先週14日の日経新聞を開くと、興味深い記事が目に留まりました。
違法な民泊営業が後を絶たない理由について、行政が科す過料や罰則などのリスクよりも、違法営業によって得られる利益の方が遥かに上回っているため、現行の法規制が「抑止力として機能していない」という指摘です。
「罰金(リスク)を払ってでも、儲けた方が勝ち」・・・このドライで、ある種歪んだインセンティブ構造は、実は民泊ビジネスに限った話ではありません。
私たちが日夜対峙している金融市場、そしてトレードの世界においても、歴史的に何度も繰り返されてきた「バブルの生成と崩壊」の真犯人そのものです。
「インセンティブの歪み」がバブルを作る
かつて世界経済を未曾有の混乱に陥れた「サブプライムローン問題」を思い出してみましょう。
当時、投資銀行の証券化商品担当者やウォール街のトレーダーたちは、返済能力が著しく低い債務者のローンを複雑にパッケージ化し、高格付けの金融商品として市場にバラ撒き続けました。
彼らは、そのリスクを理解していなかったのでしょうか?
答えは「NO」です。
多くの関係者は、いずれこの仕組みが破綻し、市場が破裂すること(=バブルであること)を薄々勘づいていました。
それでも誰も立ち止まらなかった理由は極めてシンプルです。
「今年上げた莫大なトレード収益に対する数億円のボーナス」という現実のインセンティブが、「数年後にバブルが弾けて解雇される」という将来のリスクを遥かに上回っていたからです。
たとえ3年後に会社が倒産し、自身が解雇されたとしても、手元にはすでに数年分か数十年分の巨額な成果給(ボーナス)が残ります。
個人として見れば「やったもん勝ち」であり、市場全体のクラッシュなど知ったことではありません。
この構造こそが、金融市場におけるモラルハザードの正体です。
「政治的インセンティブ」が招く金融規制の緩和
この「目先の利益優先」という構造は、個々の企業やトレーダーにとどまらず、国家の政策レベルにまで波及します。
典型例が、トランプ政権下で見られる「金融規制の緩和」だです。
かつてサブプライムローン問題等の反省から、米国では金融機関のリスク追及を抑え込むための厳格な規制(ドッド・フランク法やボルカー・ルールなど)が導入されました。
しかし、政権や金融業界にとっては「規制緩和によって短期的な景気浮揚と株高を演出し、実績を作ること」が極めて大きな政治的・経済的インセンティブとなります。
規制が解かれ、金融機関が再び高レバレッジな運用や過剰なリスクリスク資産への投資を行えるようになれば、市場には莫大な流動性が流れ込みます。
一時的に資産価格は跳ね上がり、官民ともに「空前の好景気」を謳歌することになるでしょう。
だが、根底にあるのはサブプライム期と何ら変わらない「リスクの先送り」です。
規制緩和によって人工的に膨らませたバブルは、弾けた時の衝撃をより壊滅的なものへと拡大させていきます。

金融バブルの過熱がFX市場に突きつける現実
では、このような「政治主導の規制緩和バブル」は、私たちFXトレーダーにどのような影響を与えるのでしょうか。
第一に、「空前のドル高・バブル相場と、その後の暴落(極度のボラティリティ)」です。
金融規制が緩和されリスクオン(過剰なリスクリスク追求)が加速すると、資本は米国市場へ集中し、一時的に強烈なトレンド(ドル高や特定通貨の高騰)を作り出します。
しかし、実体経済を伴わないバブルである以上、ある日突然、金融システムの目詰まりや債務不履行をきっかけに暗転するでしょう。
その瞬間に訪れるのは、過去のショック相場を凌駕する急激なフラッシュ・クラッシュです。
第二に、「市場の流動性枯渇リスク」です。
規制緩和で高レバレッジ化したヘッジファンドや投資銀行が一斉にリスクオフ(ポジション解消)へ動く時、為替市場ではインターバンクの流動性が一瞬で消失します。
スプレッドは異常拡大し、ストップロスの注文すら滑る「取引不能状態」が現実味を帯びるでしょう。
歪んだ市場で生き残るために
違法民泊が止まらないのも、金融機関が破滅的なバブルを繰り返すのも、そして政治が目先の好景気のために規制を緩めるのも、すべては「目先の巨大な利益が、将来のリスクを覆い隠してしまう仕組み」が根底にあるからです。
FX市場で生き残るために必要なのは、こうした市場の構造的な歪みを正しく理解しておくことです。
バブル形成期のトレンドに乗って利益を狙うのはトレードの妙味だが、「この上昇は規制緩和で作られた砂上の楼閣である」という冷徹な視点を常に持ち合わせなければなりません。
狂乱のバブル相場に呑まれるか、それとも次のクラッシュを見据えてリスク管理を徹底するか・・・日経の記事が描いた違法民泊の構図は、FX市場における「巨大な罠と機会」のありかを示唆しているのかもしれません。



