「影の総裁はベッセント氏」
「影の総裁はベッセント氏」・・・これは6月18日付の日本経済新聞に掲載された見出しです。
日経新聞が「金利1%の先」という特集記事を組み、その初回記事で掲げたタイトルです。
筆者もこれまで、第176回「結局外圧が左右することを忘れずにやってはいけない」にも指摘してきたように、日本の金融政策は国内要因だけではなく、米国の意向に大きく左右されていると考えています。
今回の日経新聞の記事は、その現実を半ば認めたものと言えるのではないでしょうか。
さらに同記事では、5月11日に来日したベッセント米財務長官が片山財務相に対し、「いま金利を上げた方が将来の金利の上げ幅が小さくて済む」と語りかけたと報じられています。
これも第197回「政権に左右される意思決定、首相・日銀総裁会談の裏を考えずにやってはいけない」で筆者が記した以下の見方を裏付ける内容でもあります。
「そして、今回の第3回目の会談前の5月11日から13日にかけてベッセント米財務長官は来日。
片山財務相はもちろんのこと、高市首相とも会談を持っています。
そして、会見では日米の足並みが揃っていることを強調しています。
再び、ベッセント米財務長官が利上げ圧力をかけた可能性も否定できません。」
本来であれば、日本の金融政策は日本経済の実情に基づき、日本銀行が主体的に判断するものであるはずです。
しかし現実には、米財務長官の発言が市場や政策当局者の判断材料として扱われ、その影響力を日経新聞が「影の総裁」と表現する状況になっています。
ここまで米国の意向が日本の金融政策に影響を及ぼしているのであれば、それはもはや異常と言わざるを得ません。
そして、この異常な構図は、高市政権、あるいは自民党政権そのものが続く限り、大きく変わることはないのではないでしょうか。
少なくとも今回の報道は、日本の金融政策が誰によって、何を重視して決められているのかという根本的な疑問を改めて投げかけるものだったと言えそうです。

金融政策だけではなく為替政策も米国次第か?
そして、22日にドル円が1986年12月以来となる162円手前まで上昇した際、再びベッセント氏の名前が浮上してきました。
片山財務相がベッセント米財務長官とオンライン会談を行ったことが明らかになったためです。
ドル円が39年半ぶりの円安水準に達した局面での会談である以上、円安問題や為替市場の動向について意見交換が行われたと考えるのが自然でしょう。
現在は国会会期中でもあり、野党を中心に円安による輸入物価上昇やインフレの影響について政府が追及される場面も増えています。政権としても、円安に対して何らかの姿勢を示したい局面にあるはずです。
日本は過去にユーロ円で介入を実施した例もありますが、実際にはドル円への介入が中心です。それは裏を返せば、為替政策においてドル、すなわち米国の意向を無視できないことを意味しているとも言えます。
しかも、前述のようにベッセント氏は「影の総裁」とまで評される存在です。日本の金融政策にまで影響力を持っているとみられる人物の意向を、日本政府が軽視できるとは考えにくいでしょう。
ここで重要なのは、米国がドル売り・円買い介入に賛成しているのか、それとも反対しているのかという点です
1月23日に実施されたレートチェックについては、ベッセント氏の主導だったとの見方もあります。
しかし、当時と現在では経済環境も市場環境も異なります。
米国が常にドル高を否定する立場に立つとは限りません。
だからこそ、今後の対応は重要な意味を持ちます。
仮にドル円が39年ぶりの円安水準を更新するような局面になっても、本邦通貨当局が円買い介入に踏み切らないのであれば、それは単に介入を見送ったという話では済まないでしょう。
「米国がNOと言ったのか」
「あるいは米国の意向を忖度したのか」
市場はそのような見方を強める可能性があります。
円安容認なのか、介入断念なのか・・・。その分水嶺は、日本銀行ではなく、むしろベッセント氏の意向にあるのかもしれません。





