」】でも触れた「米中貿易摩擦の再激化懸念」が金融市場のリスクセンチメントを弱めさせ、BTC相場の重しでした。
※Trading Viewより
米地銀の信用不安が…
金融市場にとってタイミングが悪かったのは、リスク回避ムードが広がっていた中で、米国の地方銀行に対する信用不安が持ち上がったことです。
「米銀行業界への懸念広がる、融資詐欺の疑惑…」Bloomberg
ザイオンズ・バンコープとウエスタン・アライアンス・バンコープが融資先による不正行為を発表。融資詐欺による潜在的な損失額はそれほど大きくなかったようですが、株式市場は銀行株全般の売りに走りました。
リスク資産に位置づけられるビットコイン(BTC)を含めた暗号資産も、リスク回避の動きに巻き込まれました。
暗号資産の時価総額は一時3.45兆ドルまで縮小。過去最大の清算を記録した10日の3.24兆ドルほどではありませんが、先週14日から比較すると約4600億ドル(70兆円弱)が失われたことになります。
※Trading viewより
資金が向かっていたのは…
リスク回避が強まるなかで買いの勢いを強めたのが、安全資産と言われる金(ゴールド)です。以下のチャートは、ニューヨーク商品取引所(COMEX)で取引されている金先物の中心限月の(1トロイオンスあたりの)値動きです。
※1トロイオンス(troy ounce)は、金や銀、プラチナなど貴金属の計量に使用される単位のこと。 1トロイオンス=31.1034768グラムで、単位記号は「oz」「toz」など。
※Trading Viewより
今年に入ってトランプ政権が関税を強化し、世界経済に先行き不透明感が広がりました。これを受けて金への資金逃避が進み、NY金先物は1月末から最高値を更新し続け、4月下旬には年初来で33%超まで上昇率が拡大しました。
その後、米国と通商合意に至る国が増加したことで金の上昇も一服します。しかしながら、「米景気減速への懸念、トランプ政権による米連邦準備理事会(FRB)への圧力も含めた金利先安観の強まり」などで、金相場は9月に入り再び上値を試し始めました。最高値を更新すると、その後は米連邦公開市場委員会(FOMC)の利下げ、米政府機関の一部閉鎖なども支えに、年初来で67%まで上昇率を伸ばしました。
※市場金利の低下は、金利が付かない金(ゴールド)にとってポジティブ要因とされている。
デジタルゴールドと呼ばれ
ビットコインは初期のころから金に類似点があるとされ、デジタルゴールドと言われてきました。その理由は以下の3つの点に絞られます。
1、供給の希少性(Scarcity)
ビットコインは発行上限が2100万枚に設定され、約4年ごとに新規発行量が半減する設計です。金と同じく供給が制限されており、インフレ環境下でも価値が希薄化しにくい構造が評価されています。
2、価値保存手段(Store of Value)
金が「有事の資産」として信頼されてきたように、ビットコインも通貨価値下落へのヘッジ手段として注目されました。また、2024年に現物ETFが承認され、機関投資家による長期保有が進んでいます。
ただし、現在でも依然として高いボラティリティを伴っているのは確かです。そのため、完全な安全資産というより「高リスク・高成長型の保存資産」という位置づけでしょうか。
3、分散性と改ざん耐性(Decentralization & Security)
ブロックチェーン上で世界中のノード(ネットワークに接続されたPCなどのデバイス)が検証を行い、中央の管理者が存在しないため、改ざんや政府統制が困難です。この非中央集権の透明性が、普遍的な信頼と「デジタル時代のゴールド」たる評価に繋がっています。
世界のお金持ちたちが、BTCを「デジタルゴールド」として買い増しとの話も9月末にはありました。
「世界の超富裕層がビットコインを買い増し中・・」SOU仮想通貨 / ビットコインのXアカウントより
ビットコインとゴールド、相関関係は意外と…
10月に入り、ビットコインは買いが先行しましたが最高値更新後は失速しました。一方で金先物は、月半ばまで堅調に推移します。↓はここ1カ月の時間足チャートです。
ロウソク足がNY金先物、ラインチャートがBTCです。下側が、相関関係を表すチャートです。1に近いと相関関係が強く、-1に近いと逆相関となります。時間足なので上下に振れやすいですが、目安として追加しました。
比較チャートで興味深いのは、10月10日辺りからBTCが下げ足を速めたタイミングで金先物が堅調に推移していること。その後、金の上昇が一服して調整売りが入るとBTCが持ち直し、金が再度上がるとBTCは下げ、金急落でBTC反発という動きになっています。
これだけでは確定できませんが、金とBTCで資金が行ったり来たりという風にも見えます。いずれにせよ、今後もBTC相場を見るうえで、金相場の動向にも注視する必要はありそうです。