BTC、複数の材料で振らされる
代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は2026年11月5日10時頃、対円では前週(7日前)比0.5%安の1270万円前後で取引されています。BTCドルは8万500ドルを挟んだ値動きで、年初以来の下落率は約8%です。
BTC相場はこの1週間、金融イベントやハッキングのニュース、そして米国の中間選挙に振らされました。
29日の東京未明に公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)では、予想通り政策金利が据え置かれたものの、2人のメンバーが利上げを主張しました。これを受けて、BTCは対円で1290万円付近、対ドルでも8万1000ドル台で頭を抑えられました。
月末には、大手取引所バイナンスが大規模なハッキングにあったとの報道で、市場センチメントが一気に悪化しました。BTC円は1200万円手前、BTCドルも7万6000ドル台まで売り込まれました。

※Trading Viewより
4日(日本時間)の米中間選挙では、民主党優勢の報道に、アジア時間はリスク回避で反応したものの、欧米時間にはリスク選好に転じました。BTCも対円では1200万円割れ、対ドルでは7万6000ドル割れから、それぞれ1285万円前後、8万1100ドル近辺まで切り返しています。
史上最大のハッキング、20分で63億ドル
10月29日(米国時間)、世界最大の暗号資産取引所バイナンス(Binance)から、約63億6000万ドル相当の暗号資産が流出しました。これまで最大だった2025年2月のBybit事件(約15億ドル)の4倍を超える規模です。10のブロックチェーンにまたがるウォレットから大半が約20分で抜き取られ、うちBTCは1万8270BTC(約14億7000万ドル)でした。
ブロックチェーン分析のTRM Labsは、北朝鮮のハッカー集団「TraderTraitor」の犯行と「高い確度」で判断しました。手口は、イーサリアムの新しい仕組み(ウォレットの操作を外部のプログラムに任せる機能)を悪用したものとみられています。狙われたのは、取引所が日々の出金に使うホットウォレット(ネットにつながった財布)でした。
バイナンスは損失の全額補償を表明。利用者保護基金(SAFU)や自己資金で31日までに約9割を埋め、11月1日に出金を再開しました。第216回のLedger偽装品は個人の財布の話でしたが、今回は取引所そのものです。
「North Korea Steals USD 6.36 Billion From Binance in the Largest Hack in History」TRM Labs
※Trading Viewより
止められるコイン、止められないコイン
被害の拡大を食い止めたのは、ステーブルコインの発行体でした。テザー(Tether)は発生から約1時間でウォレットを凍結し、数分後にサークル(Circle)も続きました。同日夜(米国時間)までに凍結された額は約27億ドル。発行体が管理しているからこそ、送金を止められたわけです。
BTCには、そうした仕組みがありません。犯人の手元には、いまも1万8270BTCが残っているとされます。誰にも止められないという強みは、盗まれた瞬間に弱みへ変わる。皮肉な形で、それがはっきりしました。
民主党が両院を奪還、法案はどうなる
3日(米国時間)の中間選挙では、民主党が上下両院の過半数を得ました。開票後のBTCの急反発は売り持ちの買い戻しが中心で、暗号資産全体の清算額は約9億7000万ドルに上りました。Bitfinexは現物の買い手が戻っていないとして、上昇の持続性に注意を促しています。
業界のスーパーPAC(政治資金団体)は、今回の選挙に1億7000万ドル以上を投じました。大半は共和党候補向けでしたが、結果は思うようになりませんでした。
「Bitcoin Trades Above $78,000 After Dem Sweep」Bitcoin Magazine
焦点は、第214回でお伝えしたCLARITY法案(暗号資産の分類と監督を定める法案)です。新議会が始まる来年1月3日までに成立しなければ廃案になります。一部の投資銀行は、民主党主導の議会では今後2年間、同様の法律は成立しないとの見方です。交渉役のアルソブルックス上院議員は、それまでの「レームダック」(選挙後から新議会までの期間)に採決の可能性が残っているとしています。残された時間は2カ月足らずです。
来年以降は、法整備よりも議会による調査や監視が強まるとの見方もあります。ただ、BTC準備金に前向きなフロリダ州知事が当選するなど、州レベルでは党派を超えた動きも続いています。
「Bitcoin Touches $81K After Midterms as Analysts Warn of Trap」Bitkub
スマホの財布でドル送金、ソラナが裏方に
最後は身近な話を少しだけ。サムスン電子のスマホ決済アプリ「Samsung Wallet」が10月末から、米国でステーブルコインのUSDC送金に対応しました。対象は米国のGalaxy端末8200万台。海外への送金や、現地通貨への両替もアプリの中で済みます。
裏で動いているのはソラナ(Solana)です。ソラナは10月21日、送金の記録が確定するまでの時間(ファイナリティ)を約12.8秒から約0.15秒に縮める大型アップグレード「Alpenglow」の導入を始めました。お店の支払いでも、まず待たされない速さです。
利用者はブロックチェーンを意識しなくてよい作りで、第215回のau PAYと同じ方向の動きです。米国以外にも、各国の規制に合わせて広げていくとしています。
「Samsung Wallet Taps Solana for USDC Transfers on 82M US Galaxy Devices」Decrypt



